「通信料無料キャンペーン」や「販路別特典」が流行? スーパーがMVNOに参入――2016年2月データ通信編格安SIM定点観測(1/4 ページ)

» 2016年03月08日 21時40分 公開
[井上翔ITmedia]

 2015年12月と2016年1月のMVNO(仮想移動体通信事業者)のデータ通信用SIMは、個人向けにデバイス特化型のサービスが、余ったデータ通信容量をユーザー間でシェアできるサービスや特定の時間帯だけ高速通信できるサービスなどが注目を集めた。

 2016年2月のデータ通信用SIMを見渡すと、一定期間の基本料金を無料とするキャンペーンや、特定の販路から購入した時に限ってポイント(マイル)がたまる取り組みなどが大きな注目を集めた。さっそく振り返ってみよう。(記事中の料金は、特記のない限り税別。2016年2月29日までの情報をもとに掲載)

とにかく使ってみてほしい? 一定期間料金を無料とするキャンペーン

 2015年12月・2016年1月の定点観測で追い切れなかった動きとして、ドリーム・トレイン・インターネット(DTI)の「DTI SIM」で、3GBプランの基本使用料を2カ月(音声プラン)または6カ月(データプラン・データSMSプラン)無料とする「『DTI SIM』 半年タダでお試し!キャンペーン」があった。先着5000人限定ながら、複数月に渡り基本料金を無料とするキャンペーンは“太っ腹”だ。

 このキャンペーンは、当初は2015年12月18日〜2016年1月31日までの予定だったが、1月13日に定員を5000人追加の上、受付期間を2月29日までに延長した。2月16日には定員をさらに1万人追加し、受付期間も3月31日まで延長した。

 また、プラスワン・マーケティングが展開する「FREETEL SIM」でも、2月22日までの期間限定だったが6カ月間(SIMの単品購入時)または1年間(FREETELスマホとのセット購入時)に渡り1GB分のデータ通信料が無料となる「SIMフリースマホNo.1記念!最大1年間ゼロ円キャンペーン」を実施した。

 通信速度定点観測でもお伝えしている通り、MVNOサービスの通信速度は、MNO(大手キャリア)と比べると時間帯によって変わりやすい。とりわけ、昼間時はMVNO間でも速度差が大きく出やすい傾向にある。しかし、そのような傾向は実際に使ってみなければ分からない面もある。

 これらのキャンペーンに共通していることは、「とにかく使ってみてほしい」ということだろう。しっかり納得した上で使い続けてほしいという姿勢は評価に値する。筆者としては、MVNOサービスをユーザーの行動範囲内で“試せる”機会は重要であると考えている。キャンペーンという形でなくとも、ユーザーに体験できる機会を積極的に与えてほしいと思っている。

DTI SIMのキャンペーン あえて「胡散臭さ」を演出した特設ページで話題となったDTI SIMのお試しキャンペーン。これ以上の期間延長と募集定員増設はしない見込み
FREETELのキャンペーン FREETEL SIMのデータ通信料金を1GB分無料にするキャンペーンは、条件を変更の上、「ぶっちぎり!春の毎月1GB無料キャンペーン」として3月28日まで継続中

「販路別の特典」は一般化するか?

 MNOサービスを使うメリットとして、ポイントプログラムを挙げる人も少なくない。MVNOサービスにも、トーンモバイルの「TONE」のように利用料金に対してポイントが付与されるものもあるが、それほど多くはない。「ポイントを付与するなら料金で直接還元する」ことも、格安SIMが格安SIMたるゆえんなのだが、「何か還元してほしい……」と思うのも、人の“さが”だ。

 そんな声に間接的ながらインターネットイニシアティブ(IIJ)の「IIJmio」が応えた。全日本空輸(ANA)が運営する「ANAマイレージモール」経由で新規申し込みをすると、ANAマイレージクラブのマイルがたまるようになった。

 ANAマイレージクラブの会員には朗報ともいえる取り組みだが、既存の契約者や別経路での申込者が対象外となるのは少し残念な気もする。

 ただ、販路別の特典という意味で視点を変えると、IIJmioのビックカメラグループでの販売分(BIC SIM)には、公衆無線LANサービス「Wi2」を無料で使えるという独自特典がある。ビックカメラグループでは、NTTコミュニケーションズの「OCN モバイル ONE」の音声通話対応SIMカードを「BIC モバイル ONE」として販売している(参考記事)が、こちらにも期間限定ながら「ひかりTVエントリープラン」(月額350円・税込)を無料で利用できる独自特典が付与されている。

 同じMVNOサービスでも、販路によって付与する(ノベルティの類いではない)特典を変える、ということは筆者は“あり”だと思っている。1つの店舗で複数のMVNOのSIMカードを取り扱うことは珍しくなくなった。同じSIMカードをただ売るだけでは横並びになってしまう。これからは、MVNOではなく、販売店側にも差別化要素を求められるようになるのかもしれない。

ANAマイレージモール ANAマイレージモール経由でIIJmioを契約すると、新規契約で200マイルが付与され、その後も契約プランに応じたマイルが毎月付与される
BIC モバイル ONE BIC モバイル ONEでは、「ひかりTV」のエントリープランが無料で使える特典がある

より「大容量」を選んでもらう動機付け

 「格安SIM」という代名詞が浸透していることからも分かる通り、MVNOはMNOよりも安い月額料金で利用できる点で人気を集めている。その中で、最近は月間通信容量が大きめのプランを拡充する動きが盛んだ。複数枚のSIMカードを発行できるオプションを活用して家族ぐるみで使ってもらおう、という狙いもある(参考記事)一方で、外出先でも動画視聴で大量に通信するユーザーがいることもその背景にある。もちろん、容量(あるいはSIMカードの枚数)が増えた分だけ収入が増えるということもあるだろう。

