「Android冷蔵庫」が地震大国ニッポンを救う?:Androidの組み込み事例

» 2009年04月21日 19時04分 公開
[平賀洋一,ITmedia]
photo 日本アンドロイドの会幹事の嶋是一氏

 4月16、17日に行われた「第4回IEMF次世代モバイル展」において、日本アンドロイドの会幹事の嶋是一氏と同幹事 組み込み WG(ワークグループ)サブリーダの水野光男氏が「Android」に関する講演を行った。

 GoogleのAndroidは、携帯電話向けのオープンなOSとして脚光を浴びているが、開発や実装のしやすさから携帯電話以外の組み込み機器への応用も注目を集めている。嶋氏は、AndroidがCPUなどハードウェアの違いを吸収するミドルウェアやドライバを備え、またアプリケーションがLinuxカーネル上のJava環境で動作することを紹介し、「Androidはアプリを開発する側から見ればOSに見えるが、ハードウェアから見ればアプリは仮想環境で動くに過ぎない。ハードとソフトの差を巧みに吸収する仕様になっている」と解説した。

 また、Androidとほかのケータイプラットフォームを比較したとき、Androidはハードウェアからドライバ・RTOS、ミドルウェア、アプリケーションと構成する各レイヤーに手を加えることができるため、ほかのオープンではないプラットフォームと比べて開発の自由度が高く、「誰でも開発でき、誰でもビジネスに参入できるオープンな仕様だ」と付け加えた。

 例えばケータイアプリの代名詞でもあるiアプリやEZアプリ、S!アプリは、キャリアが定めた実行環境でしか動作しないため、提供したい機能があってもミドルウェアやハードウェアまで手を入れることができない。また、iPhoneアプリもハードウェアやOSは固定されていて、iPhoneが備えるセンサーや通信機能を使うしかない。一方のAndroidは、ハードウェアの選択肢も広く、カーネルやミドルウェアの各領域を開発できる点が異なる。

photophotophoto オープンで柔軟なAndroidの開発環境は、既存サービスとのマッシュアップが容易に行える。これまでは難しかった「勝手ケータイ」の開発も実現するかもしれない

 嶋氏は、こうした環境がロイヤリティ不要の無料で提供される点や、オープンソースであってもライセンス規定がApache2.0ライセンス準拠のため商用利用がしやすい点、Google単体ではなく多くのハードウェアメーカーや通信キャリアが参加する「Open Handset Alliance」(OHA)がコントロールしており、ほかのプラットフォームに比べて“しがらみ”が少ないことなども補足した。

 「Androidのオープンな開発環境は、アプリケーション以外の分野にもマッシュアップをもたらすと考えている。サービスと直結した新しい通信デバイスの開発や、組み込み機器への応用、未知のユーザーインタフェース(UX)の発見などだ。唯一のAndroidケータイである『T-Mobile G1』は、モーションセンサーとGPS、Webブラウザを使ってモバイル環境でGoogleのストリートビューを実現している。標準的なケータイデバイスと、Googleのサービスだけで拡張現実にも通じるサービスを提供できる」(嶋氏)

 嶋氏は、Androidの柔軟な開発環境を駆使すれば「勝手ケータイ」の開発も夢ではないと話す。ケータイ以外にもAndroidをサポートするハードウェアはいくつも発表されているほか、ウィルコムの「W-SIM」やイー・モバイルの通信端末など、通信機能をモジュール化した製品が低価格で提供されている。こうしたデバイスを組み合わせれば、自社のアイデアをすぐに形にした単機能ガジェットの開発も容易に行え、さらにデバイスやセンサーを追加することでユーザーに関連する感覚や機能を追加した「属人機」への発展も期待できるとした。

Android冷蔵庫が地震大国ニッポンを救う?

photo 日本アンドロイドの会 幹事 組み込みWGサブリーダの水野光男氏

 オープンなプラットフォームとしてスタートしたAndroidは、嶋氏が説明した通り新時代のケータイ開発を担う存在になろうとしている。その開発環境はオープンでありながら充実したSDKが提供されるなど柔軟で、幅広い事業者の参入を促すものだ。

 水野氏はAndroidは携帯電話だけでなく組み込み用途でも活用できるとし、シャープのLinuxザウルスやOMAPプラットフォーム、ARM11を搭載した汎用プラットフォーム「Armadillo-500」への搭載例を紹介した。

 AndroidはWebkitベースのWebブラウザに加え、ローカルにサーバ環境やWebアプリの実行環境を保存してオフラインでもネットコンテンツを利用できるGoogle Gearsにも対応。また、SQL互換のデータベース(SQLite)や各国語対応のフォントなど、必要なものがパッケージ化されたフレームワークを備えている。

 水野氏は、こうしたAndroidの組み込み機器向けの側面を取り上げ、マッシュアップの一例として「Android冷蔵庫」を紹介した。Android冷蔵庫にはディスプレイと通信機能、Webブラウザ、バーコードリーダーやRFIDなどのセンサー類も備わっている。

 「例えば、買ってきた食料品や野菜のバーコードを冷蔵庫が読み取り、賞味期限を管理できるようになる。それ以外にも、冷蔵庫にあるもので作れるレシピを検索したり、足りなくなった食料品を安く買えるスーパーを探したりできる」(水野氏)

 冷蔵庫に通信機能(とセンサー類)を持たせるだけでこれだけの発展性があるが、水野氏は冷蔵庫の特性を生かしたマッシュアップをもう一歩進め、冷蔵庫を“地震計”とする活用シーンを提案した。

photophotophoto Androidはさまざまなハードウェアで動作し、Googleが提供するさまざまなAPIも提供される。汎用のボードコンピュータなど、さまざまな組み込み機器への活用が可能だ

 「冷蔵庫の重さや、常時電源が入っているという点をプラスアルファとしてとらえ、モーションセンサーをAndroidが管理することで、地震計として利用できる。単体ではその場所の震度しか分からないが、冷蔵庫は一家に一台あるものなので、各家庭にAndroid冷蔵庫が普及すれば、地震計ネットワークが構築可能だ。地震波を面でとらえ、さらにオンラインのサーバで管理すれば、揺れの到達時間を予測し被害が予想される地域の冷蔵庫に情報を配信できる」(水野氏)

 こうした考えは思考実験の1つに過ぎないが、水野氏はAndroidを使えば生活の場に“クラウドへの窓”を設置できることに違いはないと説明する。「T-MobileはG1を販売するとき、『G1をなくしたら、もう1台買ってGmailアカウントと同期すれば、アドレス帳もスケジュールも落とす前に戻る』と宣伝した。つまりAndroidは、データはクラウドへ保存しローカルに重要なデータを残さない使い方ができる。これは携帯電話だけでなく、組み込み機器にも当てはまる」(水野氏)と、Androidを利用した組み込み機器のクラウド活用をアピールした。

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