同様の問題は、au回線を使うほかのMVNOにも当てはまる。KDDI自身が立ち上げたKDDIバリューイネイブラーのUQ mobileも、「まだまだそんなに数が取れているわけではない」(KDDI 代表取締役社長 田中孝司氏)という状況で、テコ入れが必要だ。こうした状況の中、UQ mobileは、10月1日からUQコミュニケーションズに吸収され、事業も同社が継承することが発表された。
合併の理由についてKDDI広報部は「UQコミュニケーションズ自体もMVNOをやっている中で、途中からUQのコーナーでトライアル的にUQ mobileを取り扱うこともしていた。そういった面では、統合していくメリットが出てくる」と話す。UQ mobileは、MVNEの一歩手前のような形で、他社が独自ブランドを使って通信サービスを提供できるようにする戦略を掲げていたが、この点では創業時からMVNOの開拓を続けてきたUQコミュニケーションズとの相性はいい。
自社の完全子会社で低価格なMVNOをやるよりも、出資比率の低いUQコミュニケーションズの方が事業のアクセルを踏みやすいという側面もありそうだ。とはいえ、KDDIの回線を使うMVNOはまだまだ数が少ない。対コンシューマー向けという点では、mineoとUQ mobileだけで、mineoの開始から1年がたっても数はほとんど増えなかった。MVNOという形でドコモに流出が続くのは、KDDIとしても食い止めたいはずだ。
今後の見通しについては、明るい材料もある。1つは、KDDI系MVNOにVoLTEが提供されることだ。ケイ・オプティコムの津田氏によると、KDDIとの調整の結果、11月にはKDDI系MVNOでVoLTEが利用できるようになるという。VoLTE対応のSIMカードに変更した上で、auのVoLTE対応端末のSIMロックが外れているのが条件になる見込みだ。KDDI系MVNOでVoLTEが利用可能になれば、SIMロックフリー端末がCDMA2000 1xに対応する必要がなくなる。通信方式がLTEに一本化されれば、au回線向けのSIMロックフリー端末も、今より増える可能性はありそうだ。
もう1つの明るい見通しは、KDDIの接続料が下落傾向にあることだ。現状の接続料は10Mbpsあたり116万6191円で、まだドコモの94万5059円よりは高いが、以前のように、ドコモの2倍といった状況ではなくなっている。こうなれば、音声通話までLTEに一本化できるほどの、エリアの広さに魅力を感じるMVNOも出てくるだろう。ケイ・オプティコムのように、マルチキャリアでサービスを提供する事業者が、ほかに登場しても不思議ではない。
とはいえ、まだまだMVNOの回線数は圧倒的にドコモがリードしている。MVNOの参入状況や、新サービスを打ち出すペースを考えると、KDDIの対応ももう少しスピードを上げていく必要がありそうだ。
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