MVNO(仮想移動体通信事業者)の格安SIMの中には「大手キャリアの回線を利用しているので安心のつながりやすさ!」とうたっているものがあります。格安SIMは、本当に通信品質や速度面で大手キャリアと同等なのでしょうか?
同じ端末を使っている限りは、電波の接続品質は同等です。しかし、通信速度では差が出る場合があります。
(ITmedia Mobile編集部 井上)
「NTTドコモの回線を利用しているので安心のつながりやすさ! 快適なインターネット通信が楽しめます」「au 4G LTE(800MHzプラチナバンド)対応なので、全国エリアで快適につながりやすい」という風に、一部のMVNOでは大手キャリアの名前を前面に出して宣伝を行っています。
この宣伝文句が正しいかどうかは、通信の“どこ”に注目をするかによって答えが変わってきます。結論から簡単にいうと、電波に着目するならば正しいが、通信速度に焦点を当てると正しいとは言いきれないのです。
MVNOは、大手キャリアから携帯電話の基地局と電波を借りて通信サービスを提供します。基地局と端末との電波のやりとりにおいて、大手キャリアとMVNOとの間で区別されることはないため、同じ端末を使う限りは、大手キャリア回線と電波面では全く同じ扱いとなります。この辺のお話は、ITmedia Mobileの連載「MVNOの深イイ話」でも取り扱っていますので、参考にしてください。
現在、大手キャリアとMVNOのデータ通信は「レイヤー2接続」をしているケースが多いです。この接続方法では、端末へのIPアドレス(インターネット接続上の住所)の割り当てや上位ネットワークへの接続はMVNO側の責任で行うことになります。
まず、レイヤー2接続時に大手キャリアとMVNOとの間で発生するのが「接続料」です。接続料は接続帯域(速度)をもとに設定されていて、この帯域をMVNO全ユーザーで共有することになります。つまり、MVNOが確保している帯域の幅によって通信速度が左右されるのです。この辺の事情は、以前のQ&AやMVNOの深イイ話でも説明しています。
また、インターネットとの接続においても、MVNOはインターネット上の「上位ネットワーク」との相互接続が必要で、ここでも相互接続の方法や帯域幅によって速度が左右されます。
つまり、大手キャリアとMVNOとの接続帯域、MVNOとインターネットの上位回線との帯域の双方が通信速度に影響するため、大手キャリアと同じ通信速度になるとは限らないのです。ただ、大手キャリアの方が絶対に速度面で有利というわけではなく、時間帯や通信先によっては格安SIMの方が高速に通信できることもあります。ITmedia Mobileの連載「通信速度定点観測」も合わせてチェックしてみてください。
「格安SIM Q&A」では、読者の皆様から格安SIMにまつわる質問を受け付けています。「そもそも格安SIMとは?」という初歩的な質問から、「あのサービスの使い勝手はどうなのか」という突っ込んだ質問まで、何でもOKです。編集部で可能な限りお答えします。皆さんのご質問をお待ちしています!
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