2011年のAMDは“APU”で総攻撃元麻布春男のWatchTower(2/3 ページ)

» 2010年11月15日 16時00分 公開
[元麻布春男,ITmedia]

先が見えないからクロックも見えない

 Brazosプラットフォームの上位で、メインストリームからハイエンドノートPC、および、メインストリームデスクトップPCをターゲットにしたAPUが「Liano」だ。ノートPC向けが「Sabine」、デスクトップPC向けが「Lynx」と呼ばれる。対応する「Hudson」チップセットとの接続がHyper-Transportではなく、「Unified Media Interface」と呼ばれるものになっている点が、従来のAMDプラットフォームと大きく異なる。

 Lianoは、従来のPhoenom/Athlon IIシリーズと同じ「Stars」(Greyhound+)コアを2〜4基と、DirectX 11サポートのGPUを同じダイの上に集積した。GPUの性能はGFlops級とされるが、現時点で動作クロックなどは明らかにされていない。

 プロセスルールにはGLOBALFOUNDRIESの32ナノメートル SOI High-k/メタルゲートを用いるが、まったく新しいプロセスルールだけに、“例によって”スケジュールは遅れ気味で、2011年半ばという量産開始スケジュールを守れるかどうか、というところだ。2010年のFinancial Analyst Dayで示されたプロセス技術のロードマップでは、32ナノメートルプロセスルールにおける試作品(プロトタイプ)の製造から量産開始までの間隔が、40ナノメートルプロセスルールに比べて明らかに長くなっている。これは、32ナノメートルプロセスルールが十分に成熟していないこと(まだ不確定要素が残っていること)を示している。32ナノメートルプロセスルールの生産技術が確立しない限り、動作クロックも確定できないということなのだろう。

 同じGLOBALFOUNDRIESの32ナノメートルプロセスルールでSOI High-k/メタルゲートを用いるのが、「Bulldozer」コアを用いたCPUだ。ハイエンドデスクトップPC向けの「Zambezi」と、1〜2ソケットサーバ向けの「Valencia」、さらに、Valenciaのダイ2基を1つのパッケージに封入した2〜4ソケットサーバ向けの「Interlagos」が2011年に予定されている。

 Bulldozerコアを用いたCPU(Valencia/Interlagos)の開発スケジュールで、数量が限られるデスクトップPC向けは若干先行できるのではないかと思われるが、既存のコアをベースにし、先行して開発が進んでいたLianoより先になるとは思えない。Lianoが遅れれば、その分だけBulldozerコアのCPUも後ろにずれるだろう。

AMD製CPUとAPUで採用するプロセスルールのロードマップ(写真=左)。Bulldozerコアベースのサーバ向けCPU/APUの量産スケジュール。正式ローンチは2011年第3四半期の予定だ(写真=右)

コア単体では不利ですが

 Bulldozerコアについては、2009年のFinancial Analyst Dayでブロックダイアグラムが公開された。今回公開された情報も、それとあまり変わっていない。ここで興味深いのは、AMDが比較の対象としてインテルの“シングル”コアを選んでいることだ。AMDのBulldozerが、スレッド処理能力(スループット)が高いことを訴求するために紹介されたデータだが、デュアルコアのBulldozerがシングルコアより性能がいいのは当然だ。なぜこのような比較をするのか。

 AMDが提示した現行世代で比較したサーバ向けCPUの性能では、1つのパッケージに2枚のダイを封入し、12基のコアを持つOpteron 6100シリーズと、1つのパッケージに1枚の6コアダイを封入したXeon X5680、8コアのダイを封入したXeon X6550が登場する。AMDは、整数演算で5〜17%、浮動小数点演算で24〜25%優れていると主張するが、12コア対6コア、あるいは12コア対8コアの比較なのに注意が必要だ。よく考えれば、コアあたりの性能ではインテルがリードしていることをAMD自らが認めたことにもなる。

Bulldozerコアのブロックダイアグラム。デスクップPC向けは2011年第2四半期としているが、それもGLOBALFOUNDRIESの32ナノメートルプロセスルールの成熟度次第だろう(写真=左)。AMDのOpteron 6176SE(Magny-Cour)と、インテルの2ソケット対応CPU(Xeon X5680およびXeon X6550)の性能比較(写真=右)

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