こうした状況がある中で、ドコモとKDDIはiOSやAndroidに次ぐ、「第3のOS」の端末をラインアップに取りそろえていく方針だ。第3のOSが注目を集めたのは、2月にスペイン・バルセロナで開始されたMobile World Congress。Mozillaが開発を主導し、KDDI、T-Mobile、Telefonicaといったキャリアや、LGエレクトロニクス、ソニーモバイル、ZTEなどのメーカーが参画しているのが、「Firefox OS」だ。こちらは、2013年内に、スペインやドイツなど、計14カ国で端末が発売されている。APIの互換性を目指す「Open Web Device Compliance Review Board」という団体も、12月に設立された。
これに対して、ドコモが推しているのが「Tizen」だ。インテルやSamsung電子といったメーカーがTizen Associationに参画しており、海外のキャリアではフランスのOrangeも、端末を発売する予定を表明している。2月のMWCに合わせて開催されたプレス向けイベントでは、2013年内に端末が発売されるとアナウンスされていたが、こちらは投入が遅れているようだ。ドコモもハイエンドにターゲットを絞り、端末の開発を進めている。2014年のそれほど遅くない時期に、初号機が登場することになりそうだ。
この第3のOSは、どちらもアプリにWebで標準のHTML5を利用しているのが特徴。OSごとにそれぞれの言語でアプリを開発していたiOSやAndroidとは異なり、Web用のアプリをそのまま流用でき、ディベロッパーの幅も広がるといわれている。また、Firefox OSとTizeの両方ともが、メーカーやキャリアがカスタマイズする余地を大きく残しているのも、従来のOSとは異なる部分だ。iOSはAppleしか開発ができず、UI(ユーザーインタフェース)の変更も一切許されていない。
AndroidはOSやUIこそカスタマイズが可能だが、Googleの定めた規定はクリアする必要がある。例えば、どの端末にもGoogleの検索ウィジェットが1画面目に搭載されているのは、そのためだ。世界各国のキャリアが第3のOSを求めるのには、このような既存のプラットフォーム事業者をけん制したいという狙いがある。メーカーにとっても、2つ以上のOSにリソースを分散させればリスクの回避につながる。
一方で、肝心の端末はまだ発展途上だ。Firefox OS搭載端末はすでに市場に出ているが、現時点では新興国が主なターゲットになっているためスペックが非常に低く、レスポンスも悪い。CPUやメモリを増強すれば、よりスムーズに動くようになるというが、実力は未知数だ。ただし、「Firefox OS=ローエンド」ではない点には注意したい。KDDIはどちらかといえばハイエンドな端末を開発しているとのことで、既存のスマートフォンにはないUIを備えた端末が登場する可能性はある。Tizenも同様で、最初の初号機が出てくるまで判断は難しい。
日本では、フィーチャーフォンのユーザーがまだまだ多いが、Firefox OSやTizenは、その受け皿になる可能性もある。キャリアのサービスをきっちり組み込み、初心者にも分かりやすいUIを搭載できれば、ヒットする可能性もゼロではないだろう。ただし、HTML5アプリのエコシステムが、まだ既存のスマートフォンほど成長していない。現在でもアプリやブラウザゲームの一部でHTML5が使われているが、iOSやAndroidほどにアプリがそろうわけではない。こうした点を、キャリアがどのようなフォローできるのかも、力の見せ所といえそうだ。2014年にどのような端末が発売されるかも、今から楽しみだ。
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