動画の再生能力にも触れておこう。これまでのパフォーマンステストではXP環境がVista環境に勝る結果となったが、グラフィックス性能に限ってはXP環境が不利になる。前ページのテストでグラフィックス関連テストのスコアが算出されなかったほか、HD動画の再生能力が大きく変わってくる。
Intel GMA 500はHD動画の再生支援機能を搭載しているのだが、XP用ドライバやソフトウェアの環境が整備されておらず、XPではHD動画の再生支援機能がサポートされていない。したがって、XPの標準環境ではHD動画の視聴は困難だ(ただし、ユーザー自身がPowerDVD 9を導入すれば、H.264の再生支援は適用できる)。
Vista環境とXP環境における動画再生能力の違いは、以下の記事で詳しく検証しているので、併せて参照してほしい。
以上、スペックが違う2台のVAIO type PにおけるパフォーマンスをVista環境とXP環境で比べたが、やはりXP環境ではかなり動作速度が改善されるという結果が得られた。ベンチマークテストの値ではイメージしにくいかもしれないが、実際にWindowsを操作してみると、明確なレスポンスの違いがある。
処理速度の感じ方は人それぞれだが、実機を使い比べてみた感想も述べておこう。高スペックな直販モデルのVGN-P90HSは、さすがにVistaでも実用レベルで操作できた。Vista(SP2)にアップデートして数日試用してみたが、動作は安定しており、XP化しなくても十分使えるという印象だ。Vista環境で運用していれば、将来的にWindows 7へのアップグレードもしやすい。
ただし、これをXP化すると、XPが全盛期だったころの超低電圧版Pentium M搭載モバイルノートPCと似たような感覚で、OSの基本操作やWebブラウズがサクサクと利用できる。XPの軽快さを取るか、Vistaの多機能ぶりを取るかは悩ましいところだが、Vista環境が日ごろから重いと感じているならば、データをバックアップしたうえで一度XP化にトライしてみるのもいいだろう。
低スペックな店頭モデルのVGN-P70H/Rは、Vistaの動作がやはりもたつくことが多い。ある程度は使っていくうちに慣れるだろうし、Webブラウズやメールの利用程度であれば大きな問題はないのだが、外出先のちょっとした時間でPCを使いたい場合などでは、このレスポンスの鈍さが利便性を損ねることがある(インスタントモードは起動が速いが、機能が限定される)。
しかし、OSをXPにすることで、こうしたストレスからはかなり解放された。もともと非力なマシンなので、ウィンドウの展開やアプリケーションの処理で待たされることはあるが、それでもVista環境とは歴然とした差があり、XP環境のVGN-P70H/RはVista環境のVGN-P90HSより快適に扱える場面も少なくなかった。低スペックな構成でVAIO type PのVistaモデルを購入したユーザーにとって、XP用ソフトウェアは価値が高いといえる。高スペックの構成よりXP化のメリットが得られるはずだ。
冒頭でも述べたが、いずれにしてもVista搭載VAIO type PをXP化すると、XP化によって発生する不具合に関してはメーカーサポートが受けられず、プリインストールのソフトウェアはほとんどが使えなくなる。この点をよく検討し、納得したうえでXP化を試してほしい。最後に、非サポートながらユーザーの要望をいち早く採り入れ、XP用ソフトウェアの無償配布に踏み切ったソニーの英断は称賛したい。
なお、ソニーはVAIO type PのWiMAXモデルについても開発を表明している。PC USERでは今後もVAIO type Pの動向に注目していく予定だ。
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