サブブランドという位置付けの危うさも、傘下のMVNOを拡大するうえで、もう1つの課題といえるかもしれない。現状の枠組みでは、大手キャリアが料金の安いサブブランドを持つことに対する規制は、特に存在しない。そもそも、総務省がMVNOを推進するのは、競争を通じて、大手キャリアの料金値下げを促すため。この政策の目的を考えると、安易な規制を設けるわけにはいかないはずだ。
とはいえ、大手キャリアとは資本力の異なるMVNOにとって、サブブランドの台頭は脅威になることも事実で、不満がくすぶっている。特に、同じauからネットワークを借りるmineoは、auのサブブランドが勢いを増すと、死活問題になりかねない。ケイ・オプティコムでmineoの事業を統括する、モバイル事業戦略グループの上田晃穂氏は、MMD研究所が主催した勉強会で、「サブブランドについては、きっちり監督官庁に監視していただきたい」としながら、次のように語っている。
「キャリア(MNO)と同じような速度を出しつつ、あれぐらいのテレビCMを打つと、MVNO事業が成り立たない。では、われわれとして何を磨いていくか。mineoにしかない特徴をきっちり出していきたい。お店(UQ mobileやY!mobileの強い家電量販店)に来ても、いろんな誘惑に負けず、mineoを買っていただくようにしなければいけない」
こうした“サブブランド規制論”は、総務省の「電気通信市場検証会議」でも議題に上がっている。競争条件が公平でない点を、MVNO側が懸念するというものだ。
ただし、これに対する総務省の対応方針は、「電気通信事業者の料金等が、不当な競争を引き起こすものとならないか等、引き続き注視していく」と述べるにとどまっている。サブブランドに課される接続料の単価は、他のMVNOと同じで、差別的な取り扱いにはなっていないため、行政にとっても介入しづらい側面はありそうだ。
とはいえ、仮に議論が思わぬ方向に転び、規制が実現すると、サブブランドを中心に据えた戦略が大きく狂うことになる。リスクヘッジの意味でも、KDDIには、サブブランド以外のMVNOを“味方”につけるための施策が求められそうだ。
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