「楽天モバイル」と「ZenFone 5」で動く、MVNOとSIMロックフリー端末市場石野純也のMobile Eye(10月27日〜11月7日)(1/2 ページ)

» 2014年11月08日 10時06分 公開
[石野純也,ITmedia]

 以前からデータ通信専用のSIMカードをMVNOとして提供してきた楽天傘下のフュージョン・コミュニケーションズが、音声通話に対応したサービスを新たに開始する。ブランドも一新し、「楽天モバイル」を掲げ、契約者数1000万を目指す。次々とMVNOが誕生する中で、楽天は既存の会員基盤を生かし、差別化を図る。

 こうした動きに呼応するように、10月27日から11月7日にかけての2週間では、さまざまなSIMロックフリー端末が発表された。大きな衝撃として話題を呼んだのが、ASUS(エイスース)製の「ZenFone 5」。LTEに対応し、質感の高いボディを採用しながら、価格は16Gバイト版でわずか2万6800円(税別、以下同)。32Gバイト版でも2万9800円となる。また、MVNO向けには8Gバイト版が納入され、SIMカードとのセット販売が行われる。

 ZenFoneに対抗する動きとしては、Huaweiが11月7日にミッドレンジモデルの「Ascend G620S」を発表。「Ascend Mate 7」に続く冬モデルで、SIMロックフリー端末のラインアップを手厚くしている。今回の連載では、楽天モバイルの狙いと勝算を分析しつつ、こうしたSIMロックフリー端末の動向も合わせて紹介したい。

1000万ユーザーを目標に掲げた楽天モバイル、その勝算は?

 楽天傘下のフュージョン・コミュニケーションズは、MVNOとして「楽天モバイル」を開始した。これまでも同社は「楽天ブロードバンド」としてMVNO事業を行っていたが、音声通話まで提供するにあたってプロモーションなどの展開を本格化した形となる。楽天の代表取締役会長兼社長 三木谷浩史氏は、その意気込みを次のように語る。

 「今までもSIMビジネス(MVNO)は展開してきたが、楽天モバイルは低料金で3大キャリアの代替手段になる。楽天グループが総力を挙げてマーケティングしていく。今までのような補完的なサービスではなく、現在あるサービスをリプレイスする戦略的なもの」

photophoto 楽天モバイル開始の意気込みを語る三木谷氏。新サービスの名称は「楽天モバイル」になる

 料金は、2.1Gバイトのデータ通信が含まれる「2.1GBパック」が、月額1600円。ほかにも、2150円の「4GBパック」や2960円の「7GBパック」に加え、通信速度を最大200kbpsに絞った「ベーシックプラン」を用意する。

photo 2.1Gバイト、4Gバイト、7Gバイトのほか、速度を200kbpsに絞ったベーシックプランを用意する

 とはいえ、ここが楽天モバイルの売りではない。料金で比較すれば、ほかのMVNOとも大きな違いがないからだ。例えば、IIJの「みおふぉん」は、月額1600円の「ミニマムスタートプラン」に高速化をオンにできるバンドルクーポンが2Gバイトぶん付属する。4Gバイトの「ライトスタートプラン」も2220円と、大きな違いはない。三木谷氏もこうした点は、認識しているようだ。楽天モバイルの強みを問われた同氏は、次のようにコメントしている。

 「1つ目は住所等を含め、ワンクリックできること。2つ目はさまざまなサービスを組み合わせられること。そして3つ目として、ブランドネームが100%近く浸透している」

photo 価格の優位性を強調していたが、4GバイトパックをIIJと比較すると、その差はわずか70円。ここが決定打になるとは考えていないようだ

 楽天の会員数は、2014年9月末で9556万人に上る。物販を伴うサービスが多いだけに、住所やクレジットカードを登録しているユーザーがほとんどだ。そのため、既存の会員情報を使って、登録を簡単に行える。もちろん、会員という基盤があれば宣伝もしやすい。MVNOは今でこそ認知度が上昇しているものの、それぞれの会社が一般のユーザーに浸透しきっているとはいえない。この知名度があるのが、楽天の一番の強みというわけだ。

