2月にスペイン・バルセロナで行われた「Mobile World Congress 2009」。現地入りした記者は、メインの連絡用にNTTドコモの富士通製端末「F-01A」を持参したので、取材の合間に海外でもケータイGPSが利用できるのか試してみた。
F-01Aはドコモの端末の中でも少ないGPSの単独測位に対応する端末だ。GPSはGPS衛星からの信号をキャッチして現在位置を測位するが、携帯電話では事前にGSP衛星の位置をキャリア網から入手するネットワークアシスト方式(A-GPS)が一般的。とくに国内(キャリア網の圏内)でGPS測位をする場合、測位にかかる時間が短く、精度が高いネットワークアシスト方式が用いられる。理論上、単独測位方式であれば端末が自力でGPS信号をキャッチして現在地を割り出すので、圏外でも位置情報を知ることができる。
ということで、Mobile World Congress 2009の会場となった場所と、バルセロナの有名な観光地であるサグラダ・ファミリア教会、行き帰りの飛行機を乗り継いだドイツのミュンヘン国際空港でGPS測位を試みた。ところが、3カ所ともエラーとなり測位できなかった。
特にMWC会場とサグラダ・ファミリア教会(の隣の公園)は見晴らしの良い場所にあり、空を遮るものがない環境。また空港は、ターミナル内だがガラス一枚を隔ててすぐ滑走路というシチュエーションだった。もちろん、それぞれの場所では端末の向きや持ち方を変えるなどして数回チャンジしてみたが、GPS測位はできずじまい。出展側としてMWCに参加していたF-01Aユーザーに話を聞く機会があったが、この方も「いくらやってもGPS測位ができない」と不思議がっていた。
帰国後にドコモ広報に問い合わせたところ、「ドコモケータイのGPS機能は国内で使うことを前提にしており、海外での利用は想定していない。端末がそれ単体でGPS測位できる仕様でも、必ずしも測位できるとは限らない」ということだった。ドコモのGPSサービスを紹介するWebサイトには、「単独測位方式では、ネットワークアシスト方式に対応していない海外でも、オープンスカイ(周囲に遮蔽物のない比較的上空の開けた環境のこと)であれば時間をかけて測位できる場合があります」と記載されているが、できないことのほうが多いというニュアンスが多分に含まれているようだ。
GPSを元にしたナビゲーションサービスはキャリア網を通じて配信されるため、圏外で現在地を測位できても活用できるシーンは少ない――。こうした考えなのか、ドコモのGPS端末は単独測位に対応しないものが多い。2009年3月末現在では、F-01A/F-03A/F906i/F905i/F904i/F903i/らくらくホンV/らくらくホン プレミアム/らくらくホンIVS/らくらくホンIV/キッズケータイF-05A/キッズケータイF801i/F-06A/F905iBiz/F903iBSC、D905i/D904i/D903i、SA800i/SA702i/SA700iなどが単独測位に対応しているが、現行機種では富士通製のハイエンドケータイしかサポートしていない。
またF-01Aのようにスペック上は海外でもGPS測位ができる機種でも、測位まで時間がかかったり、今回のようにGPS衛星からの電波をとらえられずにエラーになるなど、確実性はかなり低い。
海外や圏外でのGPS測位をサポートしないドコモに対し、海外でもGPS情報を使える端末を増やしているのがauだ。2007年の夏モデルからKDDIがStandaloneGPS(完全自立測位)と呼ぶ機能を搭載した端末を展開。国内外を問わず、携帯電話の現在位置を示すEZガイドマップや、あらかじめ地図を端末内にセットすることで災害時など通信インラフが途絶えた状態でも現在地と避難経路を表示できる災害ナビも提供している。
なおStandaloneGPSに対応するのは、Walkman Phone, Premier3/Cyber-shotケータイ S001/Woooケータイ H001/フルチェンケータイ T001/CA001/SH001/P001/AQUOSケータイ W64SH/W64S/Woooケータイ W63H/EXILIMケータイ W63CAの11機種だ(2009年3月末現在)。ただドコモの単独測位対応端末と同じく、海外での測位には時間がかかったり不安定になるので、過信は禁物といえるだろう。
またソフトバンクモバイルのGPS端末も、原則的に海外でのGPS利用に対応している。ただし、S!GPSナビのメニュー画面から表示される「現在地地図」は利用できないので、プリセットされたナビアプリ(NAVITIME)を利用することになるという。
どの端末を使うにせよ、GPSの測位とは別に地図データのダウンロードにはパケット料金が発生する。繰り返しになるが、海外ローミング時のパケット料金は高額になりがちなので、その点は注意が必要だ。
ケータイでGPS測位をする目的といえば、やはり現在地を調べたり目的地までの経路を確認するなどのナビゲーション用途が一番だろう。旅行や出張で不案内な土地へ行く海外ならなおさらだ。しかし、測位と同時に地図のダウンロードも行うためパケット料金が発生してしまう。国内(キャリアの自網内)なら定額料金が適用されるが、海外ローミング時のパケット料金は完全従量制のため青天井。緊急時ならともかく、国内のような感覚で使うのは今のところ現実的ではない。
ナビゲーション以外の目的では、ケータイで撮った写真にジオタグを埋め込むというのもある。これならパケット通信も発生せず、また写真と同時に位置情報が残るので、海外旅行時に使うには向いているのではないだろうか。ジオタグが埋め込まれた画像はPCへコピーし、対応する地図ソフトやWebサービスへ登録して、マップ上に表示することができる。ジオタグは後から任意の緯度と経度を書き込むこともできるが、撮ったその場で追加するほうが後々手間も少なくて済む。
スマートフォンの多くは世界戦略モデルとしてさまざまエリア向けに開発されるためか、単独測位に対応したものが多いようだ。ソフトバンクモバイルが発売するiPhone 3GやHTC製のTouch Diamond、Touch PROは単独測位に対応する。ただし、海外で対応したGPSサービスが受けられるかどうかは、それぞれのアプリや地図ソフトによって左右される。
またネットワークアシストを受ける場合や、地図データをダウンロードする際に携帯電話網以外の通信サービスを使えるのも利点だ。今回のMobile World Congress 2009取材にはiPhone 3Gも持って行ったのだが、現地の無線LANサービスを使うことで、ローミング先のパケット通信を一切介さずにGPSのネットワークアシストやナビゲーションサービスが利用できた。
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