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» 2013年06月10日 16時30分 UPDATE

小寺信良「ケータイの力学」:「コンプガチャ騒動」とは何だったのか(1)

ソーシャルゲームのコンプリートガチャ問題から1年。一連の騒動はすっかり沈静化し、人々の記憶からも薄れかけてきている。問題の発覚から業界の反応まで、当時の経緯を振り返りたい。

[小寺信良,ITmedia]

 2012年の5月5日、ゴールデンウィークの最中に、消費者庁がソーシャルゲームのコンプリートガチャが景品表示法違反であるとして、ゲーム会社に注意を喚起する方針が報じられた。連休明けの5月7日には、ソーシャルゲーム関連会社の株が軒並み下落し、のちに「コンプガチャショック」と呼ばれるようになった。

 それ以前からネットでは、“ガチャに何万円突っ込んだ”という話があちこちで聞かれており、何がそんなに熱狂させる要素があるのか、不思議に思った人も多かっただろう。個人的には、もし仮に規制の網がかかるとすれば、ゲームセンターの未成年者の立ち入りなどと同様、風営法による規制だろうと予想していたので、景表法と聞いて驚いた記憶がある。

 あれからほぼ1年が経過し、ソーシャルゲームが問題視されたことなど、多くの人の記憶からなくなりはじめている。これには、業界の素早い対応があり、結果的にうまく火消しができたと言っていいだろう。今後のネット業界の参考のためにも、過去のソーシャルゲームに関する問題と、それに対する経緯をまとめてみたい。

 まず、最初にソーシャルゲームでの問題が大きく報道されたのは、2012年2月の、「探検ドリランド・レアカード増殖事件」である。これはグリーが提供するソーシャルゲーム「探検ドリランド」にて、バグを利用し不正にレアカードを複製したユーザーが、ヤフオクでそれを販売したという事件で、新聞だけでなくテレビでも報道される大事件となった。カードは数万円から数十万円で取引されたという。今はもうすべて削除済みなのでオークションの状況を見ることはできないが、筆者が当時実際に見た例では、40万円程度の値が付いていた。

 ソーシャルゲーム内のアイテムを実際のお金で、ゲーム外で売買することを、リアルマネートレード(RMT)という。これもソーシャルゲーム業界では、現在も続く大きな問題の一つだ。この時点からソーシャルゲーム業界は、厳しい目で見られるようになった。

世論に押されたコンプガチャの違法化

 探検ドリランドの問題は、コンプガチャという仕組みがそれほど利益を生むのか、という点に集中した。大人でもギャンブルが辞められなくなる者もいる中で、子どもも同じゲームで遊ぶのか、というところを不安視する声も上がってきた。

 この批判に対応するため、グリーでは3月16日に仮想通貨の購入総額を15歳以下は月間5000円まで、16〜19歳は月間1万円に制限することを発表し、4月1日から実施した。

 一方でコンプガチャという仕組みに違法性がないのかという点に関しては、すでに3月の時点で各プラットフォーム事業者らが独自に消費者庁をはじめとする関連省庁に相談を行なっており、この時点では特に違法性は認められないという回答を得ていた。しかし、ガチャでの課金で消費者センターに相談が増えていく中、メディアからの批判も強まってきた。

 そこでソーシャルゲームプラットフォーム6社では、何かあったらすぐに対応できるよう、3月に「6社協議会」(ソーシャルゲームプラットフォーム連絡協議会)を作っている。6社とは、NHN Japan(のちにNHN JapanとLINEに分割)、グリー、サイバーエージェント、ディー・エヌ・エー(DeNA)、ドワンゴ、ミクシィである。

 6社協議会では4月23日、グリーの対応に習い、青少年ユーザーの利用限度額を設定することで合意し、順次対応に入った。そしてこのおよそ2週間後の5月5日に、消費者庁から景表法違反という方針が報道される。

 この時点では新聞報道だけだったが、消費者担当相から「違法の可能性がある」とコメントが出たのは、5月8日である。これを受けて翌9日には、グリーとディー・エヌ・エーが、ソーシャルゲーム内でのコンプガチャを終了する方針を発表した。消費者庁から正式な見解が出たのは、5月18日のことだった。

 この時系列をたどると、消費者庁としてもまだ5月上旬の段階では、違法の疑いがあるとしているのみで、公式に違法という見解ではなかった。しかしプラットフォーム事業者側では自主規制という形で、コンプガチャ廃止の方針を打ち出している。

 6社協議会としては、5月25日に「コンプリートガチャガイドライン」を策定し、発表した。これは、コンプガチャの全廃と、見かけは異なっても仕組みが似ているようなものも自主的にやめていくという方針が盛り込まれた。この時点で、すでに該当するサービスの提供事業者はほぼ廃止を決めていたが、プラットフォーマー側でガイドラインを作って、ゲーム制作会社に守らせるという構造が明確になったことになる。

小寺信良

映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作は、ITmedia Mobileでの連載「ケータイの力学」と、「もっとグッドタイムス」掲載のインタビュー記事を再構成して加筆・修正を行ない、注釈・資料を追加した「子供がケータイを持ってはいけないか?」(ポット出版)(amazon.co.jpで購入)。


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