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» 2015年07月19日 11時10分 公開

石野純也のMobile Eye(7月6日〜17日):MWC上海でドコモが注目された理由/海外の格安SIMで見えた国内MVNOの課題 (2/2)

[石野純也,ITmedia]
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「フルMVNO」になれない国内MVNO

 上位レイヤーのサービスを強化していく傾向にあるMNOに対し、MVNOはMNOにはできない通信サービスを模索していることがうかがえた。MWC上海では、MVNO Summitが併催されており、各社の講演が開催されていたほか、展示会場にもMVNOのブースが多く見られた。

photo 併催イベントのMVNO Summitには、日本のMVNO代表としてIIJの佐々木氏が登壇した

 日本ではMVNOの3Gサービスが2008年に、LTEサービスが2012年に始まっており、ノウハウを積み重ねてきたが、「欧州ではより進んでいるところもある」(佐々木氏)。「格安SIM」として広がってきたMVNOだが、料金競争に終始しているだけだと、消耗戦になる。“次”を目指すうえで、先行している海外の事例は、日本のMVNOの将来像を考える上でも役に立ちそうだ。

photophoto 3G、LTEを他社に先駆け、MVNOとして提供してきたIIJ。MVNOブームを切り開いてきた立役者でもあり、契約者数は急増している

 日本のMVNOの課題の1つとして佐々木氏が挙げていたのが、「音声プランの柔軟性を出すのが難しい」ということ。ユーザー情報を管理する「HLR/HSS」という設備が開放されておらず、SIMカードを発行するのもMNOだ。そのため、海外のようないわゆる「フルMVNO」になれていないのが現状といえる。

 IIJでは将来のビジョンとして、海外のプレーヤーとの協調を挙げていた。もしHLS/HSSを自前で管理できれば、IIJがSIMカードの情報を書き換え、対応するキャリアに直接接続するといったことも可能になる。複数の国でサービスを提供する際に、SIMカードが1枚で済むというのも、フルMVNOのメリットといえるかもしれない。国内に限定すれば、ドコモとKDDIの回線を後から切り替えることが可能になる。

photophoto 海外にある「フルMVNO」になるには、まだ超えなければいけない壁がある。これはIIJに限らず、日本の制度的な問題だ

 すでに、海外ではこうしたサービスを提供しているMVNOもあり、MWC上海にもブースを出展していた。香港に拠点を構えるSlimduetは、アプリを使って国ごとにキャリアを切り替えるSIMカードを出展。香港では香港のキャリアに、シンガポールではシンガポールのキャリアに接続し、国際ローミングに比べると大幅に割安な音声通話やデータ通信のサービスを利用できる。電話番号も基本的には現地のものになり、複数の番号を使い分けられる格好だ。

photo 香港に拠点を構えるSlimduet
photophoto 各国の電話番号を持つことができ、アプリで切り替えられる

 Slimduetのようなサービスは、現行の制度だと日本の事業者が提供することは難しい。実際、Slimduetのサービス自体は日本にも対応しているが、日本のキャリアに直接接続するのではなく、中国移動香港経由となっている。つまり、中国移動香港のネットワークの国際ローミングとして、データ通信するということだ。音声通話も日本では利用できない。

 佐々木氏によると、HLR/HSSの開放については、「MVNO、MNO、規制当局が話し合う必要がある」。実際、すでに一部のMVNOがドコモをはじめとするキャリアに要望を出しているところだが、まだ実現していない。ドコモにとっても通信の要となる機能だけに、ビジネスモデルや技術など、さまざまな理由で開放に慎重になっているようだ。

MVNOの料金競争は限界か? 展示から見えたMVNOの真価とは

 MWC上海では、日本ではまだ珍しいサービスを中心にすえたMVNOもブースを出展していた。その1つが、スマートフォン向けのゲームを提供するSnail Mobile。中国に拠点を構えるMVNOだが、同社はAndroidベースのゲーム用端末まで発売している。端末の外観は、まるでポータブルゲーム機のよう。専用のキーやスティック、ボタンまで搭載されている。もちろん、MVNOが提供する端末だけに、通信機能に対応。SIMカードを挿すこともできる。

photophoto Androidをベースにしたゲーム端末を販売する。同社のプラットフォームから、通信料無料でゲームをダウンロードできる

 面白いのが、料金の仕組みだ。会場の説明員によると、同社のゲーム機から専用のプラットフォームを通じてゲームをダウンロードする際は、通信量がカウントされないという。つまり、自社のコンテンツ、サービスを受けるために通信を提供しているということだ。日本でも、楽天モバイルやDMM mobileなど、上位レイヤーのプレーヤーがMVNOに進出しているが、まだこのような仕組みを提供できているMVNOは少ない。

 もう1つ、MWC上海で注目したいのが、メッセージサービスに特化してサービスを提供する「ChatSim」。通常のWebサイトやアプリの通信は通さない代わりに、料金を年間10ユーロに抑えているのが特徴だ(メッセージサービスで画像をやり取りする場合は、追加料金が必要になる)。しかも、海外でも利用できる。このSIMカードを1枚持っておけば、最低限のメッセージのやり取りはできるというのがコンセプトだ。対応するサービスの幅も広く、日本でおなじみのLINEやFacebook Messengerに加え、Kakao TalkやWhatsAppなど、主要なものを網羅している。

photo イタリア企業の提供する「ChatSim」。データ量の小さなメッセージサービスが使い放題になる

 先に述べたように、こうしたサービスも、MVNOがローミング先と直接接続できない現状では、提供が難しいかもしれない。一方で、ネットワークの開放が進めば、日本でも可能性は出てくる。今のMVNOを見ると、リテラシーの高い層が加入している一方で、イオンなどでは、比較的年齢の高い層が“初めてのスマートフォン”として契約しているケースが増えている。こうしたユーザーは、スマートフォンの機能をフル活用するというより、特定のサービスだけを使う傾向にある。「孫とLINEがしたい」など、メールの代替を求める声もあるという。ChatSimのようなサービスがあれば、このようなニーズにも応えられるだろう。

 ここで紹介したサービスはいずれも、MNOが直接提供するメリットは薄いものだ。市場の穴になっている部分を、MVNOが開拓したともいえるだろう。「格安SIM」として注目されるMVNOだが、価格競争はある程度、行き着くところまで来た感がある。次の一手を打つ際に、海外事業者の事例は参考になるはずだ。

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