「ベンチマーク」「CPU」「GPU」「エコシステム」で読み解くSnapdragonの今:Qualcomm Mobile Benchmarking Workshop(1/3 ページ)

» 2012年08月02日 18時22分 公開
[田中聡,ITmedia]

 スマートフォンやタブレットの性能を測る指標の1つとなるのが「ベンチマークテスト」だ。ベンチマークアプリはGoogle Playにも配信されており、一般ユーザーが広く試せる環境が整っている。しかし使用するベンチマークテストによって端末ごとのスコアが変わることもあり、絶対的な指標となりうるベンチマークが存在しないのも事実だ。Qualcommが米サンフランシスコで7月24日(現地時間)に開催した「Qualcomm Mobile Benchmarking Workshop」では、同社のプロセッサー「Snapdragon S4 APQ8064」のリファレンス機をテストできる機会が設けられた。これに先立ち、ベンチマークの重要性や方法論、そしてSnapdragonにおけるCPU「Krait」とGPU「Adreno 320」の優位性について、キーパーソンが語った。

すべての分野をベンチマークテストするのは難しい?

photo ジョン・ペディ氏

 まずはデジタル機器の市場調査やコンサルティング、製品テストなどを行うJon Peddie Research(JPR)の社長 ジョン・ペディ(Jon Peddie)氏が、モバイルベンチマークテストのトレンドについて説明した。スマートフォンは非常に多くの用途で使われており、その内容はAR、カメラ、ゲーム、ナビゲーション、電子書籍、オンラインバンキング、Webブラウジングなど多岐にわたる。同社が2010年9月と2011年5月に実施したスマートフォンの用途についての調査では、テキストメッセージの送信、写真の撮影と送付、ネットサーフィン、メールの閲覧、SNSの利用などが上位に挙がった。ゲームについては有料(26%と22%)よりも無料(51%と50%)の方が利用意向が高いという結果が出ている。

 一方でペディ氏は、限られた分野のテストをすることで、誤った(偏った)特徴付けをしてしまう恐れがあることを指摘した。その解決策として、同氏は「Basemark OS」「Electopia」「Vellamo」などの的確なベンチマークアプリを使うことを推奨する。これらのベンチマークテストは項目ごとにトータルのスコアを出し、ユーザー体験の点から評価するので、デバイス間で比較が可能になるとしている。ただしすべての要素をテストすることは難しいので、ペディ氏は「ユーザー体験と正しいベンチマークを選ぶこと、そしてシステム、カメラ、ビデオ、ブラウジングなど、どの分野に焦点を当てるかが重要」と説明した。これらを加味した上で、同氏は「AR(拡張現実)を活用したベンチマークテストが、ジャイロスコープ、マイク、カメラ、GPSなどさまざまなセンサーが使われることから、スマートフォンをトータルで評価できる手段になりえる」との考えを示した。

photo スマートフォンの利用動向に関するJPR社の調査

Snapdragonが持つ“非同期”のメリットとは

photo トラビス・ラニアー氏

 続いて、CPUプロダクトマネジメントのディレクター、トラビス・ラニアー(Travis Lanier)氏が、Snapdragonの性能を説明した。Qualcommの現行プロセッサーは第4世代の「Snapdragon S4」で、S4はスペックに応じて「Play」「Plus」「Pro」「Prime」に分類される。今夏に発売された最新モデルの多くに採用されている「MSM8960」などのチップはPlusに含まれ、最大1.7GHzのデュアルコアCPUや、Adreno 305までのGPUを持つ。CPUもは第3世代の「Scorpion」から第4世代では「Krait」に進化している。Scorpion、Krait、そしてCortex-AなどのCPUのアーキテクチャはARM v7 命令セットに基づいており、これが(チップにおける)エコシステムの崩壊を防ぐとしている。

 スマートフォンでも「シングルコア」「デュアルコア」「クアッドコア」などCPUのコア数が話題に上ることが多い。同じコアなら複数ある方が性能は高いのは当然だが、性能の優劣はコア数のみで決まるわけではない。ラニアー氏は1クロックあたりの命令実行数(IPC)を増やすには、「CPUを増やすマルチプロセッシング」と「命令実行数を広げ、複数の命令を並行処理させるスーパースケーラー」という2つの方法があると説明する。ラニアー氏は、コアを増やすことよりも、命令実行数を広げる方がアプリケーションにとってメリットがあると話す。また他社のクアッドコアCPUでは1コアあたりの実行命令数は「2」だが、Snapdragon S4の「MSM8960」(デュアルコア)と「APQ8064」(クアッドコア)が採用するKraitの場合は「4」だと説明し、コア数だけが重要ではないことを同氏は強調した。

photophoto Snapdragon S4のラインアップとアーキテクチャー
photophotophoto 同じCPUならコア数が多い方が性能は高い(写真=左)が、異なるCPUのデュアルコアとクアッドコアはどちらが優れているかは一概には言えない(写真=中)。Kraitは、1コアあたりの実行発行数が「4」となっている(写真=右)

 他のプロセッサーにないSnapdragonの特長の1つとして、ラニアー氏は各コアが非同期で動作する仕組みを紹介した。非同期で動作することは「aSMP=Asynchronous Symmetric Multiprocessing」と呼ばれている。

 ラニアー氏は非同期であることは“負荷分散”に優れていることがアドバンテージだと説明する。並行して複数の処理を行う際に、他社のプロセッサーでは個々のCPUが連動して動いてしまうので無駄な負荷がかかり、結果として全CPUのパワーをフルに使ってしまうことがある。一方、ScorpionやKraitではコアごとに電圧やクロック周波数を制御できるので、負荷がうまく分散され、トータルでの負荷を抑えられる。また、理論的には4コア/2コアのうち1コアだけを動かして他のコアの動作を完全に停止させることも可能だ。つまり非同期で動く方が消費電力を抑えやすくなるわけだ。その具体例として、同氏はMSM8960と他社のプロセッサーを搭載した端末で、ブラウザ上で映像をストリーミング再生した際の負荷を比較した。その結果、ストリーミング(オーディオ)の部分でMSM8960の方が他社製品よりもCPUの負荷を33%抑えられたという。

 このほか、非同期で動作することで発熱が少ないことをラニアー氏は説明した。バターを載せた実験でもおなじみだが、他社のプロセッサーに比べ、Snapdragon S3とS4の方が発熱していないという同社の調査結果も出ている。発熱をすればバッテリーの消費量も増すので、熱をいかに抑えるかは省エネの観点からも重要だ。

photophoto ScorpionやKraitを搭載したSnapdragonは、コアが非同期で動くので、負荷をうまく分散させられる
photophoto ブラウザ+ストリーミングのテストでは、他社のCPUよりも負荷が少ないという結果が出ている(写真=左)。SnapdragonのCPUは、発熱しにくいという特性もある(写真=右)
photophoto ブラウザではCPU、GPU、モデムなどチップのさまざまな要素が使われる(写真=左)。SoC(システムオンチップ)は、CPU、GPU、DSP、センサー、モデム、メモリなどが統合されて出来上がっている(写真=右)
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