あらゆるベンダーの端末で同じアプリが動く世界へ――Symbian Foundation“のグローバルAPI”構想Mobile World Congress 2009

» 2009年02月27日 16時24分 公開
[末岡洋子,ITmedia]
Photo Symbian Foundation リーダーシップチームのジョン・フォーサイス氏

 AppleGoogle、Microsoftが攻勢に出るなど、モバイルプラットフォームの熱い戦いが続く中、2008年に設立計画を発表したSymbian Foundationもシェア拡大に向けた準備を着々と進めている。

 スペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress 2009」で、Symbian Foundation リーダーシップチームのジョン・フォーサイス氏(元・英Symbian戦略担当副社長)に、2009年の携帯プラットフォーム戦略について聞いた。

―― Symbian Foundationのこれまでの経過について教えてください。

ジョン・フォーサイス氏 2008年6月、NokiaがSymbianを買収し、Foundationを設立する意向を発表しました。これが最初のマイルストーンです。次のマイルストーンは12月で、買収が完了し、法的に組織として活動できるようになりました。

 現在、われわれはその次のマイルストーンであるSymbian Foundationの“Day1”の間にいます。Day1は、メンバー企業がソースコードをダウンロードできるようになる日のことを指しています。

 2週間前には理事会が予算とビジネスプランを承認し、今は雇用や新たなブランディング、新メンバー企業の募集などを、急ピッチで進めています。企業は今週から、年間1500ドルの会費でSymbian Foundationのメンバーになれます。これまで約78社が参加を表明しており、関心を示している企業は700社を上回っています。今後数カ月で、これらの企業が正式参加することを期待しています。

 Symbian Foundationの目的は、完全に独立した中立の組織にすることです。だれでも参加でき、だれでも理事会メンバーになることができ、完全なソースコードにアクセスできるという“完全に中立なプラットフォーム”は、現在ありません。Day1のソースコード公開は、今年第2四半期を予定しています。

―― ソースコードへのアクセスはメンバー企業に限定されますか?

フォーサイス氏 一定期間はソースコードへのアクセスをメンバー企業に限定しますが、メンバー以外の企業にもできるだけ公開したいと思っています。一定の期間を設けたのは、貢献した企業が知的所有権などIP周りを処理する必要があるためです。

 現実的にみて、来年はまだほとんどのソースコードがメンバー企業向けでしょう。逆に言えば、だれもがメンバーになれます。

―― Mobile World Congressの直前に、QualcommFoundationへの参加を表明しました。

フォーサイス氏 Qualcommの参加により、Texas Instruments (TI)、ST-Ericsson、ルネサステクノロジといったシリコンベンダーが増えました。シリコンベンダーはSymbian Foundationにとって重要なパートナーであり、主要なベンダー全社に参加してほしいと考えています。

 特にQualcommには、Symbian Foundation発表時から理事会入りするよう話をもちかけていました。QualcommはSymbianプラットフォームをターゲットにするため、専門知識を持つ技術者を採用しており、深く関わってもらえると期待しています。

 QualcommはSymbian Foundationに参加することで、Nokiaへの足がかりを作ることができます。Qualcommは成功した企業で、優れた製品ポートフォリオを持っていますが、さらなる成長を目指すにはNokiaへのアクセスが不可欠です。実際、2社はMobile World Congressの会期中に、次世代の端末開発について重要な発表を行っています。

―― Symbian Foundationの中立性は、どのように維持するのでしょうか。

フォーサイス氏 真の中立性を維持するのは重要な課題です。近日中に、全メンバーに向けてメンバーシップのガバナンスに関する詳細情報を発表します。重要なことは、コードの貢献度や金額に関係なく、理事会に参加すると投票権を得られるということです。Nokiaであろうがほかの端末ベンダーであろうが、オペレーターでもシリコンベンダーでもコンテンツプロバイダでも、まったく同じ条件です。

 ほかの組織や団体は、オペレーターが強かったり、逆に端末ベンダーが権力を持っていたりで、力がない参加企業は発言権がありません。われわれは当初から、“これまでとは違うことをしたい、完全に平等にしたい”と思って計画を進めてきました。これは、Symbian Foundationの統治構造に反映されています。

 例えばロードマップでは、ロードマップに合意するためのカウンシルがあり、1票を投票できます。承認されれば、だれでもカウンシルに参加できます。

 このようにSymbian Foundationはメリトクラティック(能力主義的)な構造を持ち、プラットフォームが中立的な方法で進化するアーキテクチャがあると確信しています。

―― Nokiaのサービス戦略は、Symbian Foundationにどのような影響を与えますか。

フォーサイス氏 Symbian Foundationは、さまざまな端末、さまざまな地域をカバーできる標準APIを構築することで合意しています。これは、これまでどの組織も企業も実現できなかったことです。

