ARを日常に広げる「SATCH VIEWER」、聞こえ方を変える「新聴覚スマートフォン」 KDDIが披露Mobile IT Asia(2/2 ページ)

» 2012年03月14日 10時00分 公開
[園部修,ITmedia]
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アプリが作れなくてもAR体験が活用できる「モバイルオーサリングツール」

ITmedia 非常に興味深いお話です。とはいえ、アプリの開発などを伴うと、普通の人にはハードルが高いように感じます。

伊藤氏 KDDIとしても、単にSDKを無償配布するだけでなく、どういう使い方をすれば、ARのツールが本当に実便益がもたらせるのかを探していきたいと考えています。ですからKDDI自体もサービスを提供していく計画です。どこに行っても、かざしてAR体験ができるような世界を1日でも早く実現できるようにしたいですね。

 いい技術があっても、誰も手に取れないものでは良くないと思います。CPのような企業だけでなく、大学の研究室や一般のクリエイターなど、アプリを開発するほどではないものの、アイデアがあって、簡単に実現できる環境があればおもしろいものが作れるよ、という人にもアプローチできるような手段を強く意識しました。ですから、SDKにはサンプルアプリケーションも多数あります。

PhtoPhto SATCH VIEWERの画面と対応アプリを紹介する「SATCHApps」

 また3月2日に提供を開始したSATCH VIEWERでは、コンテンツだけ提供していただくような形でも参加できる環境を用意しました。SATCH VIEWERは簡易ブラウザなので、カメラをかざすと何か出てくる、という程度のことならとても簡単に実現できます。Webクリエイターのような、アプリ開発者ではなくても、モバイルサイトなどにAR機能を加えていけるようになります。

 今後は仕様を公開して、Webサイトとの連携を深めていきます。ARとWebの世界は、これまで断絶していました。どちらかが歩み寄らないと、2つの世界はなかなか1つになっていかないと思っています。Webページにボタンを用意し、それを押すとビューワが立ち上げられたり、位置情報を利用してタグを表示したり、ビューワの中に配置するボタンやタグの形、詳細画面の見せ方などをJavaScriptで規定できるようにしたりします。これは簡単ではないと思いますが最終的にはWebKitにSATCH VIEWERのフル機能版で規定している仕様を組み込んでもらい、どのブラウザでもモバイルサイトのAR機能が呼び出せるくらいにしたいと思って準備をしています。

清水氏 SATCH VIEWERの中には「モバイルオーサリングツール」を用意しています。「デコAR」という仮称で呼んでいますが、写真を撮って、その写真を認識対象として、その上に載せる映像やテキスト、写真などをアプリ上で配置するだけで、ARコンテンツが簡単に作れるようにしました。URLをSNSで送れば、受け取った人も同じAR体験が可能です。

PhotoPhotoPhoto SATCHのモバイルオーサリングツールを使用したコンテンツの作成イメージ。まず写真を撮影し、認識対象を設定。さらに「Text」や「Video」「Photo」など表示するオブジェクトを選択する
PhotoPhotoPhoto Textを選んだ場合、表示するテキストを入力する。さらに写真を追加。作成したコンテンツをSATCH VIEWERで表示するとこんな感じになる

 例えば年賀状やグリーティングカード、バースデーカードなどを認識させ、何か出てくるような仕掛けをしておけば、受け取った人がSATCH VIEWERでビデオメッセージを見る、といったことが簡単にできます。

ITmedia ARを日常にありふれたものにするには、一般の人でも面倒な手間なしにAR体験ができたり、簡単にARコンテンツが作れたりするといいですね。現状は、ARアプリを起動しても何も出てこなかったり、逆に情報が多すぎてなんだか分からない状態になったりすることが多いですが、ソーシャルサービス経由で知り合いからもらったものだったら、ビューアを開くきっかけなりそうです。

伊藤氏 セカイカメラが広く普及しなかったのは、フィルタリングがうまく実装できなかったからではないかと考えています。一般公開すると、どうしてもノイズが多くなります。モバイルオーサリングツールは一般公開ではなくURLを自分で通知する形にしていますが、これによって知り合い同士とか、関係のある人へ送る形になり、場が荒れない効果を期待しています。もちろん将来はアルゴリズムなどをしっかり作り、登録すると誰でも見られるような状態にしていくことも重要だとは考えています。

 またきっかけという意味では、SATCH VIEWERではQRコードも読めるようにしているのも特徴です。QRコードは、日本ではだいぶ認識されてきていて、「かざして読み取るもの」だと思われるようになってきました。ユーザーとのエンゲージメントを深めるためのツールとして、QRコードも可能性はあると考えています。QRコードとARマーカーを別々に用意してもらうのは難しいとしても、QRコードをARマーカー代わりに使えれば、AR体験の入り口になり得ます。単純にURLを読み取ってもらうだけでなく、その上にエンターテインメント要素や実用的な要素を追加できれば、さらに花開く可能性があると思います。

多くの人に見てもらい、実用的なAR空間を作っていきたい

ITmedia Mobile IT Asiaの会場では、どのような出会いに期待していますか。

伊藤氏 ARは、大きな可能性を秘めていると思っています。どういう形だと実用的なAR空間ができあがるかは常に考えています。スマートフォンは、GPSはうまく使いこなせるようになってきましたが、センサーの1つとしてカメラがまだ活用し切れていません。カメラをモバイルサイトと融合させて行ければ、新しい世界が広がると思っています。ですのでまずはSATCH VIEWERのチャレンジとして、ARとWebの壁を取り除いた姿をお見せしたい。その上で、会場で多くの方と意見交換をし、面白いと思っていただけたら、一緒に何かやったりしていきたいです。

清水氏 今年もARには力を入れていきますので、ぜひいろいろな方とお目にかかりたいと思います。

電話のスタイルが変わる? 「新聴覚スマートフォン」

ITmedia 京セラの「音声振動素子」を利用し、KDDI研究所が開発した新聴覚スマートフォンは、Mobile IT Asiaの会場でどのような展示を行うのでしょうか。

Photo KDDI研究所 開発センター アプリケーションプラットフォームグループ 開発主査の若松大作氏

若松大作氏 Mobile IT Asiaでは、実際に音声振動素子を搭載した新聴覚スマートフォンを体験していただけるスペースを用意します。新聴覚スマートフォンは、通常のレシーバーのように耳に当てて音声を聞くことができるのはもちろん、耳栓やヘッドフォンをしていても電話の音声が聞こえるのが大きな特徴です。空気を振動させるのではなく、耳の中やヘッドフォンで振動を音に変えることができるので、音楽を聴きながらでも電話の声が聞こえるのです。これを実際に試していただけるようにします。

ITmedia 百聞は一見にしかず、といいますが、これは聞いてみないと分からないですね。

若松氏 音声振動素子は厚さが0.6ミリしかないので、端末の薄型化も可能です。また、昨今は防水端末が人気ですが、一般的な電話のレシーバーと違い、開口部が必要ありませんので防水・防塵性能も確保しやすいという利点があります。また、穴が必要ないということは、表面のガラスなどに加工をする必要もなくなりますから、コストダウンにもつながるはずです。

ITmedia 素子自体は京セラが作っていたものなんですよね。KDDI研究所も開発に携わっていたのでしょうか。

若松氏 デバイスは京セラさんが開発したものですが、KDDI研究所で電話の音声が聞きやすいようなチューニングをしています。実際に製品に搭載されるようになるまでにはもう少し時間がかかると思いますが、ぜひご覧になって可能性を見出していただきたいです。CEATEC JAPANでも展示をしましたが、もしご覧になっていない方がいらっしゃったら、ぜひブースで体験してみてください。

PhotoPhoto 新聴覚スマートフォンは実際に体験できる。耳栓やヘッドフォンをしていても、そのまま音声が聞けるのが特徴だ
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