中国当局も、海外のプライベートVPNを経由した国外ネットワークアクセスを許すわけではない。長時間連続でVPNに接続していると、接続が強制遮断され、しばらくインターネットそのものに接続ができなくなる事態が何度かあった。Gmailで接続エラーが多発することからも分かるように、“https”による暗号化セッションが行われると、ランダムで接続をリセットして、長時間の連続接続を防ぐ仕組みがあるようだ。送信データの解析が可能な通常のhttp通信と異なり、httpsでは完全に暗号化が行われるため傍受ができない。Google検索など海外サービスで接続をリセットする、こうした傍受回避対策とみられる。
規制のレベルも細かく設定されているらしく、宿泊したホテルでインターネットに接続したときは、一部のサービスが利用できないことを除けば不自由しなかったが、GTC会場の国家会議中心(CNCC)で提供されていたインターネット接続サービスでは、VPN接続が完全に遮断され、ホテルの部屋よりも接続をリセットする回数が多く、ひどいときにはGoogle検索を1回行うと必ずリセットがかかるほどだった。Webページの表示でも毎回リセットがかかるため、新規ページを10枚開くだけで10分以上かかるのが当たり前となっていた。
中国では、エリアごとに細かい規制が敷かれており、例えば、GTCには政府関係者が多数参加しているため、会場を含むエリアで強いアクセス規制が設定されていた可能性があるという。地域ごとの規制レベルも異なり、北京は最も高いセキュリティレベルが設定されていると、中国に詳しいIT関係者が教えてくれた。実際、規制対象となるサービスを携帯電話で利用していたところ、北京に隣接する天津市では問題なかったのが、北京の市境を超えて再び利用しようとしたところ、完全にアクセスできなくなったという。
規制されるサービスの種類では、SNSがほぼすべてが対象で、規制が多いと思われるニュースサイトは、意外と普通に閲覧できる。中国は規制対象となるブラックリストを短期間で更新しており、2011年9月時点でアクセスできたGoogle+が12月には規制対象になったり、短期間に体制批判の話題の盛り上がったTwitterやFoursquareを急きょ規制対象に加えている。このあたりに、規制の対象を検討するためインターネットで提供されるサービスが当局によって常時監視しているのがうかがえる。
一方で、規制対象は欧米が提供するサービスに偏っている。意外にも、日本のmixiは問題なく利用できたり、Jabberベースで独自構築したIMサービスも問題なく利用できたりと、個人的な利用に限定されるサービスは規制対象外のようだ。一時は規制されたといわれていた「2ch」でさえ、12月の時点では閲覧や書き込みが可能で、地域表示の出るニュース速報板などでは、書き込んだコメントに「(中国)」の表示が付与される。中国から利用可能なVPNが頻繁にブラックリスト入りされていることも含め、情勢は常に変化しているため、渡航前は情報収集を行い、規制に関するアップデートを入手しておくといいだろう。
ネットワークの規制が厳しい国では、携帯電話の利用も成約が多く、海外から訪れた観光客が利用できるプリペイドSIMカードなどないと思いがちだ。北京には、街の至るところに携帯電話ショップがあり、SIMロックフリーの携帯電話を持っていた場合、現地でプリペイドSIMカードを購入して利用できる。北京で利用できるプリペイドSIMカードについては、山根康宏氏の連載で紹介されたこちらの情報が参考になる。
面白いのは、中国では電話番号によって値段が異なり、“いい番号”ほど値段が高い。筆者が提示された金額は280元(約3500円)で、もし安い“番号”なら交渉で100元程度まで値引きできるようだ。ただ、値引き交渉は中国語になることは注意しておきたい。
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