さて、このようにいくつか表面的な改良について書いておきながら恐縮だが、Windows 8.1がリリースされることの意味、一般ユーザーにとっての利点は、個々の機能改良そのものではなく、毎年キッチリと改良版をアップグレードに対する不安が少ない形で提供していく。その方法について具体的に示したことにあると思う。
従来のような数年おきの全面改良を繰り返すだけでは、動きの速いクラウド時代にはついて行けないからだ。クラウドを中心にアプリケーションが構築されるようになり、多くのアプリケーションは大きなバージョンアップごとにリリースし直すのではなく、サーバ側を常にアップデートし続ける、継続的な改良が行われるのが当たり前になった。
スマートフォン/タブレットのアプリの場合、(もちろん品質改善のアップデートもあるが)サービス側のアップデートに合わせてアプリが差し替わる場合が多い。アプリに関して言えば、OfficeやAdobeのツールのように、クライアント側の処理が大部分となるものを除けば、サービス側がアップデートのペースを作っている。
そんな状況の中で基本ソフトが数年に1度しかアップデートされないのでは、その時代に合ったプラットフォームとすることは難しい。大規模アップデートをドカーンと打ち上げるのではなく、その年ごとのアップデートを行っていく形にWindowsも変化していかねばならない。
そうした意味で(まだプレビュー版ながら)、Windows 8.1は今後のWindowsが歩もうとする道のりを示す役割をうまく果たすのではないだろうか。8.1では8で積み残したテーマを盛り込むことに奔走したように思えるが、来年もこのペースでの改良を続けることができれば、数年後にはタッチパネルへの取り組みもかなりこなれてくるだろう。
後はそれをやり遂げる実行力、継続力がMicrosoftにあるか? だが、そうした面のシツコサには定評のある会社だ。
BUILD全体を見渡すと、相変わらず熱心なソフトウェア開発者からの注目が高いという印象は受けたが、同時にイベント参加者の年齢層が高いことも気になった。これはGoogle I/Oなどに比べて約2倍という高価なカンファレンス参加費も関係しているのだろうが、開発コミュニティの高齢化が進んでいるのであれば、Win32の世界からModern UIの世界への移行における最大の問題になっていくかもしれない。
シリコンバレー界わいのうわさによれば、Google I/Oのチケットは学生がより買いやすくなるような調整をしているのだとか(買うチャンスが少しだけ高くなるよう調整している)。真偽は定かではないが、未来を創るのが誰か、新たな注目サービスを生み出すのは誰かを考えれば、そうした方策が採用されていてもおかしくはない。
BUILDのかたわら、既に出資を受けたスタートアップ企業が集うシェアオフィス、Rocket Space(米サンフランシスコ)を訪れてみたが、ほとんどの会社がMacで開発をしている。開発用の端末にMacを用い、サーバはLinuxで作るところが多く、Windowsベースで開発をしているのはそのフロアで1社だけだという。別途、Twitterを表敬訪問したが、(ほとんどがエンジニアである)ここでも使われているのはMacだった。
MicrosoftがBUILDで見せたさまざまな開発成果や方策は、それぞれに納得できるものだったと思うが、一方で開発コミュニティの若返り、学生やスタートアップ企業とのコミュニケーションなども同時に行っていかなければ、せっかくの開発成果も正当な評価を受けられないだろう。
まだまだPC向け基本OSにおける圧倒的な地位と企業向けサーバソリューションでの強さを持つMicrosoftとはいえ、ここは正念場と言えるタイミングなのだと思う。
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