2010年以降、スマートフォンとケータイは近づいていく──NTTドコモ 辻村氏に聞く(前編)新春インタビュー(1/2 ページ)

» 2010年01月01日 10時00分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 2009年から2010年にかけて、日本のモバイルIT業界は大きな転換期に入ってきている。

 例えば2009年を振り返ってみれば、Appleの「iPhone 3GS」を代表とするスマートフォンや、ノートPCとデータ通信端末とのセット商品が新市場として着実に成長。一方で、既存の携帯電話市場でも、おサイフケータイの一般普及が始まり、iコンシェルのような生活支援型のサービスが台頭するなど、変化の多い年であった。モバイルITの市場は、より幅広く多様な分野に、そのビジネスの領域を拡大しようとしている。景況悪化という逆風に耐えながら、モバイルITビジネスの変化が感じられたのが2009年でもあった。

 そして2010年。携帯電話を中心としたモバイルIT業界はどこに向かうのか。NTTドコモ 代表取締役副社長の辻村清行氏に話を聞いた。

「スマートフォン」と「データ通信端末」が伸びた2009年

ITmedia(聞き手:神尾寿) 2009年は携帯電話ビジネス全体に転機が見えはじめた年でもありました。昨年を振り返って、どのようにご覧になっていますか。

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辻村清行氏 端末販売市場に関しては、お客様の買い替え期間の長期化の影響もあり、販売台数が下がる傾向が顕著になりました。しかし、水面下では特徴的な出来事もいくつかありました。

 その1つが「スマートフォンが売れ始めた」ということです。これは(Appleの)iPhone 3GSの躍進に代表されていますが、AndroidBlackBerryも堅調に伸びています。スマートフォン市場が最初に立ち上がった年として(2009年は)記録されるでしょう。

 そして、もう1つ特徴的だったのが、データ通信端末の需要が伸びたことです。これはNetbookなど割安なノートPCが普及したことが背景にあります。この分野ではイー・モバイルと(ドコモが)競合していますが、積極的に拡販をするなど力を入れています。

ITmedia これまでの10年はハンドセット(携帯電話端末)の時代でした。それが今、変わり始めています。携帯電話以外にビジネスの裾野が広がってきていると言えるのでしょうか。

辻村氏 新しい要素が重要になってきていますね。

 その上で、これから(2010年以降)がどうなってくるかというと、私は「スマートフォンがさらに重要になる」と思っています。例えば、ドコモとしては複数のメーカーのAndroid端末を市場に投入していきます。バージョンアップのサポートやアプリケーション環境の充実にも力を入れていき、スマートフォンを後押ししていきます。そのような中で、スマートフォン市場の充実が図れていくのではないかと考えているのです。

スマートフォン市場の拡大とドコモのスタンス

ITmedia スマートフォン市場の裾野の拡大も必要ですね。一部のITリテラシーが高い人たち向けのものではなく、「普通のユーザー」が使えるようにならなければなりません。スマートフォンはもっと簡単に、分かりやすくなる必要があります。

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辻村氏 日本で一般的な携帯電話のニーズをいかにスマートフォンに取り込むか。これは重要ですね。例えば我々としては、いずれiモードメールなどiモードの主要なサービスをスマートフォンに移植したいと考えています。また、これは技術的な課題もあり断言できませんが、Androidにおサイフケータイが搭載される可能性もある。スマートフォンのボリュームが今後増えることを考えると、おサイフケータイの必要性は高くなり、対応を考えていかなければならなくなるでしょう。今後のスマートフォンは、従来の日本の携帯電話と機能やサービスの差をどのようにして減らしていくのか、という考え方が重要になります。

ITmedia 従来型の携帯電話とスマートフォンの垣根を低くするわけですね。

辻村氏 ええ。あくまで将来の予想という観点では、従来型の携帯電話がAndroidなどLinuxベースのオープンOSで作られるようになるシナリオも考えられるわけです。全体的な流れとしては、これまでの携帯電話とスマートフォンの差は縮小していくでしょう。当面は両者は併走していくわけですが、もしかしたらいつか両者の差がなくなり、統合するような形になることも考えられるわけです。

 もちろん、現状を鑑みますと、1億台以上の携帯電話の大半が従来型の携帯電話です。しかしこの状況は変わっていくでしょう。私は今後数年かけて、従来型の携帯電話とスマートフォンは近づいていくと考えています。

ITmedia 現在のトレンドで見ますと、ハイエンドモデルへの関心の一部がスマートフォンに向かっているように感じますが。

辻村氏 確かにそういう見方はできるかもしれませんが、PRIMEシリーズとスマートフォンを比べた時に決定的に異なるのは「コンテンツのセキュリティ」です。例えば、ダウンロード購入した音楽コンテンツは(携帯電話の外に)持ち出せないとか、音楽・映像をはじめ、多くのコンテンツで著作権管理や(不正利用防止の)セキュリティ確保をしっかりと行っているのです。

 一方で、スマートフォンなどオープンOSの世界は、iPhoneなど特定の企業がプラットフォーム管理を徹底しているケースを除けば、ダウンロードコンテンツの管理・セキュリティが、PRIMEシリーズなど従来型の携帯電話ほどきちんとできていません。この点は両者の違いになっており、特にコンテンツプロバイダーから見た時に重要な差になっています。

ITmedia 確かにスマートフォンが今後一般化するためには、iPhoneのようにしっかりとしたコンテンツ流通プラットフォームや著作権の管理が必要ですね。AndroidやWindows Phoneの世界は、“ビジネスの場”としての整備が、これまでの携帯コンテンツ市場やiPhone市場よりも出遅れています。

辻村氏 スマートフォンも今後DRMが強化されていく流れになるでしょう。現状では(コンテンツ管理は)従来型の携帯電話の方が優れていますが、ここでもやはりスマートフォンとの差は将来的には小さくなっていくでしょう。

ITmedia スマートフォンを一般ユーザー層向けに展開するにあたり、China Mobile(中国移動)の「OPhone」のようなモデルをどのように見ていますか。

辻村氏 OPhoneのようなモデルは、ドコモからも(将来的に)投入していく考えです。AndroidやWindows PhoneはオープンOSなわけですけれど、そこに(キャリアの)DRMやコンテンツ流通の仕組みを載せたものが出てくるのは、今後の流れだと考えています。

ITmedia ドコモもスマートフォン向けのコンテンツ配信サービスを立ち上げると表明しています。

辻村氏 ええ、それは今年度内を目処に進めています。お客様がコンテンツを探しやすい環境が必要です。また将来的にはユーザー認証や課金の仕組みも(ドコモとしても)整備していく必要があるでしょう。

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