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» 2017年02月10日 10時00分 UPDATE

石川温のスマホ業界新聞:日本通信が3月22日からソフトバンク網格安SIMカードを投入――「嘘つき」呼ばわりからの合意も、先行メリットをどこまで生かせるのか

日本通信がソフトバンク回線を利用する「格安SIM」サービスを開始する。競合がほとんどいない環境下で、先行メリットをどこまで生かせるかが、成否を分けそうだ。

[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 日本通信は、ソフトバンクのSIMロックがかかっているiPhone、iPad向けに格安SIMカードを発行すると発表した。

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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2017年2月4日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。


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 日本通信では3月22日よりサービスを開始すると言っているが、ソフトバンクの宮内謙社長が「相手の言っていることがよくわからなかった。総務省のガイドラインは2015年5月以降に発売されるスマホはSIMロック解除に対応しなくてはならないというものだったが、日本通信は2015年5月以前の端末もSIMロック解除しなくても使えるSIMカードを出せと言ってきた。ややこしい話で時間がかかるとして、今年の4月以降に対応になるという話だったが、『もっと早く出してくれ』ということで紛争になった」と語った。

 日本通信としては、今期、ソフトバンク網を使った格安SIMカードに社運をかけていただけに、相当、時間的な焦りがあったのだろう。事実、2月2日に発表された決算内容がボロボロだったことからも、いかにソフトバンク格安SIMに頼った経営戦略だったかがよくわかる。3月22日にサービス開始としたのも、今期中に無理矢理押し込みたかったという本心がうかがえる。

 日本通信では、早期に100万契約を目指すとしているようだが、実際にソフトバンクでiPhone 6以前の端末を使っているユーザーが大挙して日本通信に移行するかは疑問を感じざるを得ない。

 ソフトバンクとしては、MNPで日本通信に流れそうな人に対しては、サブブランドのワイモバイルを勧めるであろう。iPhone 5sユーザーであれば、同じ端末を使い続けて日本通信に移行するより、新品のiPhone 5sを購入してワイモバイルで安く使えたほうがメリットは大きいはずだ。

 日本通信では、業務提携をしているU-NEXTの販売力を期待している。U-NEXTではヤマダ電機とMVNO事業の合弁会社を設立しており、特にヤマダ電機の販路が期待できるとされている。

 しかし、一方で、ヤマダ電機はソフトバンクと資本業務提携を結んでいる関係もある。ソフトバンクが資本業務提携を武器に横やりを入れてくる可能性だってあるだろう。U-NEXTとすれば、ワイモバイルのSIMカードでも売り上げがたてばいいわけで、ヤマダ電機で格安SIMを求める人たちが手にするのはワイモバイルのSIMカードになることが考えられるのだ。

 そもそも、日本通信は、他社に先駆けてNTTドコモ網につないだMVNOとしてかなりの先行者メリットがあったはずだ。しかし、現在ではそのメリットを全く生かせず、格安スマホ市場ではすっかり存在感がなくなってしまった。

 日本通信では「すでにドコモ網につなぐ設備があり、ソフトバンク網につなぐのもさほど投資は必要ない」と語っている。つまり、他のMVNOも、ソフトバンクと合意をすれば、すぐにソフトバンク網を使った格安SIMカードを提供できるというわけだ。

 日本通信の最大の欠点は、交渉相手に対してけんか腰で挑む態度だ。ソフトバンクと交渉を進めていく上で「ソフトバンクは嘘つきだ」と本心をメディアに語ってしまっては、交渉を受けるソフトバンクとしても心証はとても悪くなる。こんなこと、人としての基本だと思うのだが、それがわかってないのが、日本通信らしさといえる。

 一度、「嘘つき」と言われた人と仕事は積極的にしたくないわけで、こうした態度が、日本通信の可能性を狭めてしまっているのだろう。

 たとえば、IIJは、「端末のMVNOロックがかかっていることについて、KDDIに文句を言ったりしないのか」という質問に対して「IIJにとってKDDIは大切なパートナーであり、KDDIにとってもIIJがなくてはならないパートナーのはず。総務省に訴えるなんてことはあり得ない」と語る。

 ネットワーク事業者は「接続」あっての関係なのだから、常に友好関係を築いていかなくては、立ち回っていけないはずだ。

 宮内社長は「彼ら(日本通信)についてはNTTドコモの社長のところに聞きに行ってくださいよ。彼ら、10年以上、やり合ってきたんですから。まぁ、ユニークな方々ですよね」とお茶を濁したが、内心は快く思っていないのは明らかだ。

 日本通信がソフトバンクの体制に風穴を開けたのは立派な業績だ。しかし、そのやり方が強引すぎるために、その先の交渉が上手くいかず、結局、たち行かなくなるのが残念でならない。

 「そもそも、本当に3月22日に開始できるのか」も含めて、今後、日本通信がどのようにこのチャンスをものにできるのか、そっと見守っていきたい。

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