第3回 バッテリーは持つ? 発熱はどう?――「ARROWS X F-10D」ARROWS X F-10Dの“ここ”が知りたい(1/2 ページ)

» 2012年08月14日 17時41分 公開
[Sho INOUE(K-MAX),ITmedia]

 au向け「ARROWS Z ISW11F」は本誌でも過去に取り上げた通り(参照記事)、発熱で機能停止しやすい問題を抱えていた。同機の兄弟機であるドコモ向け「ARROWS X LTE F-05D」では、ISW11Fほど発熱が問題になることはなかったが、LTE通信機能が思いのほか電力を消費するせいか、「想像以上にバッテリーが持たない」という評判がインターネットで散見された。

 今夏の富士通製「ARROWS X F-10D」と富士通モバイルコミュニケーションズ製「ARROWS Z ISW13F」では、熱放出に不利な防水・防塵の筐体に、発熱量がより大きい傾向にあるクアッドコアCPUを搭載していることから、発表当初から発熱面や消費電力面で懸念する声が少なくなかった。今回は、F-10Dのバッテリー関連と発熱状況について、筆者が使用した範囲でその疑問に答えていく。

photophoto 富士通製の「ARROWS X F-10D」。ボディカラーはBlack、Blue、Whiteの3色

質問:バッテリー容量は? Qiはどうやって実装されている?

photo 上がF-05Dの「電池パック F24」、下がF-10Dの「電池パック F27」。容量は1800mAh、電力量6.7Whと性能が向上している

 F-05Dに1400mAhの容量のバッテリーパックが採用されていた。iモードケータイと比べると大容量ではあるが、Xi(LTE)ネットワークだけでなく、FOMA(3G)ネットワークも同時に待ち受けることもあり、特にLTEと3Gが切り替わりやすい移動中にバッテリーが減りやすいと感じた。F-10Dでは、クアッドコアCPUを採用したこともあってか、F-05Dと比べて容量・電力量ともに向上したバッテリーパックを採用している。ただ接点の位置や数が従来とは異なるため、流用は利かない。

photo 容量が増えたことと、Qi(チー)用のコイルが組み込まれたことで、バッテリーそのものの厚みが増した。接点数・位置も異なるため、流用もできない

 F-10Dは、Qi(チー)規格に準拠した「おくだけ充電」に対応している。このおくだけ充電は、バッテリーパックそのものにQi用のコイルを組み込んでいる機種と、本体側にQi用のコイルを組み込んでいる機種に大別されるが、本機種では前者の方式を採用している。そのため、バッテリーパック単体をQi規格準拠の充電パッドに置いて充電できる。反面、この方式のバッテリーパックは従来のバッテリーパックと比べて価格が高くなる傾向にある。予備のバッテリーパックを用意する場合は念頭に入れておきたい。

photophoto 電池パック F27はQi充電用のコイルを内蔵しているので、単体でも「おくだけ充電」できる。Qiのロゴがある面を充電パッドに接触させればよい(写真=左)。おくだけ充電に対応しているせいか、バッテリーパックの価格は非対応の機種より高い。同じ容量の「REGZA Phone T-02D」用の「電池パック F25」よりも840円高い(写真=右)

質問 : 容量は分かった。“スタミナ”はある?

 バッテリー容量が増えたからといってスタミナがあるとは限らないのがスマートフォンの悩やましいところだ。特に、Androidスマートフォンでは、プリインストールされたアプリはもとより、ユーザーがインストールしたアプリによってもバッテリーの持ちが左右されてしまう。公称の連続待受時間だけでバッテリー持ちを判断すると、痛い目に遭うことも少なくない。F-10Dでは、静止時の連続待受時間が3Gネットワーク環境で約560時間、LTEネットワーク環境で約250時間とされているが、実際どうなのだろうか。筆者の利用状況で「BatteryMix」を使って調べてみたので、2パターンを紹介する。

 8月10日は、前日寝る前にQiの充電台に置いて充電しておいた。7時ごろ、風呂に入るときに一旦持ち出して、出かけるまでまた充電し、100%になったところで外に持ち出した。時計、Gmailやspモードメールの着信状況を確かめるために何度か画面をオンにし、数回仕事先や家族に電話するという使い方をした。これらを実現するために必要なアプリ以外は、ほとんど使っていない。BluetoothやGPSはオフで、Wi-Fi(無線LAN)は帰宅後にオンにした、という状況だ。グラフの通り、外出中にバッテリー残量が約4分の1まで減った。この使い方なら1日ギリギリ持ちそうだ。同じような使い方なら「F-05Dやその他のXiスマートフォンと大きく変わるか」というと、そうでもない印象だ。

photo 8月10日の利用状況。バックグラウンドアプリが稼働していると思われるところで電力消費が大きくなっている

 8月12日は休日なので昼前に起床。その後入浴しながらDiXiM Playerで自宅の「ひかりTV」レコーダーから録画した地デジ番組をストリーミング再生視聴したところ、CPUの負荷も高まったせいで、わずかな時間でバッテリーの約4分の1が減ってしまった。その後、QiではなくACアダプターでバッテリーを充電し、100%になったところで外出した。その後、炎天下の中、どこに出かけようか迷いつつ「jigtwi」や「Instagram」で写真をアップロードして、ようやく行き先を決めて電車に乗り込んだところで、やはりバッテリーの約4分の1を消費してしまった。その後、しばらくは別のXi契約で利用している「GALAXY SIII SC-06D」を使っていたため、バッテリーの減りが緩やかになった。電車が終点駅に着いたところで今度はSC-06Dのバッテリーがほとんどなくなってしまったので、再びF-10DでjigtwiやInstagramなどを使い始めたところ、急激にバッテリーが減り始め、17時すぎには残量が14%になってしまった。

 その後、電源を入れたままドコモ純正の「ポケットチャージャー 01」で充電をし、できるところまで充電した。さすがに満充電までは達しなかった。その後、時々電話やspモードメールをして、それ以外のTwitterやInstagramなどは「Optimus it L-05D」を使って投稿した。帰宅後、Qiの充電台に置いてさらに充電して、以下のグラフとなった。なお、帰宅時にはL-05Dのバッテリーも尽きつつあった。

photo 8月12日の利用状況。負荷の大きい処理や通信・カメラ機能をたくさん使うとバッテリーが大きく消費することが分かる

photo プリインストールアプリの中では、「NX!input」とドコモ純正の「電話帳」アプリがバッテリー負荷に影響を与えているようだ

 実際に使ってみると、F-10Dはなかなかの“大食い”だ。今夏のXiスマホのほとんどがCPUと通信チップが一体となっていて、省電力化に貢献している。それに対し、F-10DではCPUであるTegra 3にLTE通信に対応しているモデルがまだなかったため、LTE通信チップを別途搭載しており、電力消費面や後述の発熱面でどうしても不利だ。

 とはいえ、F-10DがXiスマホの中で“特別な”大食いかというと、そうでもない。省電力化したとはいえ、まだXiスマホは電力をより多く消費する傾向にある。特に、LTEと3Gが頻繁に入れ替わるようなエリアや高速移動中では、F-10Dもその他のXiスマートフォンもあっという間にバッテリーが減っていってしまう。そのためか、今夏は各メーカーが電力管理機能に注力している。F-10Dでは、出荷時状態で「NX!エコ」がバッテリー残量40%になった段階で動作するようになっている。これが動作すると、CPUコアの稼働に制限が入り、バッテリー持ちが改善する。画面描画が若干カクカクになるなど副作用もあるが、バッテリー持ちを重視したい場合はこれも活用してみるのも良いだろう。なお、NX!エコについては別途詳しく取り上げる予定だ。

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