「iPhoneの完成度」を改めて感じさせられた2010年ITmediaスタッフが選ぶ、2010年の“注目ケータイ&トピック”(ライター神尾編)(1/2 ページ)

» 2010年12月30日 09時00分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 2010年は“スマートフォン”の話題に終始した1年だった。

 足下の販売市場を見れば、従来型のケータイもしっかりと売れてはいたものの、スマートフォンに一般ユーザー層の目が向き始めており、新たなサービスやビジネスもスマートフォンを中心に動くことが多かった。2010年は従来型のケータイにとって「終わりの始まり」であり、スマートフォンにとっては「始まりの終わり」といってもよい1年だったと思う。

 そして2010年後半には、GoogleのAndroidを搭載したスマートフォンが数多く発表・投入されて話題になった。NTTドコモ向けに供給されたSamsung電子の「GALAXY S(SC-02B)」や富士通東芝モバイルコミュニケーションズ製の「REGZA Phone T-01C」、auの面目躍如となったシャープ製の「IS03」、同じくシャープのソフトバンクモバイル向けモデル「GALAPAGOS 003SH」、そしてHTCの「HTC Desire HD 001HT」など、Androidスマートフォンはまさに百花繚乱といった状況だ。これまで「iPhone」一辺倒だった“コンシューマー向けスマートフォン”の世界に変化が起き始めているのは確かだろう。

いまだ「スタンダード」の地位を譲らないiPhone 4

Photo iPhone 4。ちなみにホワイトモデルはいまだ発売されていない

 しかし筆者は、これら数多くのAndroidスマートフォンをすべて試した今となっても、「iPhone 4から乗り換える」ことはできなかった。iPhoneの対抗機であるAndroidスマートフォンが多数出たからこそ、その原型であるiPhoneのよさや完成度の高さ、先行優位性を改めて実感させられたのだ。

 とりわけ優位性を感じるのが、UIの完成度の高さと美しさだ。

 今年は日本でも数多くのAndroidスマートフォンが登場したが、どれ1つとして「UIの完成度」でiPhone 4を上回るものはなかった。指の動きにぴたりと追従する感じ、機械的な速さや正確さではなく、人間的な感性に寄り添うような気持ちよさを持つスマートフォンは、いまだiPhone 4のみだ。またAndroidスマートフォンは操作メニューが複雑で、UIの動線もiPhoneに比べると分かりにくく、初めてスマートフォンに触れるユーザーを混乱させる。確かにAndroidスマートフォンのUIも、ひところに比べればずいぶんと進化した。だが、もっとも重要な“誰もが直感的に使えるUIかどうか”という点で、iPhoneのリードを崩せなかった。

 そして、「美しさ」だ。スマートフォンは画面の表示領域が大きく、ユーザーの接触頻度も高いため、UIの美しさは購入後の満足感を大きく左右する。画面レイアウトやアイコンやメニューの配置、UIにおける1つ1つの動き、そして日本語フォントなど、細かな部分まで美しさにこだわれるかは、実はとても重要なポイントだ。この美しさの部分においても、iPhone 4を上まわるAndroidスマートフォンは登場しなかった。

 ほかにも、iTunes Store/App Storeとのシームレスな連携やコンテンツの豊富さ、デザイン性や質感の高さ、実用性重視のバッテリー駆動時間など、iPhone 4の優位性は健在だ。Androidスマートフォンの百花繚乱ぶりはガジェットマニア的な視点では確かに面白いし、部分的にはiPhone 4を上まわるものも確かに存在した。一時期に比べれば、AndroidスマートフォンはずいぶんとiPhoneに近づいた。だが、総合力で超えてはいない。女性層を中心に、幅広いユーザー層に支持されたスマートフォンはiPhoneだけだった。iPhoneは2010年も、スマートフォンの“スタンダード”の地位を譲らなかったのだ。

「IS03」の成功、幻の端末となった「Z」

 一方、Androidスマートフォンに目を向けると、今年もっとも筆者が“手応え”を感じたのが、auのIS03(シャープ製)である。

 IS03は、Androidを日本市場向けに作り込んだスマートフォンであり、おサイフケータイや赤外線通信など“日本向けデバイス”を搭載していることが注目されているが、それよりも日本向けにきちんと作り込まれたUIデザインの部分を高く評価したい。モリサワフォントによる日本語表示はヒラギノフォントを搭載するiPhone 4に負けないくらい美しく、デスクトップやメニュー表示は“日本のケータイユーザー”に分かりやすくするための腐心の跡が随所に見られる。動きのスムーズさや全体的な統一感でiPhone 4に及ばずではあったが、IS03のUIデザインは今年のAndroidスマートフォンの中でトップであったと筆者は思う。auは是非、このISシリーズのUIデザインへのこだわりを発展させていってほしい。

 ハードウェアの性能の高さという点では、Samsung電子のGALAXY Sにも舌を巻いた。この端末はとにかくバッテリーが長持ちするのだ。それでいて処理速度も速く、サクサクと動く。GALAXY SはSamsung電子のデバイス開発能力を生かして、ハードウェア面ではかなり垂直統合的な作り方をされるているが、それが同機の差別化に貢献している。筆者はGALAXY Sに往年の日本メーカーのような“モノ作りの力”を感じた。ハードウェア性能重視の人ならば、かなり有力な選択肢になるだろう。しかし、その一方で、GALAXY SのUIデザインは日本市場向けとしてはイマイチで、特に日本語の美しさへのこだわりが感じられなかった。また同機のウリであるSUPER AMOLEDディスプレイは、屋外での視認性が低く、屋内でもコントラストが高すぎて文字を読んでいると目が疲れる。このあたりは今後の改善に期待したいところだ。

 そして、Androidスマートフォンの中で、もっとも総合力の高さを感じたのがHTCの「Desire HD」と「Desire Z」である。日本では前者がHTC Desire HD 001HTとしてソフトバンクモバイルから発売された。

 HTCのDesireシリーズは、Samsung電子のように自社デバイス中心でのモノ作りは行っていないが、CPUの調達先であるQUALCOMMや、Androidを開発するGoogleと密に連携し、iPhoneに負けない滑らかな動きを実現するために徹底的なチューニングを施している。また独自のUIデザインにもこだわり、結果としてDesire HDとDesire ZはAndroid端末の中ではもっともiPhoneに肉薄する優れたUIデザインを持つ端末になった。日本向けのHTC Desire HD 001HTでもUIへのこだわりは健在で、GALAXY Sより美しい日本語フォントを搭載しながら、動きの滑らかさは他のAndroidスマートフォンを上回っている。総合力で見れば、HTCのDesireシリーズの実力はかなり高い。

 しかし、日本におけるDesireシリーズは影が薄い。HTC Desire HD 001HTは実力は十分あるにもかかわらず、ソフトバンクモバイルがiPhone 4を優先する販売戦略をとっているため、ドコモが販売するGALAXY Sや、auが販売するIS03に大きく水をあけられてしまっている。せっかくの実力が、市場で公平に評価されないというのは残念なところだ。また個人的には、コンパクトでキーボード付きのHTC Desire Zを購入したいと思っていたのだが、これが日本で発売されなかったのも残念だった。

Photo 最も手応えを感じたAndroid端末「IS03」
PhotoPhoto スペックの高さに舌を巻いた「GALAXY S」と総合力の高さを感じる「HTC Desire Z」
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