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» 2017年04月13日 06時00分 UPDATE

ITライフch:MVNOビジネスを開拓し“格安スマホ”を生み出した「日本通信」とは

「格安SIM」「格安スマホ」などの名称で知られるようになったMVNO。そのMVNOの歴史を紐解くと、日本通信という会社が大きな影響を与えてきたことがわかります。今回は、日本通信がどのようにMVNOビジネスを開拓してきたのか紹介します。

[ITライフch]
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MVNOビジネスを開拓し“格安スマホ”を生み出した「日本通信」とは

 ここ数年、スマートフォンが大手キャリアと比べ非常に安い価格で利用できることから、「格安SIM」「格安スマホ」などの名称で知られるようになったMVNO(仮想移動体通信事業者)。大手キャリアからネットワークを借り、必要最小限のサービスに絞って運用コストを抑えることで、安価なモバイル通信サービスを実現しています。注目の集まるMVNOの歴史を紐解くと、日本通信という会社が大きな影響を与えてきたことがわかります。

三田聖二会長

 日本通信は1996年に設立された会社で、2001年にDDIポケット(現在はソフトバンクのワイモバイルブランド)のPHS回線を借り、MVNOとしてデータ通信サービスの提供を開始。個人向けだけではなく、法人向けにもプリントシール機向けの通信回線を提供するなど、幅広くサービスを展開してきました。

2001年にDDIポケットのPHS回線を借り、MVNOとしてデータ通信サービスを開始

 当時携帯電話キャリアは、自社でネットワークだけでなく端末やサービスも開発し、それらを一体で提供するビジネスを展開していました。そうしたこともあって、大手キャリアはネットワークだけを貸し出すMVNOのような取り組みにはあまり積極的ではありませんでした。そのため、KDDI(au)の回線を用いて防犯などに役立てる、セコムのGPS端末「ココセコム」のように、キャリアと直接競合しないサービスにのみ回線を提供している状況だったのです。

キャリアと直接競合しないサービスにのみ回線を提供していた

 しかし、日本通信はMVNOビジネスの一層の開拓を目指し、PHSだけでなく携帯電話キャリアからもネットワークを借りてのサービス提供に乗り出します。実際、2007年にはNTTドコモと相互接続に関する交渉を進めました。もっとも、これは条件面が折り合わず不調に終わってしまいました。

 そこで日本通信が総務大臣に紛争処理の裁定を求めたところ、日本通信側の主張がほぼ認められ、2008年にNTTドコモと相互接続で合意、携帯電話のMVNOとしてもサービス提供を開始しました。この総務大臣裁定と、その後の相互接続によって日本通信が実現した2つの要素が、現在の“格安”サービスの実現に大きく影響しているのです。

 2つの要素のうちのひとつは、MVNOの側がサービスや料金を決定できること。NTTドコモ側は当初、料金やサービスはNTTドコモ側が決める形で回線を貸し出す方針をとっていましたが、日本通信はそれに異を唱え、総務大臣裁定によって同社の主張が支持されたために、MVNO側が自由な料金やサービス設計ができるようになったのです。このことが、現在の安価なサービス実現へとつながっているのは確かでしょう。

 もうひとつの要素は「レイヤー2接続」です。レイヤー2接続は、ネットワークの一部をMVNO側がコントロールできることから、サービスの自由度が大幅に高まるという違いがあります。それゆえ日本通信はレイヤー2接続に強いこだわりを持って交渉を進めていたようで、2009年にはレイヤー2接続を実現。現在、MVNOが大手キャリアにはない特長のあるサービスを実現できるのも、このレイヤー2接続のおかげといえるでしょう。

 こうして日本通信はNTTドコモのMVNOとして、個人・法人向けにデータ通信を活用したサービスの提供を進めていくこととなります。とはいえ、個人向けの携帯電話サービスに関しては、当時はまだスマートフォンの人気が高まる前であり、キャリアの垂直統合によるサービス提供が主流を占めていました。それゆえ日本通信のサービスも、当初はパソコンに接続するドングル型のデータ通信端末や、パソコンに内蔵したデータ通信モジュール用のネットワーク提供などが主でした。

 しかしながらスマートフォンの人気が高まり始めた2010年、日本通信は現在MVNOで主流となっている、SIMのみをパッケージで販売するというビジネスを開始したのです。同時に日本通信自身も、SIMフリーのWi-Fiルーターやタブレットなどを独自に調達するなどして、SIMの利用活性化を進めてゆきました。

2010年にSIMのみをパッケージで販売するというビジネスを開始

 その後スマートフォンの人気が急速に高まり、サービスと端末、ネットワークの分離が進み、SIMのみを提供するというMVNOのビジネスが徐々に注目されるようになりました。そして、大きな転機を迎えたのは2014年。イオンが日本通信のSIMと、グーグルのSIMフリースマートフォン「Nexus 4」をセットにして販売した「イオンのスマートフォン」が、月額2,980円と当時としては非常に安価な価格で大きな注目を集め、「格安スマホ」という言葉が生まれました。こうして、MVNOは急速に注目を集めるようになったのです。

2014年、「イオンのスマートフォン」が、当時としては非常に安価で大きな注目を集めた

 それ以降、多くの企業がMVNOに参入し、格安で利用できるMVNOのサービスが加速度的に人気を高めていることは、皆さんがご存じの通りでしょう。しかし最近はMVNO同士の競争が非常に激しくなってきており、この市場を開拓した日本通信も、昨年にはコンシューマー事業をU-NEXTに譲渡し撤退することを表明。法人向けサービスや、MVNOを支援する“裏方”に専念する方針を示しています。

 一方で、日本通信は今年、新たにソフトバンクとのレイヤー2接続を実現、3月にはU-NEXTなどを通じてソフトバンクの回線を用いたサービスの提供を始めるなど、新たな取り組みも進めているようです。こうした施策によって同社が再びMVNO業界全体に新たな影響をもたらす存在になれるかどうか、注目してゆきたいところです。

この記事の執筆者

佐野正弘

佐野正弘

エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在は業界動向から、スマートフォン、アプリ、カルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。


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