―― 今回のMWCでは、クアッドコアCPUを搭載したスマートフォンも発表されています。この状況をどうご覧になっていますか。
大澤氏 「想定内」だと思っています。テクノロジーレースは基本的には我々も消化していかないといけませんし、トレンド機能はきちんと押さえないといけません。全体の商品戦略のタイミングがある中で、どの技術を組み合わせるのが最適かを常に考えています。開発スピードと市場状況を天秤にかけたときに、(Xperia S、P、Uは)今回のスペックがベストだと考えました。「クアッドコア」はマーケティング用語としては魅力的ですが、我々はスピードを提供したいのではなく、いかにエンターテインメント要素を楽しんでいただけるかを重視しています。エンターテインメントを快適に楽しめるのなら、クアッドコアでもデュアルコアでもいい、ということです。
―― 日本ではXperia acro/acro HDなど独自モデルも投入しています。あらためて、日本市場への取り組みについて教えてください。
大澤氏 テクノロジーとトレンドにおいて、日本は米国と並ぶ最先端市場と位置づけています。米国はAndroidのエコシステム、人口の多さという観点では大きなポテンシャルを持った市場です。日本はLTEの導入スピードも早いですし、品質に対する日本の要求レベルは高いので、そこに合わせてきちんと商品を作り込んでいけば、グローバル端末の質が上がることにつながります。
―― 日本でもLTEスマートフォン投入の期待が高まります。米国では「Xperia ion」を発表していますが、日本でLTE対応スマートフォンをまだ投入できない理由はあるのでしょうか。
大澤氏 これはタイミングの問題です。日本への(LTEスマートフォンの)投入については鋭意検討していますが、市場の動向を見計らいながら、事業者様と検討していくことになります。(LTEスマートフォンを)いつ出すのが、事業者様のポートフォリオとして効果的なのかも1つの判断材料になります。
―― 現在のスマートフォンはスペック競争に陥っている感がありますが、Sony Ericssonのころから、御社の製品はユーザー体験に重きを置いていると感じます。
大澤氏 そうご理解いただいて構いません。言葉は悪いですが、テクノロジーレースはそれほど長くは続かないと考えています。技術の先を見据えた中で、ソニーブランドと商品イメージ、お客様に提供できる価値は何かを考えています。1つは端末のデザイン。誰もが認めるアイコニックなデザイン、その背後にあるソニーに対する「なんかワクワクドキドキする」という期待。そのエンターテインメント性をきちんと位置づけてブランディングをしていきます。「これ格好いいでしょ」と見せつけられるのもエンターテインメント体験の一部だと思っています。
―― Samsung、HTC、Huaweiなどさまざまな競合メーカーがありますが、Sony Mobileならではの強みはどこにあるとお考えでしょうか。
大澤氏 先ほども述べましたが、アイコニックなデザインが1つの武器です。(MWCの)他のブースも少し回りましたが、多くのスマートフォンのデザイン要素が薄くなっていると感じました。ボディが薄く画面を大きくすると、デザインの余白が消えて同じようなフォルムになってしまいます。これは仕方ないことではありますが。我々はそこに一石を投じています。こうしたアプローチは他社に対する武器だと思っています。
もう1つが、コンテンツ、サービス、端末を連携させて、他社にない体験をお届けできるのがSony Mobileだと思っています。ソニーグループの資産を活用することで、ゲーム、音楽、映画、ブックなどのコンテンツをいかにスマートフォン上で楽しんでもらえるかを考えていきます。
―― となると、最大のライバルは(同じくコンテンツから端末までを連携させている)Appleということなりますね。ユーザー体験を重視する姿勢もiPhoneと通じるものがあります。他社の製品は意識しているのでしょうか。
大澤氏 あまり意識はしていませんが、「人々の好奇心をいかにくすぐれるか」がソニーのポリシーです。人々の生活の中に入り込んで、自然と使っていただける製品を目指していきたいです。
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