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» 2010年04月26日 01時09分 UPDATE

2010年度はモバイルインフラと新成長分野への取り組みを強化――KDDIの小野寺氏

KDDIが2009年度の決算を発表。携帯電話事業は音声ARPUの減少が響いて減収減益となった。同社社長の小野寺氏は2010年度の取り組みとして、EV-DO Rev.Aのマルチキャリア化によるインフラ面の強化や、新たな成長分野の強化などを挙げた。

[後藤祥子,ITmedia]
Photo KDDI 代表取締役社長兼会長の小野寺正氏

 KDDIは4月23日、2009年度の決算を発表した。移動通信事業と固定通信事業を合わせた売上高は、前期比1.6%減の3兆4421億円、営業利益は前期比0.6%増の4439億円で減収増益という結果だった。

 移動体通信事業については、売上高が前期比2.5%減の2兆6501億円、営業利益が前期比3.5%減の4837億円で減収減益。すでに発表しているとおり、端末販売が予想を上回って販売コストが増加したことや、ユーザーのシンプルコースへの移行に伴う音声ARPUの減少などが影響した。

 第4四半期の純増数は計画を27万上回る103万を達成し、3月末時点の累計契約数は3187万(累計シェアは28.4%)。通期の端末販売台数は第4四半期が310万台と好調に推移したことから1020万台となった。販売手数料は、秋冬モデル以降にミッドレンジ端末のラインアップが充実したことで端末調達コストが低減され、第4四半期も3万円に留まった。

 2010年度の見通しについては、連結ベースの売上高は前期比21億円減の3兆4400億円、営業利益は11億円増の4450億円のほぼ横ばいと予測し、移動体通信事業の営業利益は、前期比で537億円減となる4300億円と見込む。

 減益と見る理由の1つは、ARPUがさらなる減少に向かうと予想されるためで、前期比400円減となる5010円と見込んでいる。もう1つは、800MHz帯の周波数再編に伴うトライバンド端末への移行促進策に800億円を投下することが挙げられる。3月末時点でトライバンド端末は全体の67%にあたる2067台まで普及しており、対応していないユーザー向けにはダイレクトメールで案内しているが、今期は移行の促進を強化し、機種変更時の手数料無料化や、安価な端末の提供などの施策を打つ計画だ。

 なお、累計契約数は前年比93万増の3280万、端末販売台数は40万台増の1060万台を見込むとしており、販売手数料の平均単価は2万900円台に抑えたい考えだ。

sa_kddi02.jpgPhoto 第4四半期の連結と移動通信事業の決算概況

sa_kddi05.jpgPhoto 純増数と解約率の推移

sa_kddi07.jpgPhoto 販売手数料とARPUの推移

sa_kddi09.jpgPhoto シンプルコース契約数の推移と、800MHz帯周波数再編に向けた移行促進策

音声ARPUの減少を補う施策は

 移動通信事業の営業利益が減少している主な要因についてKDDI 代表取締役社長兼会長の小野寺正氏は、ユーザーに端末代金を負担してもらう代わりに月々の通信料を割り引く「シンプルコース」への移行が進んだことから、音声ARPUが下がっているためだと説明する。第4四半期は販売手数料を3万円台に抑えるなど削減に努めたが、売上の減少をカバーしきれなかった。

 今期は、ネットワーク関連費用や販売関連コストの抑制、経費の抑制に取り組むほか、中長期的にはインフラ面の強化や新規成長分野への取り組み強化で減収分を補いたい考えだ。

 インフラ面の強化は、下り最大9.3Mbpsの通信速度を目指して今期から、現行システムEV-DO Rev.Aのマルチキャリア化に着手。EV-DO Rev.Aシステムのソフトウェアアップデートで対応できるため、コストを抑えながら周波数帯の効率的な活用が可能になるとともに、LTE導入までの競争力を維持できると説明した。ほかにも、屋内でのデータ通信利用の利便性向上に向け、Wi-Fiやフェムトセル導入の準備を進める。

sa_kddi12.jpgPhoto インフラ強化の一環としてEV-DO Rev.Aのマルチキャリア化に着手(左)。モバイルブロードバンド時代には、モバイル回線のバックボーン回線やフェムトセル用途で固定回線がますます重要になると小野寺氏(右)。KDDIでは移動通信の収入の落ち込みを予想して、固定アクセス回線による増収に向けた施策を打ってきたという。「これまでの戦略は間違っておらず、今後も推進する」(同)

 新たな成長分野としては、“通信トラフィック”に依存しない事業領域を拡大するとし、具体的な事業として「コンテンツ・メディア事業」「海外事業」「WiMAX」「金融ビジネス」「J:COMとの事業提携」を挙げた。

 コンテンツ・メディア事業は、EZナビウォークやEZニュースEXのように他企業と一緒に事業を立ち上げ、利益も分け合う形のビジネスやEコマース、回収代行、広告などを指す。この分野はパケット定額制の普及に伴って急成長しており、売上高は前期比31%増の586億円に達した。今期はコンテンツ分野のノウハウを生かして新たなビジネスの開発や事業領域の拡大に取り組み、売上高721億円を目標に据える。新たなアライアンスも検討しており、「今年も何かが出てくる」(小野寺氏)見込みだ。

 海外事業については、企業が海外でもワンストップでICTソリューションを利用できるようにするための体制を強化するほか、新たに開発途上国のWiMAX事業展開に向けた通信インフラの構築や、米国の移民向け携帯電話事業など、成長が見込まれる市場に参入することで、海外でも事業領域の拡大を図る。

 KDDIが出資するUQコミュニケーションズのWiMAX事業は、WiMAXと3Gのデュアルデータ通信カードの発売を予定。サービス展開などの同社の取り組みを支援し、2012年度の単年度黒字化を目指す。

 金融ビジネスは、今年の7月に開業2年目を迎える「じぶん銀行」と、2月にあいおい損害保険と準備会社を立ち上げたモバイル主体の損保会社の事業を推進。じぶん銀行は、ネット専業銀行としてサービス開始から最速の100万口座到達が視野に入っているなど、順調に推移しているという。

sa_kddi14.jpgPhoto 新たな事業領域として期待されるWiMAXと金融事業

 ジュピターテレコム(J:COM)との事業提携では、FMBC(Fixed Mobile and Broadcast Convergence、固定と移動、通信の融合)分野における両社のシナジー効果を可能な限り早期に実現するため、ワーキンググループを設置。通信事業とCATVのリソースを融合したFMBCサービスの提供で、顧客満足度の向上を目指す。

 小野寺氏は、同社が筆頭株主であるジャパンケーブルネット(JCN)と、(同社が出資する)J:COMを合わせると、日本のCATVの約半数を持つことになるとし、CATV資産のモバイル活用に期待を寄せる。「FMC(固定網とモバイル網の融合)で解約率が下がり、映像も加わるとより下げられる。(CATVとの連携は)FMBCにとって、とても良い」(小野寺氏)

Photo ジュピターテレコムとアライアンス委員会を設置。4つのワーキンググループを設け、提携内容について検討を進める

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