インドの都市圏では、ある程度所得が高くなると郊外の高層団地でマイホームを購入する人が増えている。インドの不動産物件を扱うWebページを見ると、インド全土で販売されているマンションの多くが、中国の高層団地によく似ている。欧米的な近代マンションを思わせる外観もさることながら、その間取りも、中国のマンションによく似ていて、玄関を開けたらすぐに広い居間(リビング+ダイニング)があり、そこにソファとテレビがおいてある。インドの新築マンションは、都市にある従来タイプの家に比べて広いので、大画面液晶テレビやプラズマテレビを設置するケースがほとんどという。
とはいえ、都市部で高層マンションが密集している中国と異なり、インドでは郊外に少しずつ高層マンションが建ち始めている段階で、都市部の多くの人々は、従来のあまり広くない家に住む。もともと所得的な違いもあるが、それ以上に住居環境が制約条件となって、そういう家に住む都市部の人は大画面テレビを購入しようと思わない。

インドで典型的な売り出し中の最新マンションの間取り。玄関開けたらすぐリビングという中華式がほとんどという(写真=左)。最新の高層マンションが建つ郊外には高級ショッピングモールがあって、主に外資系メーカーの大画面薄型テレビを扱っている(写真=右)インドの家電販売店やスーパーマーケット、ショッピングセンターで、まず目立つのが暑さ対策関連のエアコンと扇風機となるが、インドで人気の扇風機はちょっと“すごい”。「ルームクーラー」と呼ばれるエアコンの室外機のような形状だが、これが扇風機というから日本人もビックリだ。
この巨大な扇風機に水道管をつなぎ、ファンの下に水を貯めて、その水が蒸発して気化熱が奪われたあとの涼しい空気をファンで送っている。その仕組みを利用する「冷風扇」は日本でもごく普通に販売されているが、インドのルームクーラーは、とにかく巨大だ。この巨大なボディから繰り出す冷風は、インドでも人間が生きていける室温まで着実に冷やしている“ような気がする”。
扇風機に次いで売れるのがテレビだ。インドでは、今でも小さなブラウン管を内蔵するテレビを売る店が主流だ。しかし、それでも32型以下の液晶テレビを扱う店も増えてきた。インドのテレビ事情でユニークなのは、中国や日本では必須のDVDプレーヤーが売られていないことだ。DVDプレーヤーが普及していない影響か、“映画を収録したDVD”もあまり売られていない。
筆者が地方都市や大都市で訪れたインドで平均的な個人住居では、小さなダイニングルームにテレビとインド式扇風機が置かれ、家族そろってカレーを食べてチャイを飲みながらテレビを見ていた。そのテレビにもDVDプレーヤーが繋がってなく、子どもは決まった曜日の決まった時間に放映されるアニメを楽しみ、その間をぬって大人がニュースを見ていた。
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