「IGZO」で巻き返すシャープ――「2012年度中にはシェアを挽回したい」(1/2 ページ)

» 2012年10月23日 19時56分 公開
[田中聡,ITmedia]
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 シャープが10月23日、スマートフォン新製品の説明会を開催した。同社の2012年冬商戦向けモデル(ソフトバンク向けは春モデル込み)は、ドコモ向けがスマホでは世界初のIGZO液晶を搭載した「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」、スタイリッシュな防水ケータイ「SH-03E」、au向けが4G LTE対応の「AQUOS PHONE SERIE SHL21」、7インチのIGZO液晶を搭載した“片手で握れる”タブレット「AQUOS PAD SHT21」、ソフトバンク向けが25色をそろえた「PANTONE 6 200SH」、コンパクトな防水ケータイ「PANTONE WATERPROOF 202SH」、SoftBank 4G対応で4.9インチ液晶搭載の「AQUOS PHONE Xx 203SH」の計7機種をラインアップする。ドコモ向けでは幅59ミリのXiスマホ「AQUOS PHONE si SH-01E」も発売されている。

photophoto シャープの新製品7機種(写真=左)。次世代通信サービスに対応したドコモ、au、ソフトバンク向けのハイエンドモデル(写真=右)
photophotophoto 左から「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」「AQUOS PHONE SERIE SHL21」「AQUOS PHONE Xx 203SH」
photophoto 左から「PANTONE 6 200SH」「AQUOS PAD SHT21」

 シャープは2012年10月に組織変更を行い、新たに設けられた4つの事業ユニットの1つ「デジタル情報家電事業ユニット」に、通信システム事業本部とデジタル情報家電事業本部が属する。通信システム事業本部 本部長の大畠昌巳氏は「環境変化にいち早く対応して、生活創造企業の実現に向けて技術、商品、販売の融合を図るべく、ローコストなオペレーションでグローバルに液晶応用事業を展開する」とその狙いを話す。あわせて、通信システム事業本部に国内営業統轄を傘下に取り込んだ。これにより、企画から開発、営業、サービスまで、迅速に、かつ一貫した施策を展開していく構えだ。

photophoto シャープの大畠氏(写真=左)。10月1日の組織変更で営業統括部を通信システム事業本部の傘下に収めた(写真=右)

高性能化、高速化で後れを取ったことがシェア縮小の要因

photo 2011年度国内携帯電話出荷数シェアでシャープは3位にダウンした

 こうした変化を余儀なくされた背景には、携帯業界におけるシャープのポジションが変わってきたことも少なからず関係している。シャープの携帯電話出荷数は2010年度まで6年連続で1位だったが、2011年度は3位に転落してしまった。チップの供給不足などもあってか、第2四半期の出荷数はトップ5圏外になるなど逆風が吹いている。大畠氏はシェア縮小の要因を「国内市場におけるスマートフォンの販売比率が高まり、海外メーカー製のグローバルモデルが国内市場にも投入され、高速CPUや操作性の進化が早まった。一方、インフラはLTEやWiMAXが導入され、キャリアのサービスが大きく変化した。当社はこれらの対応に少し後れを取った感は否めない。その結果、競争力が低下した」と分析する。「この反省を踏まえ、2012年度中にはシェアを挽回したい」(同氏)

 シェア挽回に向けてシャープが取り組むのが、(1)ユーザーの感性に訴え心地良さを感じさせるデザイン・ユーザビリティの実現 (2)先進技術を取り込んだ他社に負けない端末性能と独自機能 (3)日本メーカーとしての優位性を発揮した各キャリアサービスへのいち早い対応 の3つ。(1)については、2012年夏モデルから取り組んできた開発思想「Feel Logic」を継承し、2012年度下期のコンセプトとして「“Extend” your feel(あなたの感性を拡張する)」を掲げる。“Extend” your feelをより具体的に表すのが、「Feel Meister(快適な余裕)」「Feel Operation(直感)」「Feel Creation(新しい体験)」という3つの言葉(詳細は後述する)。これら3つの特徴付けにより「お客様の感性を広げ、今までにない新しい世界を提供したい」と大畠氏は意気込む。

photophoto スマートフォンやタブレットの商品力を高め、シェア挽回を目指す(写真=左)。12年度下期のキーコンセプトは「“Extend” your feel」(写真=右)

