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» 2017年12月29日 17時00分 公開

石川温のスマホ業界新聞:楽天は6000億円でどうやって日本全国をカバーするのか――SIMフリースマホの「あの機能」が楽天を救う

携帯電話事業者(MNO)として名乗りを挙げることになった楽天。2025年までの6000億円の設備投資をすると表明しているが、この額では全国をカバーするのは難しい。しかし、現在MVNOとしてセット販売している「デュアルSIM・デュアルスタンバイ(DSDS)」対応のSIMロックフリースマートフォンを使えば何とかできるかもしれない。

[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 今週、世間は忘年会がピークを迎えたようだ。

 そんななか、モバイル業界関係者が忘年会で集まり、真っ先にする話題と言えば「楽天はなぜ、いまさら、携帯電話事業に参入するのか」という話だ。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2017年12月23日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。


 業界関係者から見れば、すでに大手3社での顧客獲得合戦には終止符が打たれており、これ以上、市場の成長は見込めないと言われている。大手3社が全国津々浦々にネットワークを張り巡らせているなか、楽天がイチから基地局を打って大手3社に対抗するのはあまりに無謀過ぎる。

 楽天は2025年までに6000億円を設備投資すると語るが、その金額ではNTTドコモの1年分にしからない。果たして、6000億円で全国にネットワークを整備できるものなのか。

 基地局ベンダー関係者に「6000億円というのは妥当な金額なのか」と直接、聞いてみたところ「昔に比べれば、設備は小型化が進み、金額は安くなっている」という。しかし、「基地局の設備は安くなっているが、工事費などの人件費は昔も今も変わらない」と続ける。結果として、6000億円で全国を網羅するのは難しいのではないかという結論だ。

 ただ、基地局ベンダー関係者は「投資額が少なくても、全国をカバーできる方法がある」という。

 それは「MVNOとしてNTTドコモから借りているネットワークと、新規参入して構築するネットワークをネットワーク側で融合することも不可能ではないが、NTTドコモとの交渉や技術的なハードルもある。しかし、スマホのDSDSを使えばもっと簡単に2つのネットワークを融合できるのではないか」というのだ。

 ここ最近、SIMフリースマホに増えたDSDS機能。Dual SIM Dual Standbyとして、2つのSIMカードに対応し、同時にネットワーク待ち受けできるものだ。

 仮に楽天がキャリアとして参入した際、ユーザーにはDSDS対応のスマホを使ってもらい、片方にはMVNOである楽天モバイルとして提供しているSIMカードを挿し、もう片方には、新規参入のMNOとしてネットワークを提供しているSIMカードを挿す。

 これにより、都心部など、楽天がキャリアとして提供しているエリアであれば、データ通信料を課金せず、郊外など楽天自身がネットワークを提供できないところはMVNOとして、NTTドコモのネットワークに接続し、従来通りにデータ通信容量が減っていくようにすればいい。

 これであれば、楽天は都心部に集中してネットワークを構築して、目標の人口カバー率を達成すればいい。かつてのイー・モバイルがNTTドコモ網にローミングするというかたちをとったが、DSDSを活用すれば、ローミングといったこともしなくていいし、従来のMVNOのスキームをそのまま使えるメリットがある。

 創業当初はユーザーも少ないことから「楽天の基地局につながれば、データは使い放題」といった見せ方もできるだろう。

 DSDS対応機種も今後、増えることが予想されるだけに、この手法を使えば、案外、面白い展開になっていきそうな気がする。

© DWANGO Co., Ltd.

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