Windows 10に関連して、2015年を象徴するMicrosoftのトピックとして2つほど触れておきたい。
最初のトピックは「OneDriveの戦略変更」だ。OneDriveはライバルのクラウドトレージサービスと比較しても容量が多めで使い勝手も悪くなく、筆者としても過去の連載記事で積極的な活用を推奨していたサービスの1つだ。しかし現在、2度の方針転換を経てOneDriveに対する信頼性は下がり、「他の選択肢も模索しつつ利用するサービス」と評価を下方修正している。
発端の1つは「Office 365契約ユーザーへの容量無制限サービスの提供」だ。これにより最大75TBもの大容量ファイルを1アカウントで保存するユーザーが出現したため、Microsoftは容量無制限サービスを中止して、1TBまで最大容量を引き下げると発表した。また、無償ユーザーの容量についても、カメラロールを合わせて30GBだったものを5GBへ引き下げると発表するなど、対応が全て後手にまわった印象がある。
後者については謝罪とともに一部方針を撤回したものの、後味の悪いものとなった。もともとの発想は大容量ストレージでユーザーを囲い込み、さらにOffice 365の有料サブスクリプション契約へと誘導するのが目的だったと思われるが、これが裏目に出た形だ。
逆に、今後はこうした形でMicrosoftによるユーザーの囲い込みが難しくなってしまったわけで、戦略上も大きなマイナスだろう。幸い、Office 365の契約は比較的好調のようだが、このOneDriveでの失敗をどう2016年以降のOfficeとWindows戦略に反映させるのかに注目したい。
トピックの2つ目は「Surface Book」だ。発表後に「AppleになりたいMicrosoftの象徴」といった刺激的なタイトルの記事を公開したが、製品の魅力はソフトウェアだけでなく、ハードウェアも含めた総合力が重要だという事実を、Microsoftが認識していることをあらためて示した例となる。
Surface BookがパートナーであるOEMメーカーの市場を食うという話があり、実際その通りなのだが、一方でPC市場におけるSurfaceシリーズの占める割合はそれほど高くなく、台数シェアではOEM各社の製品のほうが圧倒的に勝っている。ここでSurface Bookの登場が重要な理由は、PC市場が変化する最大の転換点に達したことを示すものだからだ。
ある既存OEMは、このSurface Bookを見て「Microsoftが直接競合として参入するようでは、ビジネスとしてやっていけない」と考えるかもしれない。また別のOEMは、これをチャンスと見て「より強力な製品を投入して市場シェアを拡大しよう」と考えることもあるだろう。一方で、これまで市場に製品を投入してこなかった新規ベンダーが、これを「新たなビジネス開拓の機会」と考えて参入してくる可能性もある。
2015年、そして2016年のPC市場で起こるのは、この違った考えを持つ3者によって発生する市場の大きな変革だ。既にWindows 10 Mobileの世界でこれは発生しており、日本国内で端末を投入した7社は(一部を除けば)ほぼ全てが新規参入組だ。先日インタビューした米MicrosoftでOEM部門担当コーポレートバイスプレジデントのニック・パーカー氏の発言の多くは、この辺りの変化を示唆した内容になっている。
詳細は別の記事であらためて考察するが、2015年におけるPC業界の最も大きなイベントはWindows 10の発売ではなく、実はSurface Bookの発表だったのかもしれない。
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