「そんなことできるわけない」、それでも“ケータイらしさ”を貫いて完成した「IS03」開発陣に聞く「IS03」(2/2 ページ)

» 2010年12月28日 20時22分 公開
[田中聡,ITmedia]
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メールと文字入力をさらに使いやすく

photophoto 歩数計ではエクササイズ量、歩数、消費カロリー、脂肪燃焼量が表示される(写真=左)。履歴も見られる(写真=右)

 ワンセグ、赤外線、おサイフケータイはもちろんだが、これまでのauケータイでも利用できたオムロンの歩数計を内蔵しているのも便利なポイントだ。この歩数計では「走行時の一歩」と「歩行時の一歩」を区別し、適切なエクササイズ量を割り出してくれる。端末を振るだけでは歩数がカウントされないので、より正確に計測できる。また、従来のauケータイでは1カ月分の歩数履歴しか残らないが、IS03では2年分の履歴が保存される。「歩数計は専用のマイコンを使っており、CPUはスリープさせたままカウントするので、低消費電力を維持したまま常時計測できます」(中田氏)

 メールアプリは、IS01ではEZメール、Cメール、PCメールを1つのアプリに統合していたが、IS03ではケータイから乗り換えても違和感なく使えるよう、EZメールとCメールは「メール」アプリ、PCメールは「PCメール」アプリに分けている。「受信したCメールには『C』のアイコンが付くなど、使い勝手もケータイに近づけています。また、自分あてにテストメールを送れるよう、あて先にプロフィール(自分のメールアドレス)を引用できるようにしています」(中田氏)

 日本語入力システムの「iWnn」は他社製品と共通の部分が多いが、シャープ独自の機能として、カーソルの移動回数と連動して変換候補を絞れる「ワイルドカード」や、誤入力の補正機能を備えた。補正機能では、例えば「あすた」と打って「補正」を選ぶと、「明日」が候補に現れるといった具合だ。

photophotophotophoto 「メール」アプリの受信メール一覧。Cメールには「C」のアイコンが付く(写真=左端)。あて先入力ではプロフィールの引用もできる(写真=左中)。文字を入力して「→」キーを押すと、押した回数だけ変換候補が絞られる。例えば「あ」と入力して「→」キーを4回押すと、「ありがとう」などが候補に出る(写真=右中)。入力後に「補正」を押すと、正しいと思われる他の候補が出る。写真は「あすた」と入力後に「補正」を押した後の画面(写真=右端)

 ちなみに、シャープケータイといえば、日本語入力システムでは「ケータイShoin」がおなじみだ。ケータイShoinにはT9のように「あ」行の言葉だけで変換できる「ワンタッチ変換」など便利な機能を備えており、スマートフォンへの搭載も期待されるが、今のところその予定はないという。「きめ細やかな機能は段階的に進め、まずは基本的な機能を充実させていきます」(中田氏)

 隠れた便利機能として、ロック画面の状態でシャッターキーを長押しするとフォトライトが点灯し、音量調節キー(下)を長押しするとマナーモードの設定ができる。

 IS01よりも“ケータイらしい使い勝手”を目指した一方で、省かれた機能もある。プリインストールされている「Documents To Go」は、IS01ではファイルの簡易編集やPDFの閲覧ができたが、IS03では「一般ユーザーを対象にしたため」(中田氏)、PDFの閲覧機能は省いている。PDFファイルはAndroid マーケットから「Adobe Reader」(無料)をインストールすれば閲覧できるが、知らないユーザーは戸惑うかもしれない。

 もう1つサービス面で惜しいのが、グローバルパスポート(CDMA)に対応しているものの、「開発期間と本体サイズの問題」(中田氏)からGSMローミングには対応していないこと。IS01はそもそもグローバルパスポートに対応していなかったので、CDMAローミング可能になったことは進化点だが、003SHが3G+GSMローミングを利用できることを考えると、やや残念だ(SH-03CはW-CDMAのみ対応)。

OSアップデートは重要な課題

photo シャープ 通信システム事業本部 パーソナル通信第三事業部 商品企画部 部長 高橋洋之氏

 ここ最近は、AndroidのOSアップデートの話題を見聞きすることが増えた。 前モデルのIS01ではAndroid 2.1へのアップデートを行わないことが発表されて話題を集めたが、IS03は来春にAndroid 2.2へのアップデートを予定している。中田氏が「アップデートは大きな課題」と話すように、メーカーにとってもOSアップデートは重要事項だ。

 ソフトバンクの003SHは発売当初からAndroid 2.2を採用しているが、IS03でも2.2を採用することは検討しなかったのだろうか。「IS03はAndroidの標準プラットフォームをなるべく生かした形で開発しています。完成度を上げるためには開発期間が必要なので、まずは2.1を採用しました。ケータイに慣れている方でも安心して使ってもらえるスマートフォンを早く出すことを優先しました」と中田氏は話す。「アップデートの予定は初めから考慮していた」とのことなので、UIも含め、2.2でどこまでバージョンアップするのか期待したい。

 シャープはAQUOSケータイやAndroidベースの「点心」OSを採用したスマートフォンを中国に投入するなど、海外展開も積極的に行っている。IS03も海外に投入することが期待されるが、高橋氏は「IS03をベースにしたモデルを海外で出す可能性はありますが、日本仕様のワンセグやFeliCaの扱いをどうするかを決めなければなりません」と慎重な姿勢。世界でGALAXY Sを発売しているSamsung電子は、韓国向けには携帯向けデジタルテレビ放送の「T-DMB」を搭載しているが、日本向けにはT-DMBを省いたものを開発している。であればシャープも……と思うのは安直かもしれないが、日本以外の国にローカライズされたIS03も見てみたい。

 IS03で順調なスタートを切り、春モデルとして小型の「IS05」も発表されているが、今後のモデルにも期待が集まる。次の発表は夏モデル……となると、防水性能の実装も予想される。「今後は市場の要望とKDDIさんの戦略を考える必要があります」と中田氏は言葉を選ぶが、「Androidなので、まずタッチパネルは必須。そこで快適に操作をするために液晶画面を大きくすると、どうしてもサイズが増すので、どこまで薄くコンパクトにできるかは課題の1つです」と話す。「Androidを生かした新しい使い方、タブレットのような端末もありかもしれません」

 「ソフトとハードの両方でここまでぶつかり合ったのは久々」と中田氏が話すように、IS03では目標とするサイズの実現と、ケータイらしく使えるソフトウェアの実装にこだわり抜いた。IS03を手に取れば、そんなシャープの技術の粋を感じられるはずだ。

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