UQコミュニケーションズが、KDDIの100%子会社であるKDDIバリューイネイブラーからMVNO事業を受け継いでから、1年がたった。競合他社に押されていたUQ mobileを立て直すべく、UQは料金プラン、販売施策、タッチポイントなどを見直し、徐々にではあるが勢いをつけつつある。
そして、同社に唯一足りなかったピースといえる「端末」が、この秋から一気に拡充された。これまでKDDI系MVNO向けにはスマートフォンを提供してこなかったASUSやHuawei、TCLなどの中国、台湾メーカーもラインアップに加わり、価格帯もローエンドからミッドハイあたりまで幅が広がっている。7月に提供を開始したiPhone 5sも、他のMVNOにはないUQ mobileの強みだ。
このタイミングに合わせ、UQ mobileは深田恭子、多部未華子、永野芽郁を起用したテレビCMも開始。ライバルであるY!mobileを、万全の体制で追撃する。そのUQ mobileを率いるのが、UQコミュニケーションズの野坂章雄社長。同氏が、この1年を振り返るとともに、UQ mobileの最新戦略を語った。
――(聞き手:石野純也) 10月24日の発表会では、端末のラインアップがかなり充実した印象があります。まずは、ここに至った経緯を振り返っていただけないでしょうか。
野坂氏 これまでは、端末が足りていなかったという印象ですよね。それは自分でも認識していましたし、店頭でSIMフリーコーナーに行くとFREETEL、Huawei、ASUSが全盛で、どこへ行ってもそれらがある。一方でUQは国産の京セラとLGだけで、不戦敗のようなところがありました。弾を持たずに戦場に出ているようなものでしたね。
それでも、UQの営業には「頑張れ」「石ころでも売ってこい」と言っていました。営業はそれができなければいけない。そんな中で、京セラの端末も、一番安いからでしょうか、余計なことを考えずに買われるという発見はありました。世の中のシェアはiPhoneが一番高くなっていますが、じゃあ(月額)2680円のiPhoneと、型落ちして結果1980円で収まる京セラ(DIGNO L)だと、どちらがいいのか。よほどのことがない限り、お客さまも京セラ端末がシンプルだからいいとなります。僕も自分で使ってみましたが、基本的なことは全てできますし、問題はまったくありません。
ただ、全体的に、世の中の常識として、SIMフリーコーナーや自分MVNOたちのコーナーに飾る端末は欲しい。大きな見方をすると、NTT系MVNOとau系MVNOがあり、au系は端末が遅れていたのは事実です。そこは、うちのメンバーが頑張ってプッシュをかけてくれました。その結果がASUSであったりHuaweiであったり、国産であればシャープですね。頑張ったことによって、端末がそろってきました。お客さまには選択が必要で、「梅」しかないのと、「竹」があって「梅」があるのとではやはり違います。
今回は3つの大きなポイントとして、デバイスと安心・安全、リアルな店舗という3つを発表しました。そのほとんどが10月25日スタートですが、突貫工事で何とか間に合わせたというのが本当のところです。KDDIバリューイネイブラーを合併してから1年たちましたが、やっぱり1年はかかってしまうなぁとあらためて思っていたところです。(やることがありすぎて)メディアの皆さんにもなかなかお会いできないという現実がありました。
この1年でぴったりプランも出し、端末も増え、それ以外にも量販やショップなどの販路も見えてきた。(データ容量の)ダブル増量もあり、ようやくこれで片が付きました。
―― 端末に関してはUQ mobileを吸収した直後から働きかけてきたのでしょうか。
野坂氏 言い方が悪いかもしれませんが、相手も人を見ていますから、「UQ mobileナンボのもんじゃい」という雰囲気はありました。ロットの数も1桁、場合によっては2桁小さい。どのくらいau系MVNOが立ち上がるのかと見ていたところはあると思います。なので、少し先行的に思いを見せていかないと、鶏が先か卵が先かの議論になってしまう。堀田茜さんを起用して露出を増やし、「UQは本気だな」と思ってもらったりしました。
―― 確かにUQ mobileだけだと、ロットが少なすぎるというのはありそうですね。
野坂氏 そういう意味では、(au系MVNOには)mineoさんもJ:COMさんもいます。今まではMVNOといえばドコモさんのものでしたが、こういうものは1社では無理で、大きな構図で見れば、僕らは攻める側です。大きなところでは団結していかないと、ビッグ3(大手3キャリア)とわれわれの関係は、そんなに簡単にはいきません(変わりません)。
―― 今回のラインアップで十分そろったという印象をお持ちでしょうか。
野坂氏 まだ十分かどうかはまでは分かりませんが、今までルーター1個しか売っていなかったメンバーが、スマホ1つ1つの機能の違いを理解し、それをデフォルメして「こういうのがオススメです」と言わなければなりません。お客さまの中には、こういうものに詳しい人から、「店員さん決めてよ」という人までいて本当にさまざまです。細かく理解すればいいのではなく、知った上でかみ砕いて伝える。それが本当の営業です。
―― 端末ごとに、どういうすみ分けをしているのでしょうか。
野坂氏 「ZenFone 3」「ZenFone 3 Deluxe」「P9 lite PREMIUM」はちょっとハイエンド寄りで、「AQUOS」は女性寄りですが、国産のよさのようなものもあります。「IDOL 4」になると、ハイレゾ、サラウンドで音が出て、VRも楽しめる。VRは実際にやってみると違いが分かりますが、こういう商品(パッケージそのものがVRゴーグルになっている)が出てくるのは、とても面白いですね。ほかにも、LGの「X SCREEN」や、TCLの「SHINE」もあります。
男女や、ハイ、ミドル、ローで分けることを考えたとき、お話しやすいものはそろってきています。これから先は、売れ筋や値段を見ながら、本当に一番いいのはどこだろうと探っていきます。今は、最低限、ケータイ屋としての選択肢が用意できたというところですね。
これも、まずやってみないと分からないことではあります。今は上滑りが怖い。まずは仕事を進めようと、社内でも言っています。
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