絶望視された「アキバ歩行者天国」復活の裏側2010年アキバまとめ(ホコ天編)(1/4 ページ)

» 2011年01月06日 12時00分 公開
[古田雄介,ITmedia]

店舗や街の経営陣は歩行者天国の復活を熱望していた

警視庁の「歩行者天国の交通規制」ページに、秋葉原エリアの試験実施の詳細が載った

 1月23日から6月26日の間、秋葉原の中央通りで歩行者天国が試験的に再開される。実施日は試験期間の日曜日で、時間帯は3月までが13時から17時、6月までは13時から18時となる。対象エリアは、万世橋交差点から末広町交差点までの中央通りだ。中止以前の対象日となっていた祝日は省かれ、万世橋交差点から神田川を越えた須田町交差点までのエリアもカットされているが、それはさまつな変更にすぎない。これまで絶望視されてきた歩行者天国が復活したこと自体、関係者の間では奇跡ともいわれているのだ。

 秋葉原の歩行者天国は1973年から行われてきたが、2008年6月に発生した無差別殺傷事件が直接の原因となってこれまで中止されてきた。また、事件発生の前から路上パフォーマンスや扇情的なゲリラライブなどが常態化しており、治安や風紀の面から問題視されることが増えていたのも中止決定の下地になっている。

 そのイメージが根強く残っているため、街の回遊者や店頭スタッフからは「ヘンな奴が来るくらいなら、別になくてもいい」「(アキバの)偏ったイメージが増幅される危険がある」といった否定的な意見がいまも聞かれる。

 しかし、店舗や施設を運営する側は切実に復活を望む人が多い。ユニットコムの小川氏は「復活は大歓迎です。駅からみて中央通りの向こう側にあるショップからしてみれば、信号という障壁を取り除くホコ天の効果はものすごいものがあるんですよ。ウチの統計データをみても、“あの事件”以降はやっぱり来客数も大幅に減っていますし」と率直に喜ぶ。

 ソフマップ代表の平岡氏も「“あの事件”以来、秋葉原の各業界団体や町内会の方、警察や千代田区の方たちと議論と検討を重ねて、それでも実現までには本当に長い時間がかかりました。そうやって、秋葉原のあらゆる関係者が前向きによくしていこうと努力した結果として、(ホコ天の)復活は本当にうれしいですし、期待もしています」と熱い気持ちを隠さない。

 その平岡氏が、ホコ天復活の第一人者として挙げたのが、オノデンの代表取締役で、秋葉原電気街振興会の会長も務める小野一志氏だ。同氏に電話取材したところ、第一人者の称号を謙虚に否定しつつも、歩行者天国への意気込みを語ってくれた。「なぜ(以前の秋葉原のホコ天が)中断されたかといえば、安全が担保できないからです。そして、さまざまなパフォーマンスが出没して、本来の姿とは違ったものになってしまったからなんですね。それを復活しようというなら、痛い思いをした関係者たちに『今度はちゃんとやりますよ』と伝えて納得してもらうしかない。当然簡単には通りませんけど、だからこそ今回の試験的な復活という事実は、お客さんたちに向けた『秋葉原が安全で安心な買い物ができる環境に整いましたよ』というメッセージになると思います」と語る。

 メインストリートを歩行者天国にすると来訪者の回遊行動が促進され、街全体の活性化につながる。しかし同時に、治安や風紀を守る手間や難易度も上がってしまう。その事実は、国内外にあるホコ天導入都市のデータをみれば明白だ。加えて、秋葉原の場合はサブカルチャーに強いという特殊な要素が加わり、問題を複雑にしていた。そのデメリットが最悪の形で露呈したわけだが、街の作る人々はそこからどうやって「今度はちゃんとやりますよ」と伝えていったのだろうか。

2007年夏の秋葉原歩行者天国。このころには路上パフォーマーや集団ダンスがメディアに注目されることも多くなり、パフォーマンス鑑賞を目当てにアキバに来る人も増えていた

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