「IGZO」で他社にないユーザー体験を提供する

 ユーザーの感性を広げるためにシャープが導入するのが、新世代ディスプレイの「IGZO」だ。これは(2)の他社に負けない端末性能と独自機能にもつながる。IGZOは「In(インジウム)」「Ga(ガリウム)」「Zn(亜鉛)」で構成される酸化物半導体のこと。従来のアモルファスシリコンよりもトランジスタを小型化できるため、1画素あたりのバックライト透過率が向上し、従来機と同等の透過率で約2倍の高精細化が可能になる。また、従来の液晶では静止画表示中にも、CPUが1秒間に60回画像データを送信していたが、IGZOでは静止画表示中は1秒間に1回の送信に抑えられる。さらに、タッチ検出の妨げになるノイズの発生時間が短くなり、より正確なタッチ操作が可能になる。「IGZOの特性がスマートフォンやタブレットの強い武器になる。当社はIGZOをもって継続的なユーザーエクスペリエンスの向上を目指したい」と大畠氏は話す。

 今冬モデルでIGZO液晶を搭載しているのはSH-02EとAQUOS PADのみで、「(IGZO搭載機は)台数ベースで約3割強」というのは少ない感もあるが、IGZO搭載のスマートフォンやタブレットは今後さらに拡充していくとのこと。まずはハイエンド機から順次搭載していく見込みだ。IGZOの供給体制については「まったく問題ない」(大畠氏)。IGZO搭載モデルの展開は「キャリアとのいろいろな戦略も含めて進めていく」とした。

photophoto シェア挽回のカギを握るのがIGZO液晶だ(写真=左)。IGZOは高精細化、省電力、高感度タッチという特長を持つ(写真=右)
photophoto 将来的には、IGZOを採用した超狭額縁タブレット、超高精細ディスプレイ、超省電力スマートフォンなどの登場も期待される(写真=左)。IGZO搭載モデルを順次拡大していく(写真=右)
photophotophoto 従来のIGZOとアモルファスシリコンの液晶に静止画を表示させたときの消費電力を比較。右端はIGZO、「AQUOS PHONE ZETA SH-09D」や「AQUOS PHONE Xx 106SH」に搭載したS-CGSilicon液晶システム、CGSilicon液晶の消費電力を比較したもの。静止画表示を切り替えた際はIGZOの液晶消費電力も一時的に上がるが、静止表示中は一気に下がって安定する
photophoto こちらは10.8インチアモルファスシリコン液晶(左)と、10.1インチIGZO液晶(右)における、タッチ操作時のノイズを視覚化したもの。右側のIGZOの方がノイズが少ないことが分かる。左のようにノイズが発生するものをそのまま商品化するわけではなくチューニングを施すが、それを踏まえてもIGZOの方がノイズが少ないという

 (3)のキャリアサービスについては、ワンセグ、おサイフ、赤外線、防水といった日本でなじみの深い機能は早くから対応を進めてきたが、auのWiMAX、ドコモのLTE(Xi)への対応は遅れてしまった。この冬〜春商戦ではドコモのXi、auの4G LTE、ソフトバンクのSoftBank 4Gの高速通信サービスにはきっちり対応し、スペック上で見劣りする部分はなくなった。

 通信システム事業本部 マーケティングセンター所長の河内巌氏は、LTEの普及がスマホ市場を変えるとみる。「LTEネットワークが急速に立ち上がったことにより、コミュニケーションとエンタメ機能がより快適に使えるようになる。初めてスマートフォンをお使いの方が操作性でストレスを感じることがあるが、LTEならレスポンスも高速。これを利用したクラウドサービスの広がりにも期待できる。スマートフォンやタブレットは、生活に密着していくととらえている」(河内氏)

 その上で、今後さらに求められていく進化は「IGZOのような新しい技術に裏付けられた基本性能の高度化」と「ユーザーの視点に立った柔軟性の高い使いやすさへの配慮」だと河内氏は話す。スマートフォンにおいては、この2つの方向性を強く打ち出していく。

photophoto LTEの普及でスマホを取り巻くライフスタイルが変化している(写真=左)。シャープは「基本性能の高度化による信頼と安心感」と「使いやすさへの配慮」を軸にした進化を目指す(写真=右)
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