根底にあるのは“ユーザー第一主義”――「GALAXY S 4」の開発思想を聞く石野純也のMobile Eye(特別編)(3/3 ページ)

» 2013年04月27日 08時04分 公開
[石野純也,ITmedia]
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デザインやUIにもユーザー中心の発想を取り入れる

photo GALAXY S 4のデザインを担当した、製品デザインチーム 課長 パク・ヒョンシン氏

 S IIIの発展というコンセプトは、本体のデザインにも表れている。スリムで丸みを帯び、手にフィットするのは「S IIIに続き、人間のことを考えた機能をシルエットに生かそうとした」(製品デザインチーム 課長 パク・ヒョンシン氏)ためだ。一方で背面に細かなパターンを入れたのは、「高級感が出る」(同上)ことを狙ったため。光の当たり方によって、カラーが異なって見えるのも、S 4の特徴だ。

 「S IIIのグリップ感や、オーガニックな形状にはいい反応をもらった。S 4では、それを継続しながら、違う印象も出そうとした。S 4では、高級感を与えることに集中している。そのため、ディテールなど、細かなところまで気を遣った」(パク氏)

 “高級感”というと、ほかのメーカーは、端末に金属やガラスといった素材を使用することもある。ところが、S 4ではあえてこうしたアプローチを取っていないという。主な理由は、バッテリーパックの交換にある。

 「お客様に配慮することに目的と意味がある。それはデザインチームの哲学でもある。基本的には、バッテリーが交換できるデザインにすることが重要。これは製品デザインの側面から見ても、本当に大切なことだ」(パク・ヒョンシン氏)

 耐久性を持たせるため、S 4では背面や側面にポリカーボネートを採用。「ポリカーボネートも部品によって、少しずつ成分を変えている」(パク・ヒョンシン氏)とのことで、細かな部分にもこだわった。

photo UXデザインチーム 課長 パク・ヨンソ氏は、「Touch Wiz」と呼ばれるUIなどを設計している

 また、S 4はS IIIと比べ、設定メニューや通知上のボタンといったUIも大きく変わっている。例えばメニューは、4つのジャンル別にタブを分け、項目がすっきり整理されている。通知のボタンは種類が増え、カスタマイズも可能だ。これも数々の新機能と同様、「いろいろな国での調査をした結果」(UXデザインチーム 課長 パク・ヨンソ氏)だという。

 「すべてはユーザーの利便性のため。設定については、項目が多すぎるとスクロールに手間がかかる。そこで、カテゴリーを4つに分け、スクロールの負担を減らして。(各項目がどこにあるのか分かりやすくなるため、搭載されている機能の)認知度を上げる効果もあるのではないか。通知のボタンは各国のサーベイ(調査)を生かし、これだけ載せることになった」(パク・ヨンソ氏)

photophoto 設定のメニューは、4つのタブで分けられた。通知上のボタンは種類が増え、カスタマイズも可能だ

 Androidは4.0以降、標準でキーを画面内にソフトウェアとして実装することが各メーカーに推奨されるようになった。Googleが自社のブランドで販売するリファレンスモデルのNexusシリーズはもちろん、ほかのメーカーの多くもこれを踏襲している。一方で、GALAXYシリーズは、一貫してホームキーを物理的なボタンに、バックキーと設定キーを本体上のセンサーにしている。S 4でも、この点は変わっていない。ここにも、「ユーザーのため」という発想が貫かれている。

 「中央をホームボタンしているのも、ユーザーの利便性のため。何かの作業をしているとき、慣れたボタンですぐにキャンセルができる。これを押すクセがつくと、ないと不便だと感じる。ボタンについては、電話がかかってきたとき、押すだけで出られるメリットもある。すべてにユーザーの調査を何回もかけているが、こうした声はなるべく反映させたい」(パク・ヨンソ氏)

photo 初代GALAXY Sから継続しているホームボタンも、調査に基づいて搭載している

 フラッグシップとして、より広いユーザー層に向けた取り組みも行っている。ドコモから発売された「GALAXY S III α」にも搭載されていた「かんたんモード」を、S 4にも採用。ベーシックな機能の大きなアイコンを並べ、機能を絞って操作がしやすいように工夫した。

 「初めて使う方やお年寄りの方が使えるインタフェースを作りたいというのが、かんたんモードのコンセプト。3ページの画面が出て、(ホーム画面の)編集などをなくし、動作を最小限にした。また、フォントサイズを大きくして、より使いやすくすることを目的にしている」(パク・ヨンソ氏)

photophoto 初心者ユーザーにも使いやすい「かんたんモード」を搭載。ホーム画面は設定で切り替えることが可能だ

 このようにS 4は、新機能と同様、デザインやUIにも“ユーザー第一主義”が貫かれている。実際の評判もよく、滑り出しも上々だ。DJ・リー氏は「数字を具体的に言うことは難しいが、世界的に反応がいい。実際に予想していたより、多くの受注が入っている」と述べている。

 一方で、以前この連載でも指摘したように、総合力が高く、対象ユーザーが広い分、機種の特徴を一言で表現しにくい。日本版のS 4は、LTEとの兼ね合いもあるためクアッドコアCPUになる可能性が濃厚。ハードウェアスペックをアピールするのも難しくなりそうだ。もちろん、端末の完成度は抜群に高く、世界で大ヒットしている実績もある。こうした事実をきちんと伝えていくことが、日本で成功するためのカギになりそうだ。

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