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» 2016年02月06日 06時00分 UPDATE

「PC+スマホ」でより快適なビジネスを――「VAIO Phone Biz」がWindows 10 Mobileを選んだ理由

VAIO「初」のスマートフォンとなる「VAIO Phone Biz」が発表された。なぜ、初スマホにWindows 10 Mobileを採用したのだろうか。そのヒントは「快」だ。

[井上翔,ITmedia]

 VAIOは、SIMロックフリースマートフォン「VAIO Phone Biz VPB0511S」(以下、VAIO Phone Biz)を4月に発売する予定だ。同社のハイエンドタブレットPC「VAIO Z Canvas」のデザインをもとにしたアルミ製ボディーと、同社の安曇野工場で全量検品した上で出荷する「安曇野FINISH」に見られるように、正真正銘「VAIOのスマホ」といえる1台だ。

 日本では、iPhoneとAndroid端末がスマホ市場を事実上「二分」している。その状況において、VAIO Phone for Bizはあえて“新参者”に近いWindows 10 Mobileを採用した理由はなぜか。そこには、PCメーカーとして歩んできたVAIOの歴史がある。

VAIO Phone Biz VAIO Phone Biz
発表会の登壇者 VAIO Phone Bizの発表会に登壇したキーマンたち。左からVAIO 商品企画部の岩井剛氏、NTTドコモ 法人ビジネス本部長の高木一裕氏、VAIOの大田義実社長、日本マイクロソフトの平野拓也社長

「歩み」を踏まえ「可能性」を信じてWindows 10 Mobileを採用

大田社長 VAIOの大田社長

 ソニー時代のVAIOは、幅広いユーザーを獲得するために、多くのモデルを用意していた。一方、ソニーから独立した後のVAIOは「(旧来の)VAIOファンおよびヘビーユーザーのビジネスパーソン」(VAIOの大田義実社長)にターゲットを絞り、PCを「生産性・創造性を高める最高の道具または資産」と位置付けて開発してきた。

 その方針を象徴する1台が、2015年12月に発売した「VAIO S11」だ。VAIOは、VAIO S11にSIMロックフリーのLTE対応モデルを用意するだけにとどまらず、自らがMVNO(仮想移動体通信事業者)となってデータ通信用SIMカードを販売している(参考記事)。「モバイルノートPCでありながら、気軽に常時接続を実現できていなかった」問題をLTE対応とオリジナルSIMカードの提供で解決し、ビジネスにおける生産性をより高める、というわけだ。

VAIO S11とオリジナルSIM 「VAIO S11」にLTE通信対応モデルを用意し、MVNOとしてオリジナルSIMを用意することで、ビジネスの生産性を高める

 VAIOは、「PCとさまざまなデバイスや通信を組み合わせることで、プラスアルファの付加価値」を提供することを目指しているという。VAIO S11とオリジナルSIMは、その成果の1つだ。しかし、PCを取り巻くデバイスとしてスマホの存在も無視はできない。そのため、「スマートフォンに、VAIOとしてどう取り組むか、いろいろ検討を重ねてきた」という。

 先述の通り、iPhoneとAndroidでスマホ市場を二分している状況において、プラットフォームとしてAndroidを選択することは、ある意味で“順当“な選択だ。しかし、VAIOは「1997年7月の初代VAIO以来、Windows OSとともに歴史を重ねてきた」という事実を踏まえ、「新たな価値を皆様に提案できる可能性を信じて」Windows 10 Mobileを搭載するVAIO Phone Bizの開発を決定したのだという。同OSが持つWindows PCやMicrosoft Officeとの調和性、セキュリティ性の高さなど、VAIOが重視する法人ユーザーが求めるニーズにも応えられることも決め手となったようだ。

VAIO Phone BizがWindows 10 Mobileを導入した経緯 PCメーカーとしてWindowsとともに歩んできたことと、OSとしての可能性を信じてWindows 10 Mobileを採用

VAIO Phone Bizが目指すのは「立った状態での『快』」

VAIOの岩井氏 VAIOの岩井氏

 大田社長の説明にもある通り、分社化後のVAIOは「VAIOファンおよびヘビーユーザーのビジネスパーソン」をターゲットにPCを開発している。その差別化の軸を「長年培ってきた薄型化・軽量化の技術を中心に、他社よりも薄く、軽く、気持ち良くPCが使える」(商品企画部の岩井剛氏)ことに据え、最近では「快」という言葉で表現している。

 ノートPCは、基本的に座った状態で使うものだ。そういう意味で、VAIOのノートPCは「座った状態での『快』」を追い求めている。しかし、ノートPCはいつでも開いたり取り出したりできるとは限らない。そこで、VAIO Phone Bizは「立った状態、あるいは歩いている時、電車に乗っている時でも、より快適なコンピューティング体験を提供」すべく、VAIOが培ってきた経験を生かした「ビジネス用途での生産性の高さとPCとの親和性」を差別化の軸として設定している。要するに「立った状態での『快』」を追求しているのだ。

 PCと一緒に使うことで、いつでも快適に仕事ができる――これが、VAIO Phone Bizの基本的な位置付けだ。

座っていても立っていても「快」 座った状態での「快」に加えて、スマホを用意することで立った状態でも「快」を実現
PCとのセットで、ビジネスの生産性を向上 発表会場では「VAIO S13」とのセット展示が用意されていた。ノートPCとスマホの2台で、VAIOの目指す「快」を高められる

 岩井氏は、VAIO Phone BizでWindows 10 Mobileを採用した理由を改めて説明した。企業システムとの親和性の高さ、ユーザーインタフェースやアプリ面でのPCと共通のユーザビリティ、PCとの連携のしやすさといった要素が大きな決め手となったようだ。

企業システムとの親和性の高さ Windows 10 Mobileは、企業システムとの親和性が高い
PCとの高い親和性 Windows PCとの親和性の高さも決め手

 VAIO Phone for Bizは、国内で販売している他社のWindows 10 Mobileスマホよりもスペックを高めに設定している。

 Windows 10 Mobileは、Androidと比較してOSの動作が軽快であることから、他社ではエントリー端末向けのプロセッサを採用していることが多い。それに対し、VAIO Phone Bizでは「ビジネスユースで快適に使ってもらいたいことと、Continuumをどうしても使ってほしい」という理由から、ミドルレンジ向けプロセッサで上位モデルとなる「Snapdragon 617」を採用している(参考記事)。ハイエンド向けプロセッサ(Snapdragon 808/810)を採用しなかったのは、コストと処理パフォーマンスのバランスを取った結果だ。

コストと処理パフォーマンスのバランスを取ってSnapdragon 617を採用 コストとパフォーマンスのバランスを取って、ミドルレンジ上位の「Snapdragon 617」を採用した

 画面は5.5型のフルHD(1080×1920ピクセル)液晶を搭載している。これは「手元でOfficeアプリを快適に使う」ためだ。また、メインメモリを3GB搭載したのは「マルチタスクで使う際、あるいはContinuumをより快適に使う」ためだ。

 スマホのスペックアップは、どちらかというとエンターテインメント用途を志向して行われるケースが多い。しかし、VAIO Phone Bizは、あくまでもビジネスにおける「快」を追求するためにやっていることがポイントだろう。

ビジネス用途のためにスペックを高めに あくまでもビジネスを快適にするためにスペックアップ

 VAIO Phone Bizは、SIMロックフリー端末だ。NTTドコモとソフトバンク・Y!mobileが利用しているLTE(FD-LTE)とW-CDMAの周波数帯域は一通り対応する。ドコモのネットワークでの利用に関しては、LTE-Advancedサービス「PREMIUM 4G」に正式に対応するほか、相互接続性試験(※)を現在進めているところだという。

※Inter-Operability Testing(IOT):特定の移動体通信ネットワークとの相互接続性を確かめる試験。合格した端末(モジュール)は、問題なく通信できる「お墨付き」をキャリアからもらったことになる。言い方を変えれば、IOTに合格していない端末は、接続できなくても文句はいえないことになる

対応周波数帯 VAIO Phone Bizは、ドコモとソフトバンク・Y!mobileの利用周波数帯をひととおりカバーしている。ドコモネットワークではLTE-Advancedサービス「PREMIUM 4G」にも対応する

 先述の通り、VAIO Phone BizはVAIO Z Canvasのデザインをもとにしたアルミボディーを採用している。このボディーはアルミニウムの削り出しで作られており、丈夫さと質感の高さを両立している。

 VAIO Phone Bizの製造は海外の協力工場で行うが、VAIOの安曇野工場で全量検品した上で出荷する「安曇野FINISH」を実施することによって、ノートPCと同様の品質保証を行う。安心感も、差別化要素というわけだ。

デザインはVAIO Z Canvasをモチーフに デザインは同社の「VAIO Z Canvas」をモチーフに
全量を「安曇野FINISH」 出荷全数を「安曇野FINISH」することで品質を担保

 VAIO Phone Bizを見て、筆者は個人的に「今」と「昔」のVAIOに思いをはせた。

 VAIO Phone Bizは「今」のVAIOをスマホに落とし込んだものだ。ビジネスシーンでの「快」にこだわるのであれば、Windows 10 Mobileの採用は正解で、他の国内のWindows 10 Mobileスマホよりも快適に使えることは確かだろう。

 ただ、「昔」、すなわちソニーのVAIOを思い浮かべるとどうだろうか。Windows 10 Mobileのプラットフォームとしての自由度は「iPhone(iOS)以上Android未満で、iPhone寄り」の状況だ。そのため、ソフトウェア面での個性を発揮しにくい状況にある。中身(ソフト面)だけ見ると、VAIO Phone Bizの独自性は皆無に近い。アルミ削り出しのボディには、しっかりと「らしさ」が見られるが、ソニー時代のVAIOは中身にも「らしさ」があったはずで、ちょっと物足りなさを感じてしまう。

 PCとの連続性はあるけれど、個性はあまり期待できないWindows 10 Mobileを採用したVAIO Phone Biz。その判断は、吉と出るか、凶と出るか。今後に注目だ。

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