AndroidアプリのWindows 10移植ツールを切り捨てたMicrosoft鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(2/2 ページ)

» 2016年03月01日 15時30分 公開
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Xamarin自体はWindows Bridgeの代わりにならない

 Windows Bridge for Androidの開発を止め、Windows Bridge for iOSへと一本化した理由について、ギャロ氏は「ユーザーからのフィードバックで、モバイルOSからWindowsへの移植を目的としたBridgeは2つもいらず、かえって混乱を招くからという意見が多かった」と説明している。

 しかし、仮にモバイルアプリ開発の中心がiOSにあったとしても、作業的には開発者負担の少ないWindows Bridge for Androidのほうがメリットが多く、筆者の周囲からのフィードバックで把握している範囲でも、こちらの期待のほうが高かった。

 この状況でiOSを選択したのは、Windows Bridge for Androidの開発負担がMicrosoftにとって非常に高く、既にオープンソースとして開発の一部が同社の手を離れ始めているWindows Bridge for iOSのほうが負担が少ないと判断したのではないかと考えている。

 両方ともプロジェクトを中断する選択肢を選ばなかったのは、前述のようにオープンソースとして既にプロジェクトが公開されていること(実際、直近のタイミングでWindows 10 Mobile用のARM32サポートが新規追加されている)、そしてメッセージとして「Microsoftが他のプラットフォームから開発者を引き入れることを断念した」と受け止められることを避けたかったのではないか、というのが筆者の予想だ。

 実際、Xamarin自体はWindows Bridgeの代替にはならない。Windows Bridge for Androidは主要開発言語がJavaであり、コード作成からWindowsストアの登録まで、一連の作業をAndroidの主要開発ツールであるEclipseのプラグイン実装だけで完了できる。またWindows Bridge for iOSは、iOSの開発ツールであるXcodeでのプロジェクトをMicrosoftの開発ツールであるVisual Studioにインポートしてコードを改変する必要があるが、開発言語はObjective-Cであり、Windows上での作業は最小限で済むという点が特徴だ。

 一方で、Xamarinの主要開発環境はC#+.NETであり、既存のAndroidやiOS開発者をUWPアプリ開発へと引き込む性質のものではない。つまり、他のプラットフォームから開発者を引き入れてのモバイルアプリ開発促進というWindows Bridgeの役目は既に断念しており、既存のレガシーアプリ移管を目指したWindows Bridge for Classic Windows appsがWindows Bridgeの主役になっているが現状だ。

Xamarin XamarinはC#でのAndroid、iOS、Mac OS X、Windowsアプリ開発のためのマルチプラットフォームを提供する。しかし、既存AndroidアプリのUWPへの移植を簡易化してくれるものではない

水面下で開発が進む「for Classic Windows apps」は間もなく浮上か

 というわけで、当面の注目はWindows Bridge for Classic Windows appsへと集まることになる。2016年3月末に開催される開発者会議の「Build 2016」でも報告される可能性があるが、このタイミングでは初期段階でのデモが披露される程度にとどまる可能性が高い。前述したギャロ氏の報告ではWindows Bridge for Classic Windows appsにも触れており、同ツールの初期コードが間もなく公開されるという。

 ただし、Windows Bridge for Classic Windows appsの究極の目的は「信頼性の確保」と「既存のWin32コードのUWP移管」にある。レガシーサポートを理由に旧プラットフォームに固執しているユーザーを納得させ、Windows 7の延長サポートが終了する2020年の前までに順次Windows 10以降のプラットフォームへと誘導していかなければならない。

 手順としては、現在クローズドβでのテストが行われているツールの公開範囲を拡大し、比較的幅広い開発者でのテストでフィードバックを得つつ、比較的長い期間をかけて正式版リリースへと持ち込む形になると考える。

 興味深い話題としては、このツールを使ってデスクトップ版のOffice 2016を変換したものが、Windowsストア上に「Centennial Office Test1」の名称で出現したという。米Neowinによれば、Windows Bridge for Classic Windows appsを使ってOffice 2016を変換したものとみられており、1GB近いファイルサイズがある。

 初期段階のツールで変換されたアプリケーションであり、Microsoftの公式対応でもないとみられることから、これ自体で何かを判断することはできないが、Windows Bridge for Classic Windows appsそのものは水面下で作業が進行し、間もなく何らかの形で発表がある兆候ではないだろうか。

 ただ、真に重要なのはユーザーの各環境で動いているWin32や.NETベースのレガシーアプリケーションをいかにUWPへと持ち込むかということであり、むしろツールの公開範囲を拡大してからの長期βテストにおける品質向上のほうが苦難の道かもしれない。当面は、Build 2016前後で公開されるWindows Bridgeのアップデート、特にWindows Bridge for Classic Windows appsの動向に注目してほしい。

Build 2016 米Microsoftは1月19日(現地時間)、開発者会議「Build 2016」のチケットをオンラインで発売したが、発売後1分で売り切れた。Build 2016は3月30日〜4月1日の3日間、米カリフォルニア州サンフランシスコで開催される

※UWPアプリに関する記述を誤解がないよう一部修正しました(2016年3月10日19時/PC USER編集部)


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