夏モデル発表――サービスに注力するKDDI/“使い方”で選べる新機種をそろえたドコモ石野純也のMobile Eye(5月14日〜5月25日)(2/2 ページ)

» 2012年05月25日 17時37分 公開
[石野純也,ITmedia]
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“スペック”から“使い方”に競争軸を切り替えたドコモ、クラウドサービスも提案

photo プレゼンテーションや質疑応答は、代表取締役社長、山田隆持氏がほぼ1人でこなした。会見にはCMキャラクターの渡辺謙さんと堀北真希さんも登場。

 KDDIとは対照的に、ドコモはスマートフォンの拡充に力を注いだ。発表された端末は、全20モデル。内訳は、スマートフォンが17機種、タブレットが1機種、キッズケータイが1機種、Wi-Fiルーターが1機種となっている。この中でいわゆるフィーチャーフォンは「キッズケータイ HW-01D」のみで、iモード対応モデルは1台も発売しないという、大胆な戦略に打って出た。スマートフォンシフトへのアクセルを全力で踏んできた印象だ。今後も「iモード端末の開発は1年に1回程度にしていく」(代表取締役社長、山田隆持氏)といい、ラインアップとしては縮小する傾向にある。

 山田氏は「夏モデルでは“使い方”を選んでいただけるよう、多彩なラインアップを用意した」と説明する。発表されたモデルを見て分かるように、夏モデルはまさに全方位をカバーしている。駆け足になってしまうが、あらためて注目モデルを確認していこう。まず、5月3日に発表されたばかりのSamsung電子製「GALAXY S III」は「GALAXY S III SC-06D」として、Xiやおサイフケータイに対応して発売する。ソニーモバイル製のXperiaもXiに対応し、4.6インチの「Xpiera GX SO-04D」と3.7インチの「Xperia SX SO-05D」の2機種を用意。前者がおサイフケータイのみなのに対し、後者はおサイフケータイ、ワンセグ、赤外線を搭載するなど、機能面でも差別化を図っている。カメラの画素数や大画面を重視するならXperia GX、持ちやすさや日本仕様で選ぶならXperia SXというように、使い方で選べるわけだ。

photo CPUや画素数といった「スペック」ではなく、「使い方」で選べるよう提案する

photophotophoto 注目の機種として真っ先に紹介されたのが、Samsung電子製の「GALAXY S III SC-06D」。Xperiaは、大画面の「Xperia GX SO-04D」と、コンパクトで全部入りの「Xperia SX SO-05D」の2種類を選べる

 スマートフォンとしてはやや大きい、5インチクラスの端末も「GALAXY Note SC-05D」に続き、2機種を取りそろえた。1つが4:3の画面を搭載して電子書籍の読みやすさを売りにした、LGエレクトロニクスの「Optimus Vu L-06D」。このモデルには、「ジョジョの奇妙な冒険」とコラボレーションした「L-06D JOJO」というバリエーションも用意する。もう1つが、パナソニック モバイル製の「ELUGA power P-07D」で、こちらはスマートフォンをそのまま5インチ台まで大画面化したような形状となる。NOTTV(モバキャス)対応機種も増やし、「AQUOS PHONE sv SH-10D」や「MEDIAS X N-07D」「REGZA Phone T-02D」などを用意。先に挙げたOptimus Vuやタブレット端末の「ELUGA Live P-08D」といった大画面の端末も、NOTTVに対応している。このほか、コンパクトながら日本仕様が全部入りとなり、Xiにも対応した「Optimus it L-05D」や、音楽機能をフィーチャーした「AQUOS PHONE st SH-07D」、au向けと同様NVIDIAの「Tegra 3」を搭載したクアッドコアスマートフォンの「ARROWS X F-10D」など、注目を集めそうなモデルが目白押しだ。

photophotophoto 5インチクラスの端末は「Optimus Vu L-06D」と「ELUGA power P-0D」の2機種をラインアップ。Optimus Vuをベースにしたジョジョコラボモデルも用意した
photophotophoto 他にも個性派端末がそろう。左から「Optimus it L-05D」「AQUOS PHONE st SH-07D」「ARROWS X F-10D」
photo 夏モデルでは、レスポンスのよさを重視しているという。中でも「GALAXY S III SC-06D」や「AQUOS PHONE ZETA SH-09D」の速度は折りつき。

 個性を重視した結果、一見すると統一感のないラインアップにも感じられるが、実は共通性能の向上も図っている。例えば“サクサク感”がその1つ。「画面スクロールの滑らかさ向上と、1秒あたりのコマ数は大きな関係がある」(山田氏)とし、全機種50fps以上を実現した。発表会の会場に展示されていた試作機の一部はまだ動作が不安定だったが、Xperia GXなどのコーナーには「開発中だが製品版と同じ動作速度」という注意書きを、あえて掲載していたほどだ。ある業界関係者が「普通のメーカーなら、試作機を公開する際には、製品版の方がよくなっていると言いたい。よほどの自信がないとここまでの注意書きは出せない」と述べているように、動作速度の向上には、キャリアとしても相当なこだわりを持って取り組んできたことがうかがえる。中でもフレームレートの数字が高いのが、55.86fpsのGALAXY S IIIと、52.16fpsの「AQUOS PHONE ZETA SH-09D」だ。サクサク感を重視するなら、このあたりのモデルを選べば特に満足できるだろう。

 使い方で選べるという点で積極的に推進したのが、コラボ端末だ。先に挙げたL-06D JOJOのほかにも、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」の官給品をモチーフにした「SH-06D NERV」(春モデル)や、ワイヤーバッグが女性に人気のテンテプリマとタッグを組んだ「F-09D ANTEPRIMA」が用意されている。さらに、ドコモは、バッテリーの持ちが悪いというスマートフォンの課題に対しても、一定の回答を出した。夏モデルのスマートフォン16機種を平均すると、バッテリーの容量は1740mAhだという。冬春モデルが平均1465mAhだったことを考えると、大きな前進だ。これに加えて山田氏が「充電時間を短くすることにも取り組んだ」というように、MEDIAS XやELUGA powerは急速充電にも対応している。

photophoto コラボ端末も拡充。左からヱヴァコラボの「SH-06D NERV」、アンテプリマコラボの「F-09D ANTEPRIMA」
photophoto バッテリーも平均で1740mAhに(写真=左)。海外モデルと比べて電池容量の少ない傾向にあった国産モデルも、全体的に底上げされている。また、「MEDIAS X N-07D」などは急速充電に対応する(写真=右)

 市場のすそ野の広がりをにらみ、らくらくホンもスマートフォン化した。Androidに特有の3つないしは4つのボタンをあえて採用せず、縦スクロールのみの1画面に大きなアイコンを散りばめ、分かりやすさを演出。画面を押し込むようにタッチする仕組みを取り入れ、Googleアカウントも不要にした。らくらくホンは「1000万弱が稼働している」(山田氏)という、隠れた人気モデル。目標は「そのうちの5%、50万台を目指したい」と設定している。

photo Android 4.0をベースに開発された「らくらくスマートフォン」

photo ネットワーク内にクラウドを置くことで、土管化を防げると語る山田氏

 一方で、サービスは「ネットワーククラウド」を武器にした「ドコモクラウド」を発表した。ここには、「(キャリアが通信網だけを提供する)ネットワークの土管化を避けたい」(山田氏)という狙いがある。代表例が、電話をかけると選択した言語に自動で翻訳される「通訳電話」だ。山田氏によると、翻訳は、結果を瞬時に返す必要があるため、データをやり取りするサーバは「(自社の)ネットワークの中にクラウドがある方がいい。外に出る(=外部サーバを経由する)と遅延が大きくなる」という。機能を強化したしゃべってコンシェルも、「ネットワークの中に設けてある」そうだ。ただ、すべてのクラウドサービスがドコモにしかできないわけではない。例えば、写真や動画の無料ストレージである「フォトコレクション」について、山田氏は「他にもあっていい」とコメント。「現実的に他の事業者がすでにやっている。当然競争にはなるが、ドコモの中だけですべてがそろうようにやっていく」とし、サービスの幅を出すために用意しているものもあるようだ。

photophoto これらのサービスを総称して「ドコモクラウド」と呼ぶ(写真=左)。強化された「しゃべってコンシェル」にドコモの社長は誰かをたずねてみた。結果は……おしい!(写真=右)

 こうしたクラウドサービスは、「端末を問わずに使えるようにしていきたい」といい、一部はPCなど、ドコモブランド以外の端末にも開放していく。マルチデバイスでのサービス提供という点ではKDDIとドコモの戦略は一致しているが、ネットワークを切り離すかどうかのスタンスは真逆である。サービスはサービスとして単体で強化していくKDDIに対し、ドコモはネットワークと連携させることによる相乗効果を高めていく方針だ。とはいえ、クラウドをネットワーク内に置くメリットが、現時点では完全に説明し切れていないようにも感じた。例えば、Appleの「iPhone 4S」に搭載される「Siri」は、当然ネットワークの外部と通信を行っているが、Wi-Fi経由であればそれほど遅延も大きいようには感じられない。ネットワーク上に置くメリットはどこにあるのか。この部分については、もう少し緻密なロジックでライバルとの違いを打ち出してほしかった。

ソフトバンクは5月29日に発表会を予定、ウィルコムと共催へ

 大手3キャリアの“トリ”を飾るソフトバンクモバイルは、ウィルコムと合同で5月29日に発表会を開催する。選べる端末のドコモや、サービス&コンテンツのKDDIに対し、どのような戦略で臨んでくるのか。ウィルコムの代表取締役社長、宮内謙氏が春の投入を予告していたPHSと3Gに両対応したスマートフォンも、まだ正式に発表されていない。来週どのような発表があるのか、期待したい。

photophoto 昨年9月の発表会で、PSHと3Gに両対応したAndroidスマートフォンの投入を予告していたウィルコムの代表取締役社長、宮内謙氏。両社共同開催とのことで、正式発表の期待が高まる
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