「Xperia」の発売が間近に迫っている。
ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズが総力を挙げて開発し、NTTドコモの肝いりで販売されるXperiaは、この春いちばんの注目モデルだ。すでに一部のドコモショップや量販店で予約の受け付けを始めており、「問い合わせ・予約ともに出だしは好調」(都内ドコモショップ)だという。ドコモが初めて投入する、エンターテインメント志向のAndroid搭載スマートフォンとして市場の期待は日増しに高まっている。
メーカーであるソニー・エリクソンにとっても、Xperiaは戦略的なモデルだ。バルセロナで開催されたMobile World Congress 2010では早くも派生モデルが発表されたが、日本における新たなスマートフォン市場の構築はまさにこれから。同社が、実質“iPhoneだけが売れている”この新市場に斬り込み、橋頭堡が築けるかが、今回のXperiaにかかっている。
そこで今回のMobile+Viewsでは、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ 代表取締役社長の仲井一雄氏と、東京エンジニアリング本部長の池上博敬氏にインタビュー。Xperiaの狙いと勝算を聞いた。
ITmedia(聞き手:神尾寿) Xperiaは、グローバル仕様のスマートフォンです。日本では長らく“キャリア向けの独自仕様端末”が中心で、ソニー・エリクソンもau向けにそのような端末を作っています。今回のXperiaは、それら国内仕様ケータイとは大きく性格が異なるわけですけれども、ソニー・エリクソンにとってXperiaはどのような位置づけになっているのでしょうか。
仲井一雄氏 全社的な位置づけでいいますと、Xperiaはソニー・エリクソンのグローバル戦略を担う重要なモデルになっています。2009年、ソニー・エリクソンの業績は芳しくなかったわけですけれども、その状況下で投入する「起死回生のモデル」がXperiaです。グローバル市場を席巻するべく、もっとも先進的な技術を多数盛り込みました。
日本市場という観点では、今回はNTTドコモ向けに投入する形になります。(Appleの)「iPhone 3GS」以降、日本国内のスマートフォン市場も拡大していますし、それに応じてオープンなAndroidを受け入れる素地もできつつあります。市場の受容性も高くなってきているということで、日本にも戦略的にXperiaを投入します。
ITmedia 国内外のスマートフォン市場の現状を、どのように捉えていらっしゃいますか。
仲井 マーケットによってスマートフォンの普及率は異なります。例えば、北米はスマートフォンの普及率が高くなってきていますが、アジア地域は北米ほどの勢いや普及率ではない。しかし、伸び率という観点では、スマートフォンの構成比は今後さらに高くなっていくでしょう。
日本という地域市場で見ますと、「iPhone 3G」の発売以降、スマートフォン分野をとりまく環境が大きく変わりました。普及のペースが上がっていますので、今後さらに普及していくと見ています。
ITmedia スマートフォン市場を見るときに、「規模の拡大」とともに、ユーザー層という「質的な変化」も重要になります。
仲井 そうですね。ユーザー層も変わってきています。それが顕著なのは、“電車の中で、iPhoneユーザーをよく見かけるようになった”ということ。しかも、ギークというか、ガジェット好きの先進的なユーザーではない人がiPhoneを使っている。普通の女性が使い始めている。
ITmedia 2009年後半からの伸びで、女性のiPhoneユーザーは増えましたね。女性誌でiPhone特集が組まれることも増えて、若くて流行に敏感な女性がiPhoneに飛びついていますね。
仲井 あれはね、恐ろしいというか、悔しい(苦笑) しかし、iPhoneが女性にも受け入れられていることを見れば、スマートフォンがあらゆるセグメントに浸透し始めてきていることが分かりますね。
ITmedia iPhone 3GS発売以降、日本でもiPhoneのような新しいタイプの“コンシューマー向けスマートフォン”が売れ始めている。このような市場環境の変化は、Xperiaの追い風になりそうですか。
仲井 日本市場への投入時期としては、いいタイミングになりました。お客様は、これまでのケータイとは違う楽しみ方や価値に目を向け始めています。そこに向けてXperiaは作られているので、発売時期はよかったと思います。
ITmedia 今回のXperiaのターゲットユーザー層はどのように設定されているのでしょうか。
仲井 もちろんターゲット層は広い方がいいのですけれども、やはり当初はデジタルガジェットに関心度の高いコアユーザー層からになると考えています。デジタルエンターテインメントを使いこなしている人たちですね。
我々の社内では、そういうユーザー層を「デジタルエンターテインメントジャンキー」と呼んでいるのですが、SNSを多用するなどして新しいライフスタイルを送っている人たちです。彼らのニーズは、Xperiaの開発コンセプトである“コミュニケーション&エンターテインメント”とも近いのではないかと考えています。
ITmedia 最近の言葉でいいますと、デジタルネイティブという新しい世代であり、彼らのライフスタイルに近そうですね。水や空気のようにネットを当たり前のインフラとして捉えて、そこでのサービスをごく自然に使いこなす、という。
仲井 そうです。TwitterやFacebook、mixiなどを日常生活のツールとして活用している人たちですね。彼らのライフスタイルにとってXperiaは最適なツールになるでしょう。
また、Xperiaはブログ連携やビジネス向けの機能も充実していますので、そういった先進的なユーザー層以外に、一般的なケータイユーザーやビジネスユーザーにも徐々に浸透していけるのではないかと思っています。Xperiaは、新しい市場を作れるのではないかと考えています。
ITmedia 一方で、Xperiaはワンセグやおサイフケータイなど日本独自のサービスには対応していません。これはiPhoneの時にも言われてきたことですが、これら日本独自サービスに対応しないことへの販売面での不安はありますか。
仲井 ワンセグやおサイフケータイなど、日本固有の機能やサービスが(スマートフォンに対して)ある種の参入障壁になる、というのは以前から言われていますが、それをブレークスルーしたのがiPhoneですね。iPhoneが風穴を開けてくれました。ですから、あまりそれらに対応しないことをネガティブに捉えてはいません。
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