インタビュー
» 2010年04月07日 08時21分 UPDATE

開発陣に聞く「Xperia」(前編):スピードが命――Androidと組織横断のチームで実現した「Xperia」の“心地よさ” (1/3)

発表直後から大きな反響を集めたソニー・エリクソン製のスマートフォン「Xperia」がドコモから発売された。「Timescape」や「Mediascape」などの新しいUIや、日本向けに大きなカスタマイズを施した「POBox Touch 1.0」など、ソフトウェアへのこだわりを聞いた。

[田中聡,ITmedia]
photo ソニー・エリクソン製のスマートフォン「Xperia」

 4月1日にNTTドコモが発売したソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ製のスマートフォン「Xperia」には、“コミュニケーションエンターテインメント”というコンセプトのもと、メールやSNSなどの履歴を一元表示できる「Timescape」や、端末とWeb上の音楽、写真、映像をシームレスに表示できる「Mediascape」といった独自のユーザーインタフェースを搭載した。フルワイドVGA(480×854ピクセル)対応の4.0インチ液晶や810万画素カメラを装備するほか、1GHzの高速CPUや上り最大2MbpsのHSUPA、無線LANにも対応するなど、スペックの高さにもこだわった。

 Xperiaは通常の商戦期ごとのモデルとは別に単独でドコモが発表会を開催したほか、ソニー・エリクソンが一般ユーザー向けに「タッチ&トライ」イベントを実施し、ドコモ関西がXperiaのショールームも開設した。また、予約だけで5万台が売れるなど、iPhone発売時を思い起こさせるほどの旋風を巻き起こしている。

 Xperiaは世界でも同時期に発売されるグローバル端末でありながら、ハードウェアとソフトウェアの多くの部分が日本で開発されており、日本のケータイ開発で培った技術も凝縮されている。企画からソフトウェア、デザインまで、Xperiaに込められた開発陣の想いを、ソニー・エリクソンに聞いた。前編では企画とソフトウェアに焦点を当てる。

photo 左から、商品企画担当の西村氏と、ソフトウェア担当の長谷川氏

Xperiaは日本の開発チームが手がけたグローバル端末

photo 商品企画担当の西村氏

ITmedia Xperiaは世界で発売されるモデルですが、日本での発売は、どのような経緯で決まったのでしょうか。

西村氏 ケータイ業界が厳しくなっている中、我々のラインアップで何を強みにして戦っていくかを決める際に、“コミュニケーションエンターテインメント”は全世界共通だと考えました。一方で、ドコモさんも新しいスマートフォンのあり方を模索し、Androidに注力していく中で、我々とのニーズが合致したということです。とはいえ、ドコモさんもXperiaのコンセプトすべてを最初から理解してくれたわけではありませんでした。

ITmedia ドコモロゴ以外はグローバル端末と共通のデザインで、TimescapeやMediascapeなどのユーザーインタフェースも非常に独特です。ドコモとの話し合いはスムーズだったのでしょうか。

西村氏 従来のケータイとスマートフォンの位置づけが明確に分かれているわけではないので、手探りで進めていきました。もちろん、留守番電話やシャッター音の対応など、ドコモ端末として最低限必要なものは、しっかりフォローしています。

photophoto 日本向けモデルでは「Timescape」にmixiを追加した(写真=左)。SNSのコメントやメールの内容などが、名前やアイコンとともに、時系列で表示される(写真=右)

ITmedia XperiaはSNSやメールなどを積極的に利用する人に向けたモデルだといえます。海外と日本で、こうしたコミュニケーション機能の利用動向は大差ないのでしょうか。

西村氏 ケータイを使ったコミュニケーションが全世界で重要なのは間違いありませんが、コミュニケーションの方法は世界で違います。米国ではTwitterやFacebookは当たり前のように使われていますが、日本ではTwitterがようやく普及し始めたところです。

 一方、日本向けモデルには、日本で最もメジャーなSNSのmixiを採用しました。他国でも地元に根ざしたSNSを採用しています。このあたりのローカライズはきちんとTimescapeで実現できています。もし日本だけでXperiaを開発していたら、TwitterとFacebookはなかったでしょうし、米国だけで開発していたら、地域ごとのカスタマイズの優先度は下がったでしょう。

ITmedia グローバル端末でありながら、コミュニケーションについては各国の特色を反映させたわけですね。一方で、日本の開発チームが関わったことで、ハードやソフトに反映された技術などはあるのでしょうか。

西村氏 円滑にコミュニケーションしてもらえるよう、“片手で使えること”にもこだわりました。これは、ハードの部分を日本で開発していることと、外出先でケータイを使うことの多い日本の文化が関わっています。iPhoneは片手での操作性にも優れていますが、Xperiaの本体幅もiPhoneと同程度に収めています(iPhone 3GSは約62.1ミリ、Xperiaは約63ミリ)。

