東京各地に「物語の芽」――エアノベル後日談を“中の人”が語る(3/3 ページ)

» 2010年01月13日 11時00分 公開
[ITmedia]
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思わぬ経済効果もある?

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井口 今回、マツモトキヨシやマクドナルドといった現実の店舗や、エネループなどの小道具が大活躍した(※3)わけですが、そういった道具立ても注意して配置されたのですか? また今後はプロダクトプレイスメントとしてこうした実店舗や実商品を絡める展開もあり得そうですが、そうなると想定外の面白さだけでなく予想しない大変さもありそうですよね?

新城 そうですね、今回はなにしろ初めてだし、スケジュールもタイトな状況だったので、こっそり軒先を借りたような感じでしたが……。

井口 “男がMに執着している”とヒントを与えれば、マクドナルドやマツモトキヨシが当然ターゲットになります。そして1524の数字が含まれたレシートが“護符”になる(という設定)なんて、すご〜くファンタスティックなのに現世的利益にもつながっているという。

新城 お店の人などにNPC(ノンプレイヤーキャラクター)として協力してもらえると面白いとも思うのですが、事前準備がなかなか大変なので……。

井口 マクドの店員がNPCなんて激しく萌えますねえ。

新城 そうでしょ? 今回のような単純なルールでも、エネループを購入したりマクドナルドでコーヒーを飲んだりと、なかなか経済波及効果が大きい! と実証されましたので、次回以降はぜひさまざまなところと正式なタッグを組んでいきたいと思ってます。パートナー募集中です。

井口 エアノベルを通じて、Twitterやセカイカメラに期待することなどがありましたらお聞かせ下さい。また、こうした試みに参加したいと思っているWeb開発者へのメッセージも何かあれば。

新城 セカイカメラ、Twitter、あるいはその他のさまざまなシステム、デバイス、プラットフォームは、とにかく「現実をもっと面白くする」方向で連動・連携できるはずです。今回はまだまだ小規模ながらその可能性の一端を証明できたと思ってますので、今後もぜひ「なんだかよくわかんないけど面白そうなもの」を、がしがし創っていただければ、と。

井口 そういう意味ではデベロッパーとクリエーターの蜜月はさらなる予期できないイノベーションの発火点になり得ますね。

新城 だいたい飛行機だって電話だってテレビだって、最初に発明した時からすれば「まさかそんな使い方が!」みたいなことを我々は日常的にやってるものですからね。女子高生の夜中の長電話なんて、グラハム・ベル氏は絶対に考えてなかったわけで。

井口 テレビもラジオも電話もコンピュータもあらゆる画期的発明はきっとそうなのだと思います。予期せぬ進化こそが進化の実相ですものね。

新城 そうそう、なので妄想は役立ちます、きっと。開発者の皆様もどんどん夢想していただいて、こっちもそれに負けずに妄想しますんで、一緒に現実世界を空気投げしていければ! と思います。

(※3)「男はMの頭文字に執着している」というヒントや、「合計金額に15、または24の数字が入ったマツモトキヨシのレシートをかざすと、裏切り者を正気にできる」という設定が用意され、参加者はマクドナルドを休憩地にしたり、レシートを求めてマツモトキヨシで買い物をした。また、iPhoneのバッテリーを維持するため、「eneloop mobile booster」などの充電アイテムを現地で調達する参加者もいた。

エアノベル「#15a24」はまだ続いている?

井口 「#15a24」の参加者同士が都内各所で出会いながら仲間を増やしていくプロセスや、お互いが持ち味を生かし合ってコラボレーションの枠組みを自発的に作って行くプロセス、そして、まったくの偶発的な出会いなのに、そこから新しいグループワークが産まれていく様子も面白かったのですけど、普通、こんなにうまくいくものなのでしょうか? もしかすると、これは原作「15×24」ならではの効果だったのでしょうか?

新城 「捜索隊」として走り回った方々の過半が知っている原作がある、というのは一種の「思考のアンカー」として重要だったと思います。それに原作の「15×24」自体、非常にゲーム的というか、試行錯誤するドラマだったのは、非常に相性が良かったのかも。

井口 だからこそ、物語と現実の境界線が曖昧なままだったのですね。実は、エアノベルが大団円を迎えた後も物語が静かに進行しているかのような印象を強く抱いたのですが(これは新鮮でした!)、物語体験が僕達の生活にどう働きかけてくるのか? 新城さんのお考えをお聞かせください。

新城 公式ルールには「家に帰り着くまでがエアノベルです」とありますが、実はまだエアノベルは進行中なのかもしれません……。

井口 え! 本当に! それはコワイ(笑)

新城 あるいは「ほんとうのエアノベル」というのは参加者の皆さんの実感と記憶の中でこれから発芽するのかも。今回、小説を「体験する」試みを敢行したのも、そうした「物語と実体験と“私”は、どういう関係にあるのか? 今後どんな風に変わっていくのか?」という点に興味があるからでして。今後、今回の結果を詳細に分析して、いろいろ発表していきたいと思ってます(たぶん、例の「物語工学論」の続刊などで……)。

井口 いやぁ、楽しみです。「物語工学論」は拡張現実的妄想をエンジニアリングする際の素敵なマニュアル本、ガイドブックですよ。こういう物語思考の試行錯誤と現実の様々な試み、エアタグによるストーリーテリングが2010年にもっと出てくると、すごく楽しいですね。

東京各地に息づく「物語の芽」、そして2010年のエアノベルゲーム

井口 今回のエアノベルでは、秋葉原、上野、阿佐ヶ谷、渋谷、新宿といった東京各地に忘れ難い数多くのエアタグがもたらされたわけですが、果たしてここから何が始まるのでしょうか?

新城 東京各地に残されたエアタグこそ、まさに今回の「エアノベルの芽」であると新城自身は思ってますし、それらにコメントをつけたり、後から関連エアタグを増やしたり、Twitter小説をひも付けたり、そのほかにもさまざまな変化を与えることで「ほんとうのエアノベル #15a24 」がこれから育ってゆく可能性も十分あると思ってます。

井口 物語の芽としてのエアタグというイメージには強く引かれますね。

新城 あるいは「#15a24」以外のバリエーションが東京に、そしてそれ以外の場所に育ち始めるかも……。次回のエアノベルについてはまだ未定なのですが、まずはなによりも「もうちょっとあったかい季節にやろう!」「東京以外でも参加しやすいようにしよう!」という2大テーマだけは決まってます。

井口 なるほど、それは切実なテーマです。

新城 いやほんと、申し訳ありませんでした。原作の舞台が大晦日の東京だったもんで、つい……。

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