「auのサブブランドでは意味がない」――新生「UQ mobile」が目指す“第三極”MVNOに聞く(1/2 ページ)

» 2016年04月11日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]
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 KDDIの子会社として発足したKDDIバリューイネイブラー(以下、KVE)が運営し、auのサブブランド的な位置付けとなっていた「UQ mobile」だが、動きの速い格安SIM市場では、大きな存在感を発揮できていなかった。こうした中、KDDIは2015年10月に、UQ mobileの事業を関連会社のUQコミュニケーションズに移管。同社の下で、WiMAX 2+と2枚看板で事業が展開されることになった。

 そのUQ mobileが、2月になって新たに打ち出したのが、「ぴったりプラン」だ。この料金プランは、月額2980円(税別、以下同)の中に、1200円分の無料通話と、1GBのデータ容量を含むもの。プラス1000円で無料通話が2400円分、データ容量が3GBにアップする。通話の部分定額はないが、金額やデータ容量は、ソフトバンクのサブブランドであるY!mobileに真っ向から勝負を挑んだ格好だ。

 さらに、このぴったりプランには、「マンスリー割」という割引も提供される。これは、端末の購入を受け、24回にわたって料金を値引く仕組み。UQ mobile発足時に発売したLGの「LG G3 Beat」や京セラの「KC-01」に加え、SIMロックフリー端末としてメーカーが販売する富士通の「arrows M02」まで対象になっているのは、特筆すべきポイントだ。UQコミュニケーションズでは、今後、マンスリー割の適用対象となる端末も広げていくという。

UQ mobile 新たに提供された「ぴったりプラン」

 大きなリニューアルを果たしたUQ mobileだが、その狙いはどこにあるのか。新プラン登場後の動向も合わせ、UQコミュニケーションズの野坂章雄社長に話を聞いた。

KVEからUQコミュニケーションズに移管した理由

UQ mobile UQコミュニケーションズの野坂章雄社長

――(聞き手:石野純也) UQ mobileがUQコミュニケーションズに移管されましたが、その経緯があまり伝えられていない印象があります。あらためて、UQコミュニケーションズがUQ mobileを展開する意義を教えてください。

野坂氏 UQ mobileは1年ちょっと前に、KVEが始めたMVNOです。それから、いろいろとやってきましたが、KVEとしてのブランドがなかなか作れなかったのは事実です。そういう中で、UQコミュニケーションズは「ギガ放題」でブランドを確立してきました。かつては、イー・モバイル(現・Y!mobile)の背中を見て、追いかけている世界でしたが、今では量販店のシェアでは5割5分から6割になっています。量販店ではメジャーになってきたUQコミュニケーションズが、片方にあったわけですね。

 ただ、ルーターだけで、未来永劫、一枚看板でやっていけるかというと、必ずしもそうではありません。こういうことは、以前から思っていました。そこで、昨年(2015年)の6月ごろ、KVEと営業協力して、UQ mobileを勧めるということをやってみました。それでもそこそこの数は出ていたのですが、営業マンは、WiMAXのルーターか、スマホかというと、やはりルーターを勧めてしまう。もっと大きく育てるには、UQコミュニケーションズとUQ mobileが一緒になった方がいいのではというのが、合併の経緯です。

―― 合併後、しばらく動きがなかった中で、2月にぴったりプランが発表されました。この狙いは、どこにあるのでしょうか。

野坂氏 KDDIグループのMVNOとして見ると、ちょっと周回遅れになっていた感があります。ただ、格安SIMの世界でずっとやっていくかといえば、多分そうではありません。業界には3キャリアという実力者がいる一方で、片方では格安で価格競争になっています。その中で、われわれが格安に行くのはちょっと違うのではないでしょうか。

 私自身、「第三極」とずっと思っていましたが、一定のブランドを持った、価値を作る必要があります。ちょうどそのようなときに、政府のタスクフォースが始まり、端末料金を分離して、2年契約も緩和するなど、店頭も様変わりしてきました。結果としてですが、時代もマッチしてきています。となると、これはチャンスなのではないか。SIMカードだけを持ってきて、挿すのは「なんか不安」という層は多いはずで、そこには、サポートや信用力が必要になります。

 それを考えたのが、ぴったりプランで、通話料までコミコミで2980円というのは、結構安いのではないかと思っています。これは、本当にギリギリの判断をしましたが、周回遅れである以上、そういうことを提供しないとインパクトが出ない。われわれの価値を分かっていただけなくなってしまいます。出してみたところ、これは割と評判もいいですね。

―― 反響も大きかったということですね。

野坂氏 UQコミュニケーションズとして両軸でやっていて、片方でWiMAXのルーターを売りながら、片方ではスマホを売っています。商品知識も2倍ではきかなくなりますから、営業も大変で、お客さまの出方を見て、何が必要かを見分けなければなりません。営業マンも、スキルを磨いている過程です。ただ、おかげ様で、スマホセットがぐんぐん伸びている状況です。

 UQコミュニケーションズは、全国の量販店に、1000人のスタッフを入れています。これはすごいアセットですね。Y!mobileのようにショップがあるわけではありませんが、量販店で誘導でして、「スマホをどうぞ」とやれるようになってきています。これは大きな変化ですね。

 先ほどお話ししたように、確かに店頭の雰囲気は様変わりしてしまいました。ヨドバシさんなどに入ると、入口の近くにWiMAXがあり、Y!mobileがあり、3キャリアはその奥というように、逆転もしています。WiMAXとタブレットをセットにするという流れが出てきている中で、SIMカードとスマホを一緒に売るというのが分かりやすかったのだと思います。

UQ mobileはWiMAXよりも女性比率が高い

―― ブランドが重要とのことですが、この点をもう少し詳しくお話しください。

野坂氏 僕らがWiMAXで戦ってきた中の感触で言うと、「UQ」というブランドに対する安心感や信頼感はあると思っています。ブランドというのはものすごく重要で、春商戦では、堀田茜さんを起用してCMもやっています。ここでも、あまり2980円だったり、UQ mobileをどうぞというような言い方はしていません。ガチャピン、ムックも小さくして、企業目線より、ユーザー目線を重視しています。

UQ mobile ぴったりプランの提供に合わせ、「ピンクガチャ」「ブルームク」と、モデル・女優の堀田茜さんをCMキャラクターに起用。「わたしにピッタリくるスマホ」として訴求していく。

 おかげ様で評判もよく、認知度も上がってきています。KVEのころのUQ mobileは、知名度も下の方でしたが、今では上位10位ぐらいにはなってきている。これは、これから、もっと上げていかなければいけないと考えています。

 また、WiMAXのときはお客さんの7、8割が男性でしたが、UQ mobileの初期的な調査では、女性比率も半分ぐらいになってきています。これはうれしくもあり、意外でもあるのですが、楽天さん、イオンさんの次ぐらいに高いところに、UQ mobileが来ています。ものすごくギークなお兄ちゃん(のWiMAXユーザー)たちと、ニューカーマ―の女性(のUQ mobileユーザー)で、全然客層が違うんですね(笑)。年齢層も20代、30代とバラつきがあり、初期的な打ち出しはよかったと考えています。

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