「ここ10日間ぐらいではなかなか読み切れない」――「実質0円規制」の影響に苦悩の表情を浮かべるKDDI田中社長石川温のスマホ業界新聞

» 2016年02月19日 10時00分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 2月9日、KDDIは決算会見を行った。終了後、田中孝司社長が囲みに応じた。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2016年2月13日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円)の申し込みはこちらから。


―― 実質0円がなくなったが、通信料金値下げをしていない。キャリアが儲かる構図になるのか。

田中社長 「これからですね、料金のほうを考えていかないといけないフェーズだろうと思っています。1月末が終わって、1GBプランを出して、短期的なのかも知れませんけども、端末価格のほうをいじりましたので、このあとですね」

(★ これ、自分の質問。本当にこのあと値下げとかするのかなぁ。3キャリアともしらばっくれて終わってしまいそうだけど)

―― 実質0円が2月から始まり、新料金プランは3月からになる。4Qは利益の押し上げになるのか。

田中社長 「4Qは1月までがそれなりに奨励金が出ていたが、2、3月で減りますので、プラス効果として出てくると思います。それが全体の数字としてどうなるかというのは、ここ10日間ぐらいではなかなか読み切れないところがあって、もう少しお時間をいただきたいというのが、今日の会見の趣旨ですけども」

(★ いずれ客は戻ってくるとは思うけど)

―― 2月からショップへの来店者数が大幅減ということだが、au WALLETマーケットなどの戦略にも影響が出るのではないか。ショップに客を戻す手立てはあるのか。

田中社長 「それは我々にとって、一番、頭の痛い課題でございまして、これまで来ていただいた方が、もっといろんな用途でお店に来てもらえるようなことを考えていかないといけないと強く思っている。

 とはいえ、機種変更を辞められるわけではない。ちょっと中期的に見れば、また戻っていらっしゃるとは思うのですが。一番、恐ろしいのは興味の行き先が違うところに行ってしまうと、なかなか業界としてはマズいなとは思っています」

(★ 田中社長は昔から「興味の行き先が違うところにいくのが恐ろしい」と言っている。このままスマホが進化しないと、その心配は現実になってしまうかも)

―― 解約率がジワジワと上がっているが、格安スマホの影響が大きいのか。

田中社長 「2つ影響があって、ひとつはMVNOに出て行く、出て行くのは解約率が上昇のひとつの理由。もうひとつはMNPが荒れていましたので、解約、新規が行ったり来たりするところで、解約率が上がっている」

(★ MNPが収まることで、解約率がどうなっていくのか注目。やはり格安スマホの影響は受け続けるだろうけど)

―― グループであるUQモバイルはどうしていくのか。

田中社長 「やっと合併しましたので、これから頑張っていただかないと困るなというところですね。まだ少し、時間かかるかなと見ていますけど」

(★ 近いうちに頑張った成果が少し出て来そうな予感)

―― 今後、MNP市場はどうなると見ているか。

田中社長 「MNP市場ですか、どうなるんですかね。正直な話、先が見えないところですね」

(★ いやー、ピタッと止まってしまうような気がするが)

―― 今月の来店客の減少は何割程度まで落ちているのか。

田中社長 「まぁ、どうなんですかね。1月31日なんてあふれんばかりのお客さんに来ていただいた。前倒し効果を取り除くとどれくらい落ちるのかな、ということだと思います。正確な数字は持っていませんけども、2割は確実に落ちているのではないかと思います。店によってはもっと大きく影響が出ていると思います」

(★ これまでの来店客がすべてキャッシュバックや実質0円を目当てにしていたわけではないので、それなりに戻ってくるとは思うが)

―― 先日発表されたガイドライン案、全体的にどういった感想なのか。

田中社長 「いまは0円以下にならないように、強く言われていますので、そうなっている。旧機種も。それ以上、コメントしようがない」

(★ 当面は0円を死守すれば良い感じかな)

―― この間の学割はサービス競争なのか。

田中社長 「お客さんが望んでいることをやっていかないといけないということであって、別にお客さんが端末だけの人もいるし、ネットワークや値段だけでいい人もいるし。はたまた、いろんなサービス契約が面倒臭いので、ショップで一緒に買いたいという人もいらっしゃる。基本的にはお客様の望むようにやろうと思っています。

 学割は、学生さんがデータをいっぱい使うんだけども、自らデータを買おうとすると、親に負担してもらわないといけない。我慢していたのが現状だったので、5GBをギフトすると少なくとも気持ち良くなるというのがひとつと、我々としてはリテンションに効くということですし、いい案なのかなと思っている。

 お店でも学生さんからはこういうのが欲しかったんだという声を聞いている。いい話だなと僕は思っている。

お客さんも嬉しいし、我々もそれによってリテンションができれば、いいこっちゃと思っていますので」

(★ 横並びにはなっていないのがいいね)

―― この間のガイドラインで、年齢制限も2年限定でなければいいとあったが。総務省の意向を踏まえた上で、感触があって投入したのか。

田中社長 「なので、学割はオッケーになった。もっと前から入れていますから、準備していますから、ガイドラインとは直接にリンクしていない。

 どちらかというとセグメントマーケティングを進めていこうというなかで、前からやっていたことなので、ガイドラインとは直接、関係していない」

(★ ガイドラインとは直接、関係していないけど「不公平感」はあるような気がする。学生のいる家庭のほうが優遇を受けられるのはどうなんだ、と)

―― 実質0円をなくすために、端末補助と奨励金など、どういった手法を取っているのか。

田中社長 「できるだけミックスして考えていきたいんですけど、業績面から考えると、毎月割をたくさん使うと、コスト先送りの状態になるので、企業の経営としては健全ではない。毎月割はできるだけ減らしていきたいと思うけども、そうは言っても、マーケットの事情もある。大きく見たら毎月割は減らしたいけども、徐々にといった感じ」

(★ いずれ毎月割はなくなっていくんだろうな)

―― 毎月割以外の部分も減らしていくつもりはあるのか。

田中社長 「全体的は減りますよね、0円以上になりますから。それを毎月割と一時金のミックスで価格が決まっちゃいます。あとはお店の方がどうするかということですから。そういう感じ」

―― iPhoneはどうなっていくのか。

田中社長 「どうなっていくのかね。ちょっとよく見えない。申し訳ない」

―― 奨励金が減ることで、さらにiPhoneは売れなくなるのか。

田中社長 「iPhone単体でいうとおっしゃる通りだが、奨励金が減るのはiPhoneだけじゃなく、Androidもそう。パーセンテージとしてどうなるか、結構、違った見方もあるのではないかと思います」

(★ 奨励金は減るが、リセールバリューなどを考えるとiPhoneを買っておいた方がいいという考え方もできるし)

―― アップルとの契約、コミットメントはどうなるのか。

田中社長 「ちょっとなんとも言い難い」

(★ さすがにこれはコメントできないよな)

―― ラインナップは今後、どう変わっていくのか。

田中社長 「ちょっとあまりよくわからない。ハッキリ言うと、お客さんの目線とすると、高い端末が大きな割引だけど0円以上になる、安い端末がより少ない割引で、0円以上になる。どっちがいいかといえば、お客さんは高い端末のほうがいい。

 一方、それってどうなのかという議論もある。中長期的にはマーケットのニーズに合ってくるので、高いものは高く、安いものはそれなりの値段が付くべきだが、すこし、短期的にはどうなるかよく見えない」

(★ 高くてもiPhoneを買うのか、それともiPhoneユーザーでも、安いからとAndroidに乗り換えるのか。どっちなんだろうか)

―― 2年縛りはどうするのか。

田中社長 「いわゆる1、2ヶ月問題といいますか、更新月を2ヶ月に伸ばすように進めています。そういったことが決まれば、やっていくことになります」

―― それ以外の対策は特に考えていないのか。

田中社長 「それは2年縛りの議論じゃなくて、もうひとつは販売奨励金を減らした場合、全体の料金はどうしていくんだというほうはもう少し、考えないといけないというスタンスです」

(★ 2年縛りを辞める代わりに長期優遇を強化して、ユーザーの囲い込みにつなげるという考え方もあり得そう)

―― 高市総務相が今回は第一弾という認識を持っているが、第二弾、第三弾の予定はいつになるのか。

:田中社長 「現状、予定はいつだとも言えないですね」

(★ 他社に先駆けてやることでもないだろうし。産経によるとNTTドコモは四半期の決算会見毎に何かしら発表すると官邸に伝えたらしいけど)

■取材を終えて

 2月になって、ショップに閑古鳥が鳴いているものの、その影響がどこまで及ぼすかは、田中社長にもまだ見えないといった感じ。かつてのような官製不況が起こるのか、それともあの時の過ちを繰り返さないようにするのか。業界全体で考えていかないといけないのかも知れない。

 ただ、MNP市場が止まれば、KDDIとソフトバンクにとってみれば死活問題になるのは間違いないだけに、早めに手立てを打つ必要がありそうだ。

© DWANGO Co., Ltd.

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