“飛び道具”でドコモ超え実現のソフトバンク、次は「世界一になる」――孫社長(2/2 ページ)

» 2013年11月01日 10時45分 公開
[田中聡,ITmedia]
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Sprintの事業は1年かけて反転させる

 ソフトバンクが買収した米Sprintの事業についても語った。2013年入ってからSprintは純減が続いているが、「1年かけて反転させる」と孫氏。「ソフトバンク流の営業ノウハウを移植するのに約1年かかると思うが、ネットワークや営業スタイルを改善していく。1年が過ぎると様変わりすると信じている」(孫氏)

 ネットワークについては、Sprint傘下のClearwireのネットワークを大きな武器とする。「Sprintが850MHzのプラチナバンドを手に入れたので、これでエリアが一気に改善する。スピードやキャパシティは、2.5GHz帯・120MHz幅を持つClearwireのネットワークでカバーする。SprintにClearwireという武器がなかったら買収しなかった」と孫氏は言い切る。

photophoto 純増数はマイナスとなっているが、これを1年かけて反転させる構えだ(写真=左)。ポストペイドのARPUは伸びている(写真=右)

 端末調達コストの削減については、携帯端末の卸売り事業を展開する米ブライトスターの買収でめどが立ったという。iPhoneを重点的に販売しているソフトバンクは、Android端末の購入台数が少ないため、希望した価格や機能をメーカーと交渉することが難しかったという。しかしブライトスター経由で多くの台数を確保できれば、ソフトバンクに有利な交渉ができるようになると孫氏はみている。同氏は「端末のボリュームで世界一になった」と胸を張る。「ソフトバンク、スプリント、ブライトスターのボリュームを足すと、アメリカで競合している会社に比べて2〜3倍、日本はドコモの5〜6倍、KDDIの10倍、年間で端末を仕入れることができる」

photo 「ソフトバンクはスプリントとワンチームでオペレーションする」との考えを、孫氏がSprintの幹部と共有したという

ゲームを制するものがスマホコンテンツを制する

 10月15日には、ソフトバンクとガンホー・オンライン・エンターテイメントが、フィンランドを拠点にモバイル向けゲームコンテンツを開発するスーパーセルの株式を取得することを発表した(31日に取得完了)。これは孫氏の「ゲームを制するものがスマホコンテンツを制する」との考えにもとづくもの。「スマホアプリ100万種類のタイトルのうち、ゲームが売上の約8割を占めている。利益はおそらく9割がゲームだと思う。スマホのゲームは、まだ始まったばかり。スマホのゲームで世界ナンバーワンを目指す」と話す。

 ガンホーの「パズル&ドラゴンズ」は海外では200万ダウンロードを突破しているが、これは全体の1割ほどに過ぎない。「日本以外の国で拡販のノウハウがない」(孫氏)ため、スーパーセルとタッグを組むことで、海外展開を拡大していく考えだ。一方でソフトバンクユーザーならではのメリットは、まだ見えてきていないが、「中長期に見ると、ソフトバンクグループのユーザーだから、さらにそのゲームが楽しく、より効果的になるというプロモーションが考えられるのでは」と話すに留めた。

photophoto 「パズル&ドラゴンズ」のダウンロード数は順調に拡大している(写真=左)。ガンホー・オンライン・エンターテイメントの営業利益は前年同期比28倍の685億円にまで伸びた(写真=右)
photophoto スーパーセルのヒット作「Clash of Clans」と「Hay Day」(写真=左)。ソフトバンクとガンホーが、スーパーセルの株式の51%を取得した(写真=右)

 ゲームビジネスで成功するうえで重要なのが「何年も楽しまれ続けている、名作を作ることが一番の対策になる」と孫氏。「エレクトロニクス・アーツは800数十タイトルものゲームを開発している。これはリスクを分散するためだが、古い方法。たくさん作ることが一番有効な対策なのか? 毎日のように進化させることが重要。ガンホーもスーパーセルも哲学は同じ。違ったユーザープロファイルでゲームを作る能力がある」と同氏は地震を見せる。

 スーパーセルは「Clash of Clans」と「Hay Day」という2つのアプリを提供しており、App Storeのセールスランキングでは、Clash of Clansが139カ国で、Hay Dayが102カ国で1位を記録している。会見にはスーパーセル CEOのイルッカ・パーナネン氏も登壇し、「夢は真のグローバルナンバーワンのゲーム会社になること」と意気込みを語った。パーナネン氏は、ゲーム事業におけるスーパーセルの売上が、2013年2月から8月までの7カ月間1位になったことに触れ、「人気ゲームを作ると2カ月目がうまくいかないこともあり、次のゲームを開発していくことも難しい。我々は“サービス”という考えからゲームを提供する。ユーザーに1週間や1カ月といわず、1年、2年と楽しんでほしい」と話した。

photophoto スーパーセル CEOのイルッカ・パーナネン氏(写真=左)。「最高の人材が最高のゲームを作る」の考えのもと、「セル」と呼ぶチームを作ってゲームを開発している(写真=右)
photophoto iOSアプリの売上ランキングでは、Clash of Clansが1位、Hay Dayが4位(写真=左)。会社全体の売上では、スーパーセルが7カ月連続で1位となった(写真=右)

 パーナネン氏は孫氏の考えに大きな影響を受けたようだ。「我々が思い描いていた長期の夢は5年〜10年後のものだったが、孫社長から30年〜300年と聞いて、長期の意味を変えないといけないと思った。ソフトバンクは、これからのビジョンを具現化する非常に重要なパートナーだと思う」

photo 孫社長とパーナネンCEO

 孫氏は今後の目標として、国内事業をさらに成長させることに加え、Sprintの営業利益を現在のマイナスからプラスに反転させ、一次益を含まない1兆円の営業利益を目指す。「(Sprintは)我々がボーダフォンジャパン買収時に体験したことと全く同じ。反転できなければ、ソフトバンクはその程度の実力だということ。コンテンツ、端末、ネットワークでも世界一になりたい」と意気込んだ。

photo 2014年度の連結業績予想
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