 そんな中、ビッグローブの「BIGLOBE SIM(BIGLOBE LTE・3G)」で、6GB以上の大容量プラン(ライトSプラン・12ギガプラン)の新規申込者を対象に、先着1000人にドワンゴの「niconico」のプレミアム会員権(月額540円・税込)を180日間(ライトSプラン)または365日間(12ギガプラン)無料で使えるチケットをプレゼントする取り組みを行っている。

 niconicoのプレミアム会員になると、「ニコニコ動画」や「ニコニコ生放送」などでさまざまな特典が付与される。特に、夜間に動画を視聴する機会の多い人や、生放送を多く視聴する人にとってはあずかる恩恵の大きいサービスだ。大容量プランを契約してもらうきっかけとしては、非常に魅力的だと(niconicoプレミアム会員でもある)筆者は感じる。

 「そんなことやって、通信帯域は大丈夫なの?」と思う人もいるだろうが、この特典をもらえるプランでは、公衆無線LANサービス「BIGLOBE Wi-Fi」を無料で使える。また、ビッグローブには光回線インターネットサービス「BIGLOBE 光」という選択肢もある。動画サービスをより積極的に使える特典を付与しても、帯域に対するインパクトを軽減できるだけのサービスも取りそろえているプロバイダー系のMVNOだからこそできる施策であるといえるだろう。

BIGLOBE SIM BIGLOBE SIMの「niconicoプレミアム会員」の無料利用特典は、動画をよく見るユーザーへの訴求としては筋が良いと筆者は感じる

大手スーパーがMVNO事業に参入

 GMS(総合スーパーマーケット)を展開するイオンリテールでは、一部の店舗で携帯電話を取り扱っている。取り扱い店では、MNO各社の携帯電話に加えて、「イオンモバイル」というブランドで複数のMVNOのSIMカードやSIMロックフリー端末も販売してきた。

 2月26日、イオンリテールは自らMVNOとしてサービスを提供する新しい「イオンモバイル」を開始した。新生イオンモバイルはプランの多さが特徴で、データプランは10種類を用意している。

 このうち、月額480円の「データ1GBプラン」、月額1980円の「データ8GBプラン」と、月額4980円の「データ20GBプラン」においてDMM.comの「DMM mobile」から、月額2680円の「データ12GBプラン」においてBIGLOBE SIMから最安値の記録をそれぞれ奪った。また、データプランでは30GB、40GB、50GBという従来のMVNOサービスにはなかったより大容量なプランも用意している。当然、これらのプランは競合がいないため業界最安値となる。

 イオンリテールの強みは、実店舗の多さにある。サービスを開始した2月26日段階で計429店舗で購入可能で、このうち約半数の213店舗で音声通話プランの即日渡しが可能で、故障修理受付や料金プラン変更などのサポートも受け付けている。他のMVNOサービスでここまでの対人窓口を持っているところは事実上ないに等しい。

 また、客層も強みだ。GMSには女性客や家族連れが多くやってくる。MMD総研によると、女性は実店舗での回線契約を好む傾向にある(参考記事)。実店舗が多く、かつ女性が多く訪れる場所で販売しているイオンモバイルは他のMVNOにとっては“脅威”となるはずだ。

 なお、イオンリテールでは、従来のイオンモバイル(IIJmio、BIGLOBE SIM、日本通信の「b-mobile」)も併売する。大手の家電量販店と同様に、MNOも含めてさまざまな選択ができることも魅力だ。

イオンモバイル 新しい「イオンモバイル」は、きめ細かい料金プランが特徴

 前回の定点観測でも触れた通り、昨今のMVNOサービスは単純に「安い」ことよりも、価格に対する「妥当性」に重きが置かれるようになってきている。問題は、その「妥当性」をどう判断するかだ。

 例えば通信速度の妥当性を見る場合、今回の定点観測で取り上げた一定期間の月額基本料金無料キャンペーンは実に理にかなっている。いくら格安でも、不満をためてまで使うということは理にかなわない。自分の使い方に合うのかどうか、しっかり見極められることは、長い目で見ればMVNOとユーザーの双方にとって「win-win」となるはずだ。

 通信がしっかりできることが分かってこそ、ポイントプログラムやオプションサービスなどの「ならでは」が生きてくるはずだ。ぜいたくをいえば、端末にもお試しサービスがあるとうれしいのだが……。

まとめ(新情報は赤線)

  • イオンリテールが、自らMVNOとなる新しい「イオンモバイル」のサービスを開始。1GBプラン、8GBプラン、12GBプラン、20GB以上の各プランで業界最安値に
  • IIJmioの「ファミリーシェアプラン」のSIMカード発行枚数の上限が10枚(音声通話機能付きSIMカードは5枚まで)に拡大
  • ソネットの「0 SIM」は、500MB未満の通信量なら、月額0円(SMS対応プランは月額150円+ユニバーサルサービス料金)から使える
  • 「DMM mobile」がLTE通信(225Mbps)を利用できる5プランで最安を記録(2GB:770円、5GB:1210円/月、7GB:1860円/月、10GB:2190円/月、15GB:4570円/月)
  • 日本通信の「b-mobile SIM 高速定額」は、高速定額サービスでは最安値となる月1980円で下り最大225Mbps/上り最大50MbpsのLTE通信が使い放題
  • 速度制限付きで月額500円未満で利用できるのは「DMM mobile ライトプラン」(200kbpsで無制限、440円)、「ワイヤレスゲート Wi-Fi+LTE SIMカード」(250kbpsで無制限、445円)と「ServersMan SIM LTE」(250kbpsで無制限、467円)

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