 また、エンターテインメント機能をしっかり見せられるよう、ディスプレイはフルワイドVGAを搭載し、日本の技術を生かして狭額縁設計を採用しました。画面の絵作りについても、BRAVIAケータイなどで培った技術を生かし、ケータイで見て人間が美しいと感じやすい色にチューニングしています。

“ビデオ”をもとにTimescapeのアニメーションを制作

photo ソフトウェア担当の長谷川氏

ITmedia SNSやメールなどのコミュニケーション履歴を一括表示できるTimescapeも、新しいユーザーインタフェースとして注目を集めています。あらためて、Timescapeを採用した経緯を教えてください。

長谷川氏 以前から、コミュニケーションを1つにまとめる機能についてのアイデアはありました。Webサービスも効果的ですが、ユーザーにとって重要なのは、端末にサービスが統合されていることだと思います。また、Android端末は、複数のアプリからデータを収集する仕組みを備えているので、比較的容易にTimescapeを開発できました。

ITmedia Timescapeのアイデアはいつごろから生まれたのでしょうか。やはりSNSが浸透し始めたころからでしょうか。

長谷川氏 そうですね。SNSが浸透した初期の段階では、ユーザーはSNSとメールは明確に使い分けていましたが、今は2種類ともコミュニケーションの手段としては大差がなくなりつつあります。複数のSNSを友達ごとに使い分けている人も多いでしょう。そこで、ユーザーの視点で好きなようにSNSやメールを使える状態にしました。TwitterやFacebookなどのサービスはそれぞれで進化していきますが、それらを1つのポータルにまとめるのはメーカーの仕事です。

ITmedia TwitterとFacebook以外のSNSは国ごとにカスタマイズをしているとのことですが、例えば日本向けモデルでは「GREE」や「モバゲータウン」など、Timescape用のSNSを増やす予定はあるのでしょうか。

長谷川氏 そこは継続して伸ばしていきたいです。現時点で詳細はお話しできませんが、開発レベルで追加しやすい仕組みは準備していきます。

photophoto 使わないサービスはTimescape上に表示させない設定もできる(写真=左)。SNSの更新頻度を下げると、インターネットにアクセスする回数が減るので節電できる(写真=右)

ITmedia Timescapeは情報の表示方法やアニメーションが非常に独特です。使いやすさについてのこだわりを教えてください。

長谷川氏 「機能的な使いやすさ」と「触り心地」がマッチするよう注力しました。前者については、例えばTwitterやFacebookに何百人も友人がいる人や、メールしか使わない人でも分け隔てなく楽しめるよう、使わないサービスをTimescape上に表示しない設定を用意しました。

西村氏 Timescape上のSNSは自動更新ができますが、更新頻度はバッテリーの持ちに影響します。そこで、自動更新はオフにして、起動したときだけ新着情報を取得する設定もできます。

長谷川氏 触り心地の調整も大変でした。これは見た目が大切なので、Timescapeのイメージビデオを新規で作り、そこにいかに近づけるかを目指しました。動きをリッチに見せることが最大の訴求点なので、3Dのソフトを使って検証しました。起動やフリックによる切り替わり、新しい情報が降ってくる様子など、それぞれの動きだけで大量の動画を作りました。グラフィックのデザインに動画を使うことは滅多にないですね。

ITmedia それだけTimescapeの動きにはこだわったということですね。ちなみに、ビデオは何本くらい作ったのでしょうか。

長谷川氏 Mediascapeも合わせると数十種類はありました。それに加えて細かい動きを表現するビデオ数十種類と、起動から終了までの流れを伝えるイメージビデオも作りました。

西村氏 リッチなユーザーインタフェースほど負荷が大きく、作り込むほどに使いものにならないこともあります。そこのバランスを取って、相反するものを両立させる作業が大変でしたね。

長谷川氏 機能性だけを重んじるなら、タイルよりもリスト表示の方が多くの情報を表示できます。そこから、情報量ができるだけ少なくならないようにし、一方で見た目が格好いいけど使えない、と言われないように工夫しました。

ITmedia 確かにリスト表示の方が情報量は多いですが、写真やアイコンが出ることで楽しさが増します。ここはまさにコミュニケーションエンターテインメントの「エンターテインメント」たるところだと思います。このTimescapeの見せ方は、いくつかパターンを考えたのでしょうか。

長谷川氏 写真を縦に並べるアイデアは最初から考えていました。ほかに、表示しないサービスがある場合、そのサービスのデータを横から除いて必要なものだけを集めるというイメージも考えましたが、使い勝手を損なうので見送りました。

       1|2|3 次のページへ

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.