タッチパッドも変更されている。新たに採用されたガラスベースのタッチパッドでは、MacBook Air並に操作領域が広くなり、ボタンが省略された。さらにフィンガージェスチャーの数も増えており、4本指の動作に対応するそして3つめのポイントが新ユーザーインタフェースである。タッチパッドにおけるマルチタッチなどのフィンガージェスチャーの便利さは、実際に一度でも試したことがある方ならよくご存じだろう。それは近年デルやマイクロソフトといったメーカーが、相次いで製品でのマルチタッチ対応を進めていることからもよく分かる。
Appleのマルチタッチ技術自体も年々進化しており、従来の2本指スクロールに加えて、iPhoneで導入された「ひらく/つまむ」といった「ピンチ」(Pinch)と呼ばれる拡大/縮小動作、そして2本指を回転させることで起こせる「回転」動作など、バリエーションが増えている。今年1月にリリースされたMacBook Airではフィンガージェスチャーをさらに重視しており、タッチパッドの面積を大幅に拡大、そして新たな動作として画面切り替えを行う3本指ジェスチャーを追加している。
新型MacBook/MacBook Proでもこの路線を踏襲した。新たに採用するガラスベースのタッチパッドでは、操作面積をMacBook Air並の水準まで広げ、さらに操作しやすいようになめらかな表面加工にしている。また、面積を拡大した代わりにボタンが省略されており、パッド全体でクリック(少し沈むようだ)をするかタップ動作で代替するようになった。このあたりは評価が分かれるところだが、種々の改良で全体の操作性は向上していることを付記しておきたい。また新たに4本指ジェスチャーも追加されており、ここにはExposeのほか、アプリケーション切り替えが割り当てられている。


まず基本操作の1本指。カーソルの移動等を行う(写真=左)。2本指。画面スクロールのほか、ピンチ(Pinch)と呼ばれる「つまむ/広げる」の動作、画面やオブジェクトの回転などが行える(写真=中央)。MacBook Airから採用された3本指ジェスチャー。画面のスクロールや切り替えを行う。Safariで使用すると「前の画面」「後ろの画面」の切り替えとなる(写真=右)以上に挙げた3つが最も大きな変更点だが、改めて振り返ってみると、意外と地味な改良だと思えてくる。しかし、新型ボディはノートPCで問題となる剛性を上げ、さらに薄型、軽量化を実現する要素でもある。グラフィックス処理のパフォーマンスも一部のユーザーが切実に待ち望んでいたものだろう。新型タッチパッドもUIの重要性をよく認識しているAppleならではの改良であり、少しずつ着実に製品がよくなっていることを実感できる。そんな地に足のついた改良が新型MacBookファミリーの特徴と呼べるかもしれない。
ここまで挙げてきたのは、今回アップデートされたMacBookとMacBook Proに共通する特徴だ。気付かれたと思うが、筐体デザインとシステムデザインの両方で共通化が進んでおり、PowerBookやiBook時代から継承されてきた2つの異なるノートPC製品ラインが1つに収れんしようとしている。
両者の違いは、基本スペックのわずかな差を除けば、もはや筐体サイズのみとなっており、15インチを選ぶとMacBook Pro、13インチを選ぶとMacBookという形で名称が異なってくるというレベルである。ある意味で、MacBookの高級化が進んだとも言える。
まず、15インチMacBook Proの製品ラインアップから見てみると、1999ドルと2499ドルで2種類が用意されている。違いはCPU、メモリ容量、GPUメモリ容量、HDD容量と、スペック上の違いのみだ。オプションでさらに上位のCPUを選択可能なほか、128GバイトのSSDも搭載できるようになっている。SSDの128Gバイトという容量は、初代MacBook Airに搭載された64Gバイトと比較して2倍だ。ちなみに、MacBook Proの17インチモデルについては、マイナーアップデートにとどまる。
次にMacBook。メタル筐体、LEDバックライトというMacBook Proのみの特権だった機能がMacBookにも採用され、両者の差が縮まった原因ともなっている。さらにチップセットの変更により、グラフィックス処理能力も向上した。

新MacBookは、従来までMacBook Proの専売特許でもあったメタルボディや高速GPU、LEDバックライトのディスプレイといった機能を備える。デザインもMacBook Proをほぼ踏襲しており、Proの小型版といった印象だ(写真=左)。デザインだけでなく、システム構成もほぼ同じで、チップセットはGPU統合型のGeForce 9400Mとなっている。ただし、外付けGPUのNVIDIA 9600M GTは用意されない(写真=右)新型MacBookは1299ドルと1599ドルのモデルが2種類用意されており、各々の違いはスペックのわずかな差だけだ。なお、新MacBookのリリースとともに、従来のMacBook(黒)とMacBook(白)の上位版は廃止され、新型へと収れんすることになる。一方で、MacBook(白)の下位モデルはそのまま継続され、価格が999ドルと1000ドルを切る水準まで下げられた。これは“安い”MacBookがPC市場におけるAppleのシェアを押し上げ、ユーザーの裾野を広げていたという功績もあり、あえて普及価格帯のモデルを残したのだと考えられる。
MacBook Proの背面カバーを開けたところ。プレスリリースではあまりフィーチャーされていないが、HDDやSSDの交換が容易になっている点は高く評価したい。従来のMacBook Proにはなく、MacBookで大きく優れていた点の1つだまた、MacBook Proで特筆事項として、HDDなどのストレージ交換が容易になった点が挙げられる。ボディを裏返してバッテリー部分のフタを開けるとHDDが露出し、これでHDD交換が容易に行える。従来のMacBook ProがHDD交換のためにキーボードを外したり、面倒な手順を踏まなければならなかったことを考えれば雲泥の差だ。もちろん、簡単にHDDを交換できる仕組みは新型MacBookでも採用されている(もともとMacBookで高く評価されていたのはHDDやメモリ交換の容易さで、その特徴がMacBook Proに移植された形だ)。
そのほかにも、ディスプレイをガラスで覆ったデザインや新しいトラックパッドなどは、iMacやMacBook Airといったほかの製品ラインで評価の高かった部分のDNAを取り入れつつ、さらにハイブリッドな製品として昇華させた印象を受ける。
さて、続く中編ではAppleの最新事情と、この手のイベントではめずらしいジョブズ氏を交えたQ&Aの模様をリポートする。
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