米国・ラスベガスで「2013 International CES」が開催されたこともあり、年明けから新製品のニュースにわいた1月7日から18日にかけての2週間。日本でも、ASUS(エイスース)が「PadFone 2」をSIMロックフリーの状態で発売するなど、大きな動きがあった。一方で、KDDIは、年末から年明けにかけ、LTEのネットワークが2回ダウンする大規模な障害を起こしている。この障害についての詳細も明らかにされたため、ここで解説していきたい。
1月8日(現地時間)に開催されたCESでは、スマートフォンの新製品が相次いで発表された。フラッグシップモデルを発表した主なメーカーは、Sony Mobile、Huawei、ZTEの3社。そのうち、Sony Mobileの「Xperia Z」と、Huaweiの「Ascend D2」は、日本での発売も明確にアナウンスされている。
Sony MobileのXperia Zは、5インチ、フルHD(1080×1920ピクセル)のディスプレイを搭載。443ppiとピクセル密度が高くきめ細やかな描写が可能だ。「モバイルブラビアエンジン2」に対応しているため、コントラストや色の鮮やかさも抜群だ。カメラには、ソニーの新型センサー「Exmor RS for mobile」を採用。動画のHDR撮影に対応したり、動画撮影中の静止画保存が可能になったりと、高い性能を誇る。また、従来のXperiaからデザインを一新。両面がガラス素材の「Omni Balance Design」を打ち出している。防水、防じん対応で、OSはAndroid 4.1となる。
対するHuaweiの「Ascend D2」も、5インチのフルHDディスプレイを備える、高機能なスマートフォンだ。こちらもピクセル密度は443ppi。カメラは「ソニーの新型センサーを採用している」(ファーウェイ・デバイス チェアマン リチャード・ユー氏)というため、画素数やHDR動画撮影対応などの特徴を考えると、Xperia Zと同じ「Exmor RS for mobile」の可能性が高い。チップセットは、同社系列のHiSilicon Technologiesが製造する「K3V2」のクアッドコア。Huawei独自の「Emotion UI」を内蔵し、バッテリーも3000mAhと大容量だ。こちらも防水対応でOSはAndroid 4.1となる。
ZTEは、中国市場での発売が決まっている「Grand S」を発表。Xperia ZとAscend D2と同様、Grand Sもディスプレイは5インチのフルHDだ。特徴的なのはそのサイズで、厚さはわずか6.9ミリ。中国の伝統的な色彩をモチーフにしたというカラーバリエーションも目を引き、色によって質感を変える工夫も取り入れている。
これらのハイエンド端末に共通しているのは、5インチ、1080×1920ピクセルのフルHDディスプレイだ。日本ではすでに同じサイズ、解像度を持つ「HTC J butterfly」が発売されているが、2013年はこのスペックが高機能モデルの基準の1つになりそうだ。フルHDディスプレイは、ジャパンディスプレイ、シャープ、LGディスプレイが開発しており、これらのモデルのスペックが似通ってくるのは、多分に供給側の都合という面もある。ディスプレイのサイズが共通していると、端末のサイズは必然的に近くなり、結果としてバッテリーの容量や、チップセットなどでの差もなくなってくる。
ただ、同じディスプレイとは言え、仕上げはメーカーによって大きく異なる。例えば、Xperia Zには、上述したように「モバイルブラビアエンジン2」が搭載され、色彩やコントラストなどの補正を行っている。こうしたチューニングは、テレビを持つソニーグループならではのノウハウと言えるだろう。カメラについても同様で、たとえセンサーが同じでも、仕上げ方ひとつで撮れる写真のクオリティは大きく変わってくる。こうした細部へのこだわりや、ほかの製品との連携が、ソニーのような総合家電メーカーにとっての強みになるだろう。
また、Huaweiのようにチップセットや通信技術をベースにした省電力性能で独自性を出したり、ZTEのようにデザインや薄さにこだわったりというのも、メーカーの取りうる選択肢だ。フルHDディスプレイを搭載したうえで、プラスαの味つけをどのようにできるのかが、端末メーカーにとって腕の見せどころと言えるだろう。ブランドやコンセプトをどう打ち出すかということも、今まで以上に大切になってくるはずだ。近いスペックを持つ3機種だが、中でもソニーモバイルのXperia Zが頭一つ抜けた注目を集めていたのは、こうしたプラスαの部分を十分訴求できていたからにほからない。
CESでは、スマートフォンの“心臓部”とも言える、チップセットについても新たな展開が明らかになった。
Qualcommの会長兼CEO、ポール・ジェイコブス氏は、CES前日に開催される「プレキーノート」でSnapdragonの次期モデルとなる「Snapdragon 800シリーズ」を発表。Snapdragonは、800、600、400、200のシリーズ分けになるが、最上位の800の中に「MSM〜」や「AQP〜」が複数存在するのは従来と同じだ。2013年に出荷されるという「MSM8974」は、CPUに「Krait 400」を採用。クロック数は2.3GHzで、GPUも「Adreno 330」に進化させた。トータルでは75%の性能向上が図られているといい、Ultra HDと呼ばれる4Kでの映像出力もサポートする。このチップを搭載した端末は年内に発売される見込みだ。
Qualcommの得意分野である通信の性能も向上している。MSM8974は、下り最大150MbpsのLTEに対応。異なる周波数帯のLTEを束ねて広い帯域を確保できる、「LTE Advanced」のキャリアアグリゲーションも利用可能だ。Wi-Fiは、IEEE 802.11acもサポートする。
対するNVIDIAは、72個のGPUを搭載した「Tegra 4」を発表。CPUは「Cortex-A15」になり、処理能力を大きく向上させた。また、Tegra 4には同社の傘下であるIcera社が開発した、LTE対応のソフトウェアモデムを組み合わせることが可能だ。クアルコムのSnapdragonと同様、4K出力にも対応する。同時に、NVIDIAはこのTegra 4を採用した「Project SHIELD」というゲーム端末も発表している。
CESでの発表を踏まえると、フルHDディスプレイや、処理能力を高めたチップセットなどが、2013年のトレンドになりそうだ。通信に関しては、一部の国ではLTE Advancedが開始される。QualcommのSnapdragonがこの方式に対応しているのは、そのためだ。日本での導入はもう少し先になりそうだが、こうした話題も今年は徐々に増えていくはずだ。
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