 Windows Mobileは、地域を問わず一貫性がありますが、端末は非常に小さなセグメントでしか提供されていません。

 一方、われわれの前身であるSymbian OSは、MOAPUIQ、S60などのUIがあり、開発はそれぞれ別に行う必要がありました。

 Symbian Foundationの構想は、“グローバルAPI”を作成することです。グローバルAPIが実現するのは、あらゆる地域のあらゆるベンダーのあらゆる端末で同じアプリケーションが動く世界です。これは、Nokiaのサービス戦略にも良い効果をもたらすでしょう。Nokiaのサービスがほかの端末でも動くようになるからです。ほかのメンバーも自社以外の端末でサービスを展開できます。

 これは特に、日本市場には大きなメリットをもたらすと思います。日本の携帯電話は非常に高度で、洗練された技術が搭載されています。しかし、それをほかの地域で提供することは、これまで不可能に近かったはずです。

―― Appleは「App Store」、Androidは「Android Market」を持ち、Microsoftも「Windows Marketplace」を発表しました。アプリケーション配信においてSymbianは、どのような戦略をとるのでしょうか。

フォーサイス氏 Symbian Foundationはまだ立ち上がったばかりで、さまざまなアイデアが出ている段階です。アプリケーションストアについても、まだディスカッションの段階です。

 アプリケーションの流通手段は大切ですが、互換性も大事です。Androidは互換性が問題になってくると私は予想します。分断化されてしまう可能性があると思います。

 アプリケーションマーケットについて、組織の中では2つのアイデアが出ています。1つはAppleモデルで、“1つのマーケット、1つのルート、1つの価格”というものです。もう1つは、これまでのSymbian、Windowsと同じカオス的なモデルです。

 Symbian Foudationは今のところ、両方の良いところをとるモデルを考えています。Symbian Foundationが“アプリケーションウェアハウス”として、開発者にシンプルな1つのルートを提供します。われわれは開発者が提出したアプリケーションを認証して、ウェアハウスを作ります。

 ユーザーから見たストア側では、競争があります。AmazonがSymbian Foundationアプリを提供するかもしれませんし、OviやYahoo!がサービスの一部として提供するかもしれません。このモデルなら、競争とマーケットを両立できそうです。

 われわれは非営利団体であり、利益を追求する必要がないので、このようなウェアハウスを利益を考えずに構築できます。これは、開発者に最も大きなメリットをもたらすでしょう。現在、Symbian Foundationのプラットフォームと互換性のあるアプリケーションは、1万〜1万5000くらいあります。スタート地点としては、申し分ないと思います。

―― Symbian Foundation向けのアプリケーションはネイティブで動くのでしょうか。

フォーサイス氏 ネイティブで動きます。これまでさまざまな制約でネイティブアプリケーションを開発できなかった開発者には朗報です。

 ネイティブ開発キットのほか、Webランタイム環境も提供します。開発者は用途やスキルに応じて2つから選べます。

 われわれのコミュニティの中に、Qtを使ってSymbian Foundation向けのアプリケーションを開発し、ノートPCとSymbianの両方で動かしている開発者がいます。1つのアプリケーションを作成し、それがWindows、Mac、Linux、携帯電話などさまざまなタイプの端末で動くというのは、非常に画期的なことです。

 Symbian Foundationは今後6カ月の間に、アプリケーション開発者にフォーカスしたニュースを発表する計画です。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年08月08日 更新
  1. NHK受信料パトカー・消防車から徴収問題、猛反発を受け「検討を進めていく」と会長 (2026年08月07日)
  2. ドコモが念願の増収増益に好転 「ドコモMAX」好調も後押し、今後は“ロイヤルユーザー”を重視 (2026年08月06日)
  3. まだ「つながりにくい」声ある“ドコモ通信品質問題”の現在地 前田社長が明かす「道半ば」の詳細解説 (2026年08月06日)
  4. 楽天モバイルのローミングは「予定通り9月末に終了」 ただし「ルーラル限定で継続」の可能性も (2026年08月07日)
  5. なぜ? カーナビが「NHK受信料」対象になるワケ 課金されるケースと徴収を免れる方法 (2025年04月15日)
  6. 「NHK受信料の値上げは検討していない」――会長が明言 スクランブル化を求める声絶えず (2026年08月07日)
  7. KDDIが値上げしても解約率が低下した理由 au、UQ mobile、povoを循環させ「脱・販促費競争」へ (2026年08月07日)
  8. 元グループ会社が「ドコモの銀行」になった不満を吸収? SBI新生銀行が「SBIの銀行」として最大5.2万円のキャッシュバックキャンペーンを開催 (2026年08月05日)
  9. 東海道・山陽・九州新幹線の「EXサービス」に複数のサービス改訂 「ご利用票」のスマホ表示などを9月から順次開始 (2026年08月06日)
  10. スマホの「エアコン冷却」がダメなワケ 猛暑日にやりがちな“水没”の危険性と正しい冷やし方 (2026年08月06日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー