「総務省の議論は本当に正しいかと言えば、そうでもない」――田中社長が夏商戦向け発表会で「auは大きく変わる」と宣言石川温のスマホ業界新聞

» 2016年06月10日 10時00分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 5月31日、KDDIは夏商戦向け新製品・新サービス発表会を開催した。終了後、田中孝司社長が囲みに応じた。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2016年5月28日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円)の申し込みはこちらから。


田中社長 「(石野さんに向かって)おめでとうございます。(記者が苦笑していると)余計なこと、言った?」

(★ 社長が囲みの時に石野さんにおめでとうというのが定番になりつつある)

―― 他社のように通信料金からの直接的な割引がなくて、正直ガッカリした。

田中社長 「現実的にはどうかというと、スマホでデータチャージするときも、(オンラインで)簡単にできるのにコンビニに行って、カードをお買いになられる。あれと同じアナロジーなんですよ、僕らもびっくりした。Walletカードを持っている子どもと、全部、お支払いする親との間は違うんですよ。僕らはポイントで返しても一緒なんだから、そっちのほうが利用用途は大きい。ポイントは何かと言えば、通信料でも引けるわけだから、効用的には変わらない。大人の世界のイメージと現実の世界とはやっぱり違うよねというのが発見」

(★ ポイントで通信料を支払えば割引と変わらない、とのこと。確かにその通り。まとめて親の支払いを割り引くより、家族全員にポイントを付与した方がそれぞれにメリットがあるという考えか)

―― 請求書を見ない人が多い中、ユーザーにどうやってポイント付与などを実感させていくのか。

田中社長 「もっとプッシュをしないといけないし、ギフトをあげるときは通知みたいなのをしないといけない。そうすることによって、ネット買う人ばかりではなく、お店に来てもらえれば、お店の人も喜ぶし、エコシステムを作っていかないといけないと思っている。

 さっきの請求書の話も見ない人と見る人がいらっしゃるということは気づきでしたね。ショップスタッフといろいろやってみたんですよ。どんどん増やして500店舗ぐらいにするのですが、やっぱり気づきがある。どうしても僕らは、メディアの人にいうのも何なんだけど、やっぱり向こうまで行って話を聞かないと、なかなか上手くいかないなと思っています。

 例えば、今日、エクスプレスレーンの話、パスポートの話もさせていただいたんだけど、やっぱり実施すると店舗の負荷になるんじゃないかと、パイで受けているのを区分するわけだから、これをなんとか上手くやらないといけないと思っている。

 それは何かというと、僕なんかは極端なんですけど、あまり説明はいらない、提供者であるからもちろんなんだけど、スマホを昔から使っているリテラシーの高い人は、店に行くときに全部、決めちゃっているわけだから、余計な説明をしないでよ、書き物もいらないというのが本音なんですけど、それを一律で対応するのは限界に来ている。

 かといってお客さんはシニアの方とは限らない。どちらかというと40代前半で聞くことが恥ずかしい人に対して説明するインサイトを抜き出すというのが重要かな。いろんなプロファイルが、あなたは40代だからスマホはわかっている、だからというのでは問題だけど、残りの20%はちょっと恥ずかしいと言う人もいらっしゃるので、そういったきめ細やかなことができればいいな。

 でもこれって、ショップスタッフと一緒じゃないとできない。だから、これってすごく大変なんだけど、やっぱり一歩ずつ進めていかないといけない。そうするためには宣言しないと、『また、田中さん、言っていることとやっていること違うんじゃないの』となるので、今日、菅(隆志コンシューマ事業本部コンシューマ営業本部長兼コンシューママーケティング本部長)も出させて舵を切っていこうと。急にはできないというのもわかっているし、全店舗が綺麗に対応できるのも時間がかかるし、ご批判を承知の上で、やっていこうということです」

(★ これからのauはとにかくショップと一緒に改革を進めていこうということか。「auは大きく変わります」というのは社外と言うより、社内、代理店に向けたメッセージだな)

―― どのくらいかかりそうですか。

田中社長 「今日、セミナーをやりコラボレーションをするのですが、まず500店舗は変わったという感じにしていきたいと思っています。目標は低いかも知れないけど、インサイトはそうしないと、なかなか変わらないと思うんですよ。特に秋はいろいろとイベントがあるじゃないですか。だから時間かかるけど、戻らないようにしようという強い意志です」

(★ キャッシュバックや実質0円で客を呼びにくくなる中、いかにショップに来てもらうかが課題になっている感じ)

―― 端末の第二弾ってなんですか。

田中社長 「それ、言うんだったら、ここ(プレゼン)に入れますよ。少し、また。一緒に発表すればいいという話もあるんだけども、特徴のあるものなので別にしたかった」

(★ Galaxy Noteなのか、それ以外の何かなのか)

―― 夏商戦があまり盛り上がらない中、このタイミングで大量投入する理由はあるのか。

田中社長 「というか、秋は話題がひとつになっちゃうので。そのほうがいいじゃないのと思っているんですけどね。提供者目線で言うとラインナップ数を減らして、1台あたりの調達量を増やした方が、単価が下がるというのはあるんだけど、それって本当にそうしちゃっていいのかな、というのがある。記者さんもちょっと多すぎるんじゃないと思うかも知れないが」

(★ NTTドコモとは違い、これからもラインナップ数を継続するというのはユーザーにとっては選べる自由があっていいかも)

―― ラインナップを増やすと在庫管理が難しくなるのではないか。

田中社長 「よく考えてやらないと、おっしゃるようなことになる。在庫の問題って提供者側の問題じゃないですか。維持するのが大変になったらラインナップを少なくするかも知れないが、思いはチャレンジしようと言うことです」

(★ 1モデルあたりの調達数は少ないんだろうな。これからも、売れても追加発注しなそうだし)

―― 料金そのものを下げるというのは今後も検討していかないのか。

田中社長 「料金の値下げはお客様のニーズに合わせてやっていくつもりです。総務省の議論はポイント、ポイントでは正しいとは思うけど、本当に正しいかと言えば、そうでもないよね。みんな、安く端末を買いたいって人はマジョリティじゃない。それはバランスを取らなくてはいけなくて、そこでそうだと言って実行して、みんな不幸になってはいけないと思う。

 今日、できるだけメッセージとして言いたかったのは、お客さんはそれぞれ違うんですよ、例えばスマホをガンガン使う、80%の人もそうだし、ガンガン機種変更したいわけですよ。そういう人と、長い間使う人は違う。

 一律で議論をしちゃうと間違っちゃうよ。いろいろとおっしゃっていることはできるだけ自分らで消化して、反映していきたい。

 ポイントと月額料金を下げるというのは経営上、あまり変わらない。ちょっとしか。本当に。

 でも、それだったら、ダムパイプになって、あなたたち安い回線を提供すればいいという生き方と、もうひとつはせっかくスマホがあるんだから、いろんなアドオンサービスをつけて、それが一律とならないように少しでもわくわく感を感じられるようにしていくのと両方がある。僕らは後者を選びたいし、グローバルを見ても同じなんですよ。二極化しているんです。どちらがいいかといえば、我々は意思を持って後者を選ぶ。

 だって、IoTをみんなやりたいんじゃないですか。IoTの端末だけでどうやって売るんですか。それはアプリケーションとか使い方とかベネフィットがないと展開できないじゃないですか。

 だから、サービスの方にジャンプして、もっとわかってからやろうと。保険とかやっとるんですけど。結構、意外と数が出ているんです。

 なんでかというと、身近なんです。僕はすごいうれしかった。auショップで何で保険売るのって思うじゃないですか。僕らは。しかし、お客さんはそうじゃない。だって、身近にあるから。そういうことをやっぱり理解すると、増える。

 もうひとつ、若い人って保険、入らないですよ。僕らの時代って会社に入ると、保険の人がやってくる。今の人は入らない。結婚したとか子どもを産んだときに入る。そのとき、一番身近なのはなんなの、と。まだまだ自分らも不十分なんだけど、やっていかないといけないと思っていて。

 できるだけ、画一的にならないように、努力していきたい。そうしていかないといけないと思っています。ぜひともご理解を」

(★ 総務省に対する批判とか、IoTに対する考えとか。このコメントは、:田中社長 の本音が混じっていて、勉強になる感じ)

―― 海外の980円データ定額、なぜこのタイミグなのか。

田中社長 「あれ、結構、いいですか。本当に昔から検討していた。でも、ダメダメダメダメダメというのを何回も繰り返してきた。それでここまできちゃった。去年の夏にやろうと思っていた。結局のところ、24時間というのが、あれでしょ。海外と国内で料金をわける、もっというといままではテータ量で額を下げなさいというのだったが、みんな国内のデータ料金のレートのままで、スイッチ押したら980円であと何時間ってわかりやすいでしょ。ここまで来るのに時間がかかった。時間がかかっただけ、本当をいうと。結構、真面目に考えた。結構、いいはず。地味な良さ。せっかくだから、毎日、つけちゃおうかな」

(★ 無駄なく使えて良い感じ。24時間が経過しても、ホテル内にいたら更新せず、翌朝出かけるまでWi-Fiで我慢するということもできそうだし)

―― 総務省からの要請を上手いことau経済圏の拡大につなげたようだが、今後もポイントが鍵になってくるのか。

田中社長 「そうですね。ポイントが回るようにしたい。自分らのところだけじゃなく、マスターカードが使えるところならばどこでも使えるので、僕らからすればキャッシュアウトなんですが、できるだけわかりやすいようにしたい。ポイントに揃えていく。いろんなルールで出来ないところがあれば、そのときは仕方ないのですが。そういうようなことを考えています」

(★ 各社、ポイント合戦になってきて、面白い)

―― 長期ユーザーについて改めてどう思っているのか。

田中社長 「どうやってやっていこうか考えていて、そうするとポイントバックというのは当然、あるのですが、一方でポイントバックだけでは心に響かない。ギフトも追加して、それぞれのタイミングで、ハレの日とも言っていましたが、リマインドしてもらえるように意識を持ってやりたいので、ああいうモノを付け加えた」

(★ ギフトも、au Walletポイントを選べるようにしてほしいな)

―― つなぎとめのために腐心しているのか。

田中社長 「つなぎとめというとなんだかアレなんだけど、タッチポイントを維持したいんですよ。キャリアがタッチポイントを失うと、土管屋になる。お客さんが来てもらうことはありがたいことだし、ご指導で、電話をいただけることがありがたいことだと思わないと、土管屋さんで、安く提供してください、MVNOですというのは非常に良くないなと、今日のラインアップもそうですけど、結構、意識込めて、在庫いっぱいたまったら、考えなきゃいけないですけど、ある程度はチャレンジだと思っています。

 またいじめるでしょ、売れ残っているって。今日はありがとうござました」

(★ 「自分はauを使って得をしている」というのをいかに認識してもらうかが重要ですな)

■取材を終えて

 今回は、ひとつの質問に延々と語るシーンも見られるなど、田中社長としては言いたいこと、伝えたいことがたくさんあった発表会だったのかも知れない。実際、サイン入りの宣言文を配っていたくらいなので、本気でauは変わろうとしているのかも知れない。

 NTTドコモは社長が替わるタイミングだし、ソフトバンクはアリババやガンホーの株を売りまくって資金を確保して、次に向けて何か仕込んでいる。そんななか、このタイミングでKDDIは、顧客のことを改めて見直している感がある。田中プロが長いこと社長でいることで、様々に種をまいてきたことがいまになって花を咲かせてきたような気がするし、これからもさらに安定した経営になっていきそうだ。

© DWANGO Co., Ltd.

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