根底にあるのは“ユーザー第一主義”――「GALAXY S 4」の開発思想を聞く石野純也のMobile Eye(特別編)(2/3 ページ)

» 2013年04月27日 08時04分 公開
[石野純也,ITmedia]

ユーザーのニーズを徹底的に吸い上げ開発した、数々の新機能

 ユーザーのニーズは市場調査であぶりだした。「ビッグデータまでは及ばず、既存の方式で調べ、消費者のニーズを反映するように努めた」(DJ・リー氏)といい、結果として4つの傾向が見えてきたという。カン氏によると、そのキーワードは「Fun」「Relationship」「Life Task」「Life Care」の4つで、それがS 4に搭載された各機能と密接に結びついている。

photo 大規模なユーザー調査の結果、「Fun」「Relationship」「Life Task」「Life Care」という4つのキーワードが導き出された

 「Fun」は、文字どおり端末で楽しみたいという意味で、カメラで画質以上に多彩な撮影モードに力を入れているのもその一環だ。例えば、インカメラとアウトカメラ、2つのカメラで同時に撮影を行う「Dual Camera」を使えば、「家族のアルバムを見ると、お子さんの写真はあってもそれを撮っている親が写っていない。S 4では、そういった寂しい思いをする必要がなくなる」(カン氏)。

 写真と一緒に音声を記録する「Sound Shot」には、「子どもが生まれて赤ん坊が初めて発した言葉も、この機能なら残すことができる」といったストーリーがある。こうしたカメラの機能は、「GALAXY Cameraのチームと持続的に技術の共有を行っている」(同上)中で生まれたもの。撮った写真を簡単に管理できるよう、数タップでアルバムを作れる「Story Album」も搭載した。

photophoto インカメラとアウトカメラで同時に撮影する「Dual Camera」のほか、さまざまな撮影モードを搭載。こうした機能は、GALAXY Cameraで培ったノウハウも生かされているという

 「Relationship」は、他社との関係で、日本語ではコミュニケーションに近い概念だ。まず、「言語の壁をなくす」(カン氏)ために、翻訳アプリのS Translatorを搭載した。「海外に旅行して、お互いの言語を知らず、話ができなくても、S Translatorがあれば、よりよくコミュニケーションができる。対応言語数は、英語をUSとUKに分けて10ある。また、SMS、Eメール、チャットなど、ほかの人と連絡を取るときに使う機能とも連動する」

photo 10の言語に対応する「S Translator」。日本語にも対応している
photo 「ChatOn」には、画面を共有する機能が加わった。LINEやカカオトークといったサードパーティのアプリにはない機能で、新たなニーズが生まれそうだ

 Samsung電子がGALAXYシリーズ用にサービスを行っている「ChatOn」も、機能を充実させた。ChatOnとは、LINEやカカオトークのように、アドレス帳内の友人、知人を自動的に結びつけるメッセージアプリで、日本でもS IIIなどで利用できる。このChat Onには、無料のビデオ電話やスクリーンシェアという機能が加わった。スクリーンシェアは、端末の画面を相手と共有するためのもの。「リモートヘルプもできる」(カン氏)といい、スマートフォン初心者に操作を教える際に重宝しそうだ。また、「モバイルネットワークを通じる必要なく、音楽、写真、ゲームなどをダイレクトに共有する」(同上)、「Group Play」もコミュニケーションの活性化に一役買う。

photophoto 音楽、ゲーム、画像などを共有する「Group Play」。接続の手間がなく、アプリから簡単に利用できるのが特徴だ

 「Life Task」は、作業をスムーズにこなしたいというニーズのこと。これに応えるため、Samsung電子はS 4に「Air View」を搭載。GALAXY Note IIに搭載されたSペンを近づけるだけで画面が反応する機能で、S 4では指で同様の操作を行える。また、アプリのFlipboardとも連携し、「新聞記事などを、指を近づけるだけで見ることができる」(カン氏)。ユーザーの目を検知してスクロールするSmart scrollやSmart pauseも、同様の理由で生まれた機能だ。

photophotophoto GALAXY Note IIに搭載された「Air View」が、指で行えるようになった(写真=左)。ユーザーの目を検知して操作を行う「Smart scroll」(写真=中)や「Smart pause」(写真=右)も、GALAXY S 4からの新機能だ

 さらに、S 4では「Life Care」という健康管理機能にも取り組む。モバイルと健康管理は、通信事業者の団体であるGSMAも主要なテーマに挙げている分野で、日本国内ではドコモが取り組みに積極的だ。スマートフォン用の周辺機器も、徐々に増えている。S 4に搭載されたS Healthでは、歩数計などの機能を利用でき、周辺機器からデータを取り込むことも可能だ。また、単に機能を載せるだけなく、センサーなどのハードウェアまで総合的にチューニングを行った。

 「S Healthには歩数計の機能がある。機能自体はすでに(ほかのスマートフォンでも)あるものだが、実際に24時間起動させていると、大きな電力を消費する。しかしながらS 4では、ハードウェア的なイノベーションを通じて、低消費電力でデータを保存、管理できるようにした」(カン氏)

photophoto 歩数計、温度計、湿度計など、多彩なセンサーを搭載。こうしたデバイスを生かしたのが、消費カロリーなどが分かる「S Health」。外部機器との連携を想定しており、APIも公開される予定だ
photophotophoto 小窓が空いたフリップケースの「S View」も発売される。画面の一部だけが点灯する仕組みで、着信に応答したり、端末の状態を確認したりできる。Samsung電子本社の地下にある直営店では、端末発売の1日前となる25日の時点で、ケースなどの周辺機器が多数並べられていた

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2025年12月07日 更新
  1. ヨドバシ通販は「高還元率で偽物リスク低い」──コレが“脱Amazon”した人の本音か (2025年12月06日)
  2. 「健康保険証で良いじゃないですか」──政治家ポストにマイナ保険証派が“猛反論”した理由 (2025年12月06日)
  3. NHK受信料の“督促強化”に不満や疑問の声 「訪問時のマナーは担当者に指導」と広報 (2025年12月05日)
  4. ドコモも一本化する認証方式「パスキー」 証券口座乗っ取りで普及加速も、混乱するユーザー体験を統一できるか (2025年12月06日)
  5. 飲食店でのスマホ注文に物議、LINEの連携必須に批判も 「客のリソースにただ乗りしないでほしい」 (2025年12月04日)
  6. 楽天の2年間データ使い放題「バラマキ端末」を入手――楽天モバイル、年内1000万契約達成は確実か (2025年11月30日)
  7. 楽天モバイルが“2025年内1000万契約”に向けて繰り出した方策とは? (2025年12月06日)
  8. 楽天ペイと楽天ポイントのキャンペーンまとめ【12月3日最新版】 1万〜3万ポイント還元のお得な施策あり (2025年12月03日)
  9. ドコモが「dアカウント」のパスワードレス認証を「パスキー」に統一 2026年5月めどに (2025年12月05日)
  10. Amazonでガジェットを注文したら、日本で使えない“技適なし製品”が届いた 泣き寝入りしかない? (2025年07月11日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー