「MacBook Pro Retinaディスプレイモデル」の最大の特徴は、Retinaの名前が示す通り、2880×1800ドット(220ppi)の高解像度ディスプレイにある。
もちろん、ただ高精細なだけではない。水平/垂直ともに178度の広い視野角を持つIPSパネルを採用するほか、コントラスト比はほかのMacBook Proに比べて29%向上し、黒がより黒く見える締まった表示を実現。さらにパネルの低反射処理を強化して、映り込みも軽減した。ディスプレイの質自体が、Retina化していないほかのMacとは別物と言っていい。これは店頭で実物を眺めたことがある人には分かってもらえるだろう。
前回のサーモグラフィ装置を使った評価に続き、今回はMacBook Pro Retinaディスプレイモデルのガンマカーブや色再現性を見ていく。評価にはエックスライトの「i1Pro」を用いてキャリブレーションを行った(液晶ディスプレイの表示を安定させるため、測定前に1時間ほど全画面に白を表示している)。
なお、MacBook Pro Retinaディスプレイモデルの解像度に対する考察は、「本田雅一のクロスオーバーデジタル」で詳しく触れているので、是非そちらを参照してほしい。

IPSパネルの採用による非常に広い視野角も特徴の1つ。ディスプレイを横から眺めても色がほとんど変化しない。MacBook Pro Retinaディスプレイに表示した画像を数人で同時に確認する、といった際に便利だ(写真=左)。パネルの映り込みも低減した。とはいえ、CTOで非光沢液晶パネル(右)を選択した旧MacBook Proに比べるとさすがに映り込みは目立つ(写真=右)それでは結果を見ていこう。まずはガンマカーブの検証だが、RGBの3本はほぼリニアに、暗部から明部まで美しいラインを描いている。色温度は6548KでsRGB標準の6500Kに準じる結果だ。
当然パネルの個体差はあるが、今回テストしたMacBook Pro Retinaディスプレイモデルはキャリブレーションせずとも、初期状態で色温度にクセがなく、暗部から明部まで階調性が整っていた。
色再現性は、先に作成したICCプロファイルを、Mac OS XのColorSyncユーティリティを用いてそれぞれsRGB、Adobe RGBのプロファイルと比較した(薄いグレーの部分がそれぞれsRGBとAdobe RGBの色域)。結果は以下の通りだ。
グラフを見れば分かるように、MacBook Pro Retinaディスプレイモデルの液晶ディスプレイはsRGB相当の色域を持つことが分かる。Adobe RGBに比べるとやはり狭く、RAWで撮影した写真データをAdobe RGBで現像するといったような用途には向かないものの、普段使いはもちろん、WebデザイナーやCADユーザーにとっては十分だろう。
以前取り上げた27型ワイドのThunderbolt Displayと比べても遜色なく、ノートPCのディスプレイであることを考えれば色域は十分広いといえる(逆に、これ以上の広色域が必要な用途を想定するのであれば、カラーマネジメントに特化したプロフェッショナル向けのディスプレイを外部接続で利用するほうが妥当だ)。


作成したICCプロファイルをMac OS XのColorSyncユーティリティで表示したグラフ。sRGB(薄いグレーの部分)と比較した。わずかにsRGBのほうが広いものの、ほぼカバーしているのが分かる

作成したICCプロファイルをMac OS XのColorSyncユーティリティで表示したグラフ。Adobe RGB(薄いグレーの部分)と比較した。ノートPCのディスプレイとしては健闘しているが、さすがにAdobe RGB対応をうたう単体の広色域ディスプレイほど色域が広いわけではない目視の印象でも、MacBook Airや旧MacBook Proに比べ色鮮やかで、草木の緑に深みがある。このディスプレイなら写真を眺めるのが楽しくなるはずだ。無地の単一色を全画面で表示すると、画面周辺でやや輝度の落ち込みが見られるものの、輝度ムラもそれほど気にならない。見た目は“15インチMacBook Air”を思わせる洗練された薄型ボディのMacBook Pro Retinaディスプレイモデルだが、そのディスプレイはほかのノート型Macとは一線を画す、「Pro」の名に恥じない仕上がりといえる。
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