スマートフォンの世界を越えて「Snapdragon」を拡大するQualcommCES 2016

» 2016年01月06日 20時55分 公開

 米Qualcommは1月5日(米国時間)、翌日より米ネバダ州ラスベガスで開催されるCES 2016に先駆ける形でプレスイベントを実施し、同社の最新戦略について説明した。長らく登場が待たれていた「Snapdragon 820」搭載スマートフォンも発表され、間もなく市場へ出荷されようとしている。だが同社ではスマートフォンやタブレットだけでなく、このSnapdragonの技術をさらに広い分野へと拡大していくことを狙っている。

「Snapdragon 820」搭載の最初のスマートフォンは中国Letvから

 プレスイベントに登壇した米Qualcomm CEOのSteve Mollenkopf氏は冒頭で、同社が累計で380億ドルを上回る膨大な研究開発投資を続けていることに触れつつ、この技術が業界各方面のあり方を変える役割を果たしていることを強調する。現在Qualcommというと、スマートフォンや通信機器のイメージが強いが、今後はスマートホームやスマートシティ、そして現在盛り上がりつつある自動車分野への適用など、スマートフォンのさらに先を見据えた技術展開を行いつつある。

photo 現在、Qualcommが注力している8つの分野

 だがやはり、同社のフラッグシップといえば主にスマートフォン/タブレット向けのアプリケーションプロセッサだろう。最新のフラッグシップとなる「Snapdragon 820」は2015年2月に発表され、12月に北京で開催されたイベントでは具体的なベンチマーク結果なども公開され、既存の810シリーズの最大2倍程度のパフォーマンスをたたき出す期待度の高い製品だ。

 最初にSnapdragon 820を搭載して市場投入されるスマートフォンは中国Letvの「Le Max Pro」であることも発表された。本機は指紋認証技術である「Snapdragon Sense ID」や数Gbpsクラスの通信速度を実現する「IEEE 802.11ad」への対応など、非常に意欲的な機能を盛り込んだハイエンド製品だ。Letvの説明によれば「具体的な日付は言えないが、間もなくの発売」とのことで、恐らく2015年第1四半期中にはLe Max Proを皮切りに、820搭載製品が続々と登場することになるだろう。

photo 米Qualcomm CEOのSteve Mollenkopf氏が持つのは、Snapdragon 820を搭載した初のスマートフォン「Le Max Pro」
photo 従来の810とは異なり、独自開発のKryoコアを採用して最大2倍のパフォーマンスを実現したSnapdragon 820。既に80以上の製品デザインが用意されているという
photo Snapdragon 820を搭載した初の製品は中国のLetvから。Sense IDやIEEE 802.11adサポートなど、Snapdragonシリーズでも初の機能を盛り込んだ意欲作だ
photo Letvの「Le Max Pro」。6.33型のディスプレイを持つハイエンドスマートフォン

車載やウェアラブル向けも――スマートフォンの次の市場

 2016年のCESは非常に自動車の話題が多く、プレスカンファレンスが集中して開催される1月5日も早朝から(自動車に直接関係ない)各メーカーから自動車関係の取り組みが続々と発表されているが、それはQualcommも例外ではない。同社は車載向けのSnapdragonシリーズを用意しており、LTE通信機能だけでなく、高性能なアプリケーションプロセッサを活用することで、車載インフォテイメント・システムでの採用を狙っている。

 今回のCESではAudiとの提携が発表され、同社の「Snapdragon 602A」がAudiの2017年モデルで採用されることになった。Audiでは「MMX(Multi Media eXtention)」の名称で車載インフォテイメント・システムを提供しているが、このMMXにSnapdragon 602Aが搭載された。

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photo 車載インフォテイメント向けSoCの「Snapdragon 602A」プロセッサがAudiの2017年モデルにMMX(Multi Media eXtention)として搭載される

 また、Qualcommは「Snapdragon 820A/820Am」も発表し、将来的により高度なインフォテイメント・システムでの採用に期待を寄せている。このシステムではディスプレイオーディオでのタッチパネル操作以外に、ダッシュボード部の表示についても3Dを交えた高度な制御が可能になっており、壇上でのデモでアピールしていた。

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photo さらにLTEによる高速通信や高性能処理を可能にする自動車向け820の「Snapdragon 820A/820Am」も発表。小型のモジュール装置に機能を詰め込み、ダッシュボードの3D表示や大画面タッチパネルによるスムーズな操作など、リッチなインフォテイメント機能が利用できる

 Snapdragonの適用領域は、このように高度なソフトウェア処理を求められるケースだけでなく、センサーネットワークや小型の組み込みデバイスなど、通信の安定性や省電力性の方が重視される分野にも広がりつつある。

 例えば、スマートシティ向けのソリューションとして「MDM9207-1」「MDM9206」の2つが用意されているが、これらは通信機能を搭載しつつも、数年単位の連続利用が可能な耐久性や低消費電力性が求められている分野に適用される。

photo スマートシティにおける取り組み。Snapdragon X5 LTE modem(9x07)のほか、従来製品とピン互換の「MDM9207-1」「MDM9206」を発表。後者は低消費電力の小型センサーデバイス向けの製品となっている

 スマートホーム向けでは、ネットワークの自動設定と自動最適化を可能にする「Qualcomm Wi-Fi SON(Self Organizing Network)」をアピールしており、実際にWi-Fi SONに対応したSnapdragonを家庭の無線LANルーターに採用することで、従来製品に「さらにプラス」の機能が追加され、使い勝手が向上する。同様の取り組みは、ロボティクスやドローンの分野で「Snapdragon Flight」プラットフォームを他社とともに構築している流れにもみられる。

photo スマートホーム向けには「Qualcomm Wi-Fi SON(Self Organizing Network)」を発表。ネットワークの自動設定と自動最適化を可能にするソリューションで、無線LANルーターなどに組み込むことで、設定の簡略化やパフォーマンス最大化のメリットがある
photo ロボティクス/ドローン分野では「Snapdragon Flight」プラットフォームを発表。これをベースにした製品開発をTencentやZEROTECHと行う

 通信機能を搭載した小型のウェアラブルデバイスの分野においてもQualcommは取り組みを続けているが、こちらはSnapdragonではなく、2015年に買収が完了した英CSRのポートフォリオが活用されている。CSRはBluetooth関連の技術に強みを持っており、今回紹介された「CSR102X Bluetooth Smart SoC」や「Qualcomm aptX HD audio」もBluetoothベースのものだ。省電力通信を実現するBluetooth Low Energy(Bluetooth SmartまたはBLE)、そしてBluetoothでハイレゾオーディオの高品質転送を可能にする「aptX HD」などの技術をCSRより引き継ぎ、市場開拓のためのポートフォリオに組み入れた形だ。

photo ウェアラブルの分野では英CSR買収で得たBluetooth技術をベースに製品展開を行う。「aptX HD」によりBluetoothイヤフォンなどでの美麗なハイレゾオーディオ再生が可能に

 いずれにせよ、スマートフォン市場の成長とともに大きく飛躍したQualcommが、それ以外の分野への拡大を強く模索し始めたのは非常に興味深い。その背景にあるのは、スマートフォン市場の成長率が以前までのハイペースに比べると一段落しつつあり、一方でそれ以外の分野ではスマートフォンで培われた最新通信技術の取り込みを始めており、互いの事情がうまく組み合わさった結果だと考えている。新しい市場を求めるQualcommが今回のような動きを見せるのも、ごく自然な成り行きだといえる。

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