その楽天モバイルも取り扱う「ZenFone 5」が、11月8日に発売される。ZenFoneは、ASUSのスマートフォンブランド。PCメーカーとして有名な同社だが、スマートフォンに力を入れ始めたのはここ最近のこと。発表されたのは、2014年1月のCESだ。海外ではZenFone 5のほかに、4型の「ZenFone 4」や6型の「ZenFone 6」も発売されている。もともとはIntelのチップセットを採用したモデルだが、LTEに対応するためZenFone 5にはQualcommのSnapdragonが搭載されている。日本で発売されるのも、このLTE版となる。
同社の会長ジョニー・シー氏が「誰もが気軽に使えるワンランク上のぜいたくを堪能できる」と述べているように、低価格ながら、機能や質感にこだわっているのが特徴の端末だ。本体をよくよく見ると分かるが、筐体はプラスチックならが、前面に金属に見えるような加工が施されていたり、背面をシンプルな曲線にしたりと、細部にはコストを抑えながら上質感を出す工夫が見え隠れする。シー氏も次のように語る。
「美しさも重要だし、そこには音楽などの機能も含まれる。また、例えタッチパネルに関しては高性能で60ミリ秒の応答性を持っている。今まではパフォーマンスを気にしていたが、ユーザーが感じるのは応答性。こういったところにこだわっている。技術者の考えをガラッと変え、ユーザーサイドでどのような体験が重要かを見ていきたい」
価格と機能、質感、デザインのバランスが取れていることが人気を博し、海外では「月100万台のペースで出荷してきた」(シー氏)という人気モデルとなった。9月にドイツ・ベルリンで開催されたIFAでは、台湾で予約開始直後に3万台の申し込みがあったことや、中国のオンラインショップで2分で完売したことなども紹介されていた。IFAの会見では欧州に進出することも明かされており、一気に世界展開を加速させている。その一環として、日本に上陸するのがZenFone 5というわけだ。
ハードウェアのスペックを見るとミッドレンジ端末だが、きめ細やかにカスタマイズされたUIもZenFoneならでは。同社がタブレットなどに搭載してきた「Zen UI」が内蔵されており、かゆいところに手が届く。また、日本版は文字入力ソフトがATOKになっているのも、ASUSのこだわったポイントといえるだろう。
では、なぜこのタイミングで日本でもZenFoneを発売することになったのか。シー氏は、SIMフリー端末市場に本格参入した理由を次のように語っている。
「日本では、特に高齢の方がフィーチャーフォンのままだと聞いている。SIMフリーで価格が下がれば、もっと多くの人に使ってもらえるのではない。これだけクラウドがあり、せっかくの機能があるのでそれを最大限享受しない手はない。日本政府もSIMフリーを推進していると聞いている。(中略)端末は、MVNOを通じても売っていく」
MVNOの台頭と、それに伴う安価なSIMフリー端末市場の拡大、またSIMロック解除の原則化の方針も、ASUSの意思決定を後押ししたことがうかがえる。一方で、MVNO側も手ごろな価格の端末が登場することを期待していた。PCの分野で知名度はあり、コスト的にもメリットの大きいZenFone 5は、まさにMVNOのニーズに合致したスマートフォンといえるだろう。
ちなみに、シー氏は会見の囲み取材で「(開発中の)ZenFone 2もLTEベース。第2弾としてご期待いただければ」と述べている。ZenFone 2(仮)は2015年のCESで発表されるとウワサされているモデルだが、シー氏の発言を文字通り解釈すれば、日本で発売することは確実。ASUSの動向には、引き続き注目しておきたい。
ZenFone 5の対抗馬も発表された。11月7日は、Huaweiがミッドレンジモデルの「Ascend G620S」を12月中旬に投入することを明かした。端末購入に伴う通信料の割引が一般的だった日本市場だが、MVNOの勢力拡大を受け、今後はミッドレンジモデルでの競争も徐々に激化することになりそうだ。海外勢はもちろん、イオンスマホとして「ARROWS」を投入する富士通や、海外でMVNO用のモデルを多く手掛ける京セラのような、日本メーカーの活躍にも期待したい。
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