photo 1億に迫ろうとしている既存の楽天会員が簡単に申し込める

 また、フュージョン・コミュニケーションズの「楽天でんわ」や、楽天が買収した「Viber」といったサービスを持っているのも、楽天がMVNOを行う際の優位点になる。これらのサービスは他社のユーザーも当然オープンになっているが、「より簡単にセットアップができる」のがメリットだ。端末にはこれらのアプリがプリセットされているため、通話料の安さを宣伝文句に使うこともできる。

photophoto 「楽天でんわ」や「Viber」といったスマホ向けサービスを持っているのは、強みの1つといえる

 楽天モバイルにかける意気込みは、三木谷氏が挙げた目標からもうかがい知れる。同氏が「これだけ低料金なことを考えると、1000万台が現実的な目標」と語っているように、楽天モバイルはMNOに匹敵する存在を目指す。「番号乗り換え(MNP)がいかに簡単にできるようになるかが、キーだと思っている。そこが簡単にできるようになれば、比較的短期で到達できると思う。目安としては3年後や4年後」(同)といい、早期に1000万ユーザーを獲得することを想定しているようだ。

photo 販売台数1000万台を掲げた。手持ちの端末を活用するユーザーもいるため、契約者数ではさらに上を目指すことになる

 端末のセット販売も行っていく。三木谷氏が披露したのが、ASUS製の「ZenFone 5」。楽天モバイル開始発表の前日に披露された、低価格だが質の高さを売りにした端末だ。この8Gバイト版をセットにして、一般層へもアピールしていく。8Gバイト版の価格は2万6400円。ここに、楽天スーパーポイントが1500円つく。ASUSが販売する16Gバイト版が2万6800円であることを考えると、もう少し安価に設定してもよかったようには思えるが、2万円台でLTEに対応したスマートフォンが買えるのはインパクトが大きい。

 ドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルが販売しているハイエンド端末は本体価格が7〜10万円ほど。ここに毎月の割引がつき、実質価格は抑えられるが、そのぶん基本使用料やパケット代は割高。トータルコストでは、ZenFone 5のようなミッドレンジ端末と、MVNOを組み合わせた方が安くなる。

photophoto 楽天モバイルは「ZenFone 5」の8GB版を販売。「楽天でんわ」や「Viber」「楽天gateway」といったアプリがプリセットされる。これらは「不要ならアンインストールも可能」(三木谷氏)だという

 一方で、3、4年で1000万ユーザーを目指すには、まだ解決すべき課題も山積している。1つが、店頭での契約。現時点では販売がWebのみとなっており、MNPをしようとすると電話番号が使えない期間が発生してしまう。三木谷氏も「番号の書き換えにはリアルな店舗が必要だと思っている」と重要性は認識しているものの、現時点ではいつ店頭販売が始まるのかは決まっていない。

photo MNPの即日対応は今後の課題。店舗が少ないうちは、ケイ・オプティコムがmineoで行っているような、配達後に回線を切り替える仕組みなどが必要になりそうだ

 また、現時点では端末が一括払いのみ。いくらZenFone 5が安価でも、分割で購入できないとハードルは一気に高くなる。三木谷氏は「準備をしている」と語っていたが、これも早急に開始すべきだろう。第2弾、第3弾を用意しているというものの、端末ラインアップの拡充も急務だ。ただし、それでもほかのMVNOと横並びになるにすぎない。MVNOの多くは100万ユーザーを目標に据えているが、その10倍を獲得するのは、いくら楽天の知名度が高いとはいえ簡単な話ではない。業界4位のワイモバイルのユーザー数が1006万6000であることを考えると、店舗展開やプロモーション、端末のラインアップは、最低限そのレベルまで拡充する必要はありそうだ。

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