この他にも、タイプAを利用すると、テザリングができない、データ通信速度が安定しない、音声着信があったときに発信者番号が「+81」から表示される、開封直後のSIMが利用できない――といった問題が見つかっているという。
テザリングできない問題については、iPhone 6s世代以降のSIMロックフリーiOS端末については、残念ながら対応策がない。KDDIはテザリングの可否をサーバで管理しているが、MVNOにはテザリングを許可する権限がなく、サーバにもアクセスできない仕様になっているためだ。ただし、同じMVNOでもUQ mobileの場合はUQ専用のキャリア設定があるためテザリングが可能だ。
なお、一部のAndroid端末でテザリングできない問題は、IIJmioのAPN以外を全て削除することで解消する。
IP MTUによってデータ通信速度が安定しない問題もユーザーでは対策できず、端末側の対応が必要だ。MTUとは1回のデータ転送で送信可能なデータグラムの最大値で、一般的なIP MTUである1500バイトのパケットをau回線で送信しようとすると、パケットの分割・組み立てが起こってしまう。余計な処理が起こるため、速度が遅くなるという現象だ。
この問題に対処するには、端末側のインタフェースをIP MTU 1420バイトに設定し、端末自身が長いパケットを受け取れない状態にする必要がある。この設定を行ってスピードテストを行ったところ、下り速度が大幅に改善した。なお、au純正端末はこの値になっているそうだ。
音声着信があったときに、発信者番号が「+81」から表示される問題は、au VoLTEの仕様に端末が対応していないために起こる。
VoLTEはSIPというプロトコルを利用して音声の発着呼を制御している。端末は着呼時にSIP INVITEメッセージを受け取り、その中に記載されていて発信者番号が端末に表示される。au VoLTEのIMS仕様では、発信者番号が+81から記載されてしまっている。そのため、端末のアプリ側でそれを0に置き換える実装が必要だ。
開封直後のSIM(タイプA)が利用できない問題は、モバイルWi-Fiルーター「MR04LN」と「MR05LN」で起きた。これはタイプAのSIMとモバイルルーターの仕様との相性に問題があったためだという。在圏登録がうまくできず、圏外状態が続いてサービスが利用できなくなっていたのだが、モバイルルーターの国際ローミングを有効化すると接続可能になった。
以上の問題があり、タイプAを契約するには、端末が以下の条件をクリアすることが必要だ。
・au端末を活用する場合は、VoLTE対応で、かつSIMロックを解除してあること
・iPhoneの場合はiPhone 6s世代以降の端末であること
・iPhone以外はKDDIの相互接続テストに通過したSIMロックフリー端末であること
タイプAは、ドコモ回線を利用するタイプDに比べて考慮すべき条件が多く、上級者向けの印象だ。大内氏は「これらの条件を確認した上でタイプAを契約してほしい。また、SIMフリー端末メーカーにも対処をお願いしたい」と締めくくった。
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