ITmedia Mobile 20周年特集

激化するLTE競争/3社から出そろったiPhone/14年に登場を控えた第3のOS――2013年を振り返る石野純也のMobile Eye(2013年総括編)(1/3 ページ)

» 2013年12月20日 22時10分 公開
[石野純也ITmedia]

 本連載も、年内最後の更新となった。2012年初頭から丸2年、(1〜2日遅れることはあったり、長期休暇で1週なくなったりはしたが)休まず続けてくることができた。まずは改めて読者の皆様にお礼を申し上げるとともに、2014年の連載にもご期待いただければ幸いだ。12月に入り、モバイル関連のニュースもめっきり少なくなった。19日には「Xperia Z1 f SO-02F」が発売されるなど、冬モデルのラストスパートをかけているところだが、新規の発表が少なくなるというのは例年通りの傾向といえる。

 今回は年内最後の連載ということもあり、いつも体裁で2013年のモバイルニュースを総括していく。モバイル業界全体のトレンドをざっとつかめるよう、「激化するLTEのネットワーク競争」「3社から出そろったiPhone」「2014年に登場を控えた第3のOS」という3つのテーマに絞って、それぞれの関連ニュースを振り返っていきたい。

激化したLTEのネットワーク競争、auは大きな通信障害も話題に

 2012年の冬モデルに合わせ、KDDIとソフトバンクモバイルがLTEのサービスをスタートさせた。2013年は、この競争が本格化した1年だった。一方で、KDDIにとっては、苦難の1年だったともいえるだろう。1月19日の連載でも触れているとおり、KDDIは2012年12月31日と1月2日に、LTEの通信障害を起こしている。また、こちらも6月7日の連載で取り扱ったが、5月29日と30日の2日連続で通信障害が発生した。ほかにも、LTEのエリアに関する誤表記があり、上半期はKDDIに対する批判が高まった。

photophoto KDDIは、2013年にLTEの通信障害が頻発した。iPhone 5が唯一対応している2GHz帯のLTEに関するエリアの誤記もあり、上半期は苦しい立場に置かれた

 2012年は同様の障害をNTTドコモが起こしているが、KDDIはLTEの開始が遅かった分、通信障害も遅れてやってきたという印象だ。一言でまとめると、ノウハウが不足していたと言えるかもしれない。こうしたトラブルによる汚名を返上すべく、秋冬にかけてネットワークを前面に打ち出して戦ったのもKDDIだった。きっかけはiPhone 5s、5cが800MHz帯のLTEに対応したこと。ここには、2GHz帯しかサポートしておらず、エリア、通信速度ともに他社と比べて劣勢だったiPhone 5の評判を巻き返したいという思惑もあった。LTEの150Mbps化も始め、現時点では、LTEのネットワークで他社を一歩リードしている状況だ。

photophoto 夏には障害対策にめどがつき、iPhone 5s、5cや秋冬モデルから、改めてネットワークの優位性を強調し始めた

 KDDIをリードしていたソフトバンクモバイルは、(ネットワークとは直接的な関係のない信用情報の誤登録を除けば)大きな障害もなく、着々とネットワークを進化させていった。3月には、イー・アクセスの回線を空いているときだけ利用する「ダブルLTE」を開始。グローバルで一般的な1.8GHz帯(同社が1.7GHz帯と呼ぶ、いわゆるバンド3)のLTEを利用したもので、iPhone 5はそのままこの帯域を利用できるようになった。以降、ソフトバンクモバイルが発売するLTE対応端末は、この「ダブルLTE」に対応している。

photophoto 3月からは、傘下に収めたイー・アクセスのネットワークを利用し、「ダブルLTE」を開始したソフトバンク

 5MHz幅が中心だったエリアも、10MHz化を進めている。ソフトバンクモバイルはこれを「倍速ダブルLTE」と呼び、LTEの高速化をアピールした。ただし、現時点で、ソフトバンクのみいわゆるプラチナバンドと呼ばれる帯域はLTEに対応していない。これまで900MHz帯でつながりやすさをアピールしてきたソフトバンクモバイルだが、他社がこの前後の帯域のLTEを前面に押し出してきたことで、“倍返し”を食らってしまった格好だ。同社は春に900MHz帯をLTE化する予定のため、そこで再びネットワークのアピール合戦が激化する可能性は高い。

photophoto ダブルLTEそれぞれの帯域を10MHz化し、「倍速ダブルLTE」と名づけた。900MHz帯のLTEは、2014年春に開始予定だ

 また、ソフトバンクモバイルはTD-LTEと互換性を持つAXGPを、傘下のWireless City Planningが提供している。この回線と、FDD方式のLTEの両方を利用できる端末を、冬春モデルのラインアップに加えた。同社はこれを「Hybrid 4G LTE」と名づけ、ネットワークの強みをアピールしている。エリアはやや狭いが最高速度の速いAXGPと、エリアは広いがユーザーが多いぶん速度が見込みにくいLTEの両方を、1台の端末で利用できるのが、この仕組みの特徴だ。

photophoto TDとFDD、両方のLTEに対応する端末を発売した(写真=左)。冬モデルは実質2機種(写真=右)

 ドコモは、LTEの高速化や厚みをアピールした1年だった。同社は2013年春に112.5Mbps化を行っているが、秋冬からは1.8GHz帯(1.7GHz帯)で150MbpsのLTEを開始した。2014年には、LTEのネットワークで音声通話を行う「VoLTE」を導入する予定だ。一方で、LTEを先がけて始めたこともあり、ドコモのLTEは混雑して速度が出ないことも増えてきた。特に都心では、KDDIやソフトバンクモバイルに及ばない場所がまだまだ多い。他社が実人口カバー率を一気に広げてきたのも、ドコモにとっての誤算だったといえるだろう。秋冬モデルやiPhoneの導入に合わせて、改めて「クアッドバンドLTE」をアピールしているドコモだが、来年はどこまでユーザーの体感速度を上げられるのかが課題になりそうだ。

photo ドコモは1.7GHz帯のLTEを、秋冬モデルの登場に合わせて開始した

 このように、2013年は3社で足並みがそろったLTEの競争が激化した1年だった。一方で、今は各社とも「うちが一番」と言っている状況で、調査会社の行った速度測定の結果も時間や場所によってまちまちであまり参考にならない。総務省を中心に基準作りの方向性を模索しているところだが、条件を整えた指標が登場することに期待したい。また、LTEのエリアについても、これは当てはまる。現時点で、各社とも発表する人口カバー率の定義が異なるうえに、周波数帯ごとのカバー率をきちんと公開していない。端末によって、あのエリアでは使えて、このエリアでは使えないというのは、ユーザーにとって非常に分かりにくい。競争の結果としてネットワークが進化するのは歓迎できることだが、2014年は、各社が協力して比較の前提となる環境を整えることにも注力してほしいと感